電子書籍
編笠十兵衛(上)
著者 池波正太郎 (著)
浅野内匠頭は吉良上野介へ刃傷におよび即日切腹となる。一方の上野介には何のとがめもなかった。“武士の喧嘩両成敗”という幕府の定法にもかかわらず、将軍綱吉の裁決は一時の気まぐ...
編笠十兵衛(上)
編笠十兵衛 改版 上巻 (新潮文庫)
商品説明
浅野内匠頭は吉良上野介へ刃傷におよび即日切腹となる。一方の上野介には何のとがめもなかった。“武士の喧嘩両成敗”という幕府の定法にもかかわらず、将軍綱吉の裁決は一時の気まぐれである片手落ちだと世の反感をかう。柳生十兵衛の血をひき、将軍家から〔御意簡牘〕と呼ばれる秘密の鑑札を与えられている浪人・月森十兵衛は、幕府政道の〔あやまち〕を正すため隠密活動を開始する。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
幕府政道を正す密命を負う月森十兵衛が、浅野内匠頭への幕府の誤った処分を正すべく活躍する
2010/01/20 19:07
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
<あらすじ>
月森十兵衛は、将軍家から『御意簡牘(ぎょいかんとく)』の所持を許されている。
『御意簡牘』は幕府の中でも特に大切な、非常の役目に任ずる者へ密かに与えられている。
月森十兵衛は、上司の中根正冬とともに幕府の政道を正す密命を帯びていた。
中根の部下・佐野源介と旗本・中川主馬(しゅめ)らが斬り殺されるという事件が起きた翌日、江戸城内・松の廊下で、浅野内匠頭が吉良上野介を斬りつけた。
将軍綱吉は、これから天皇の勅使に対し、天皇への挨拶の言葉をのべようとしていただけに、激怒。
『喧嘩両成敗』という定法も忘れ、浅野内匠頭と赤穂藩のみに処分を行った。
赤穂藩のみ取りつぶされ、将軍みずから『喧嘩両成敗』の定法を破ってしまった時、月森十兵衛が幕府政道を正すべく隠密活動を始める。
一方、ちりぢりになった赤穂浪士たちは地下に潜み、計画を練りつつ吉良上野介を討ち取る機会を探っていた。
<感想>
池波正太郎氏の著書「堀部安兵衛」は赤穂浪士側からの物語だが、「編笠十兵衛」は内密に動く中立的立場の幕府側から見た物語。
とはいっても、月森十兵衛は官僚的な人物ではなく、赤穂藩家臣・奥田孫太夫たちに同情し、力を貸したいと思っているが立場上できないという人間的な魅力を備えた人物として描かれている。
同じ忠臣蔵を扱った「堀部安兵衛」を先に読むと、本書に登場する奥田孫太夫や堀部安兵衛が生き生きしてくるのでより面白い。
いわゆる『忠臣蔵』が中心の物語だが、TVでよく放送されている『忠臣蔵』の事件の騒動を中心に描いているものとは全く違い、幕府側、赤穂藩側、吉良家側の人物や町人達が生き生きと動いて物語を作りだし、赤穂藩家臣・奥田孫太夫との友情は、十兵衛の人柄と微妙な立場を鮮明にすることに一役買っている。
生々しい人間像の他に、
・月森十兵衛は幕府政道を正すため何をやっていくのか。
・吉良上野介を守るため上杉家から雇われた浪人・舟津弥九郎との対決。
など、十兵衛という謎人物の行動や緊迫のシーンが魅力でもある。
また冒頭に登場する犬斬りの黒田小太郎は印象的な人物。
綱吉に人生を狂わされたと言ってもいい小太郎は、『生類あわれみの令』を無視することが綱吉に反発していることになるからと、犬を斬り殺す。
小説の初めに黒田小太郎を登場させることによって、綱吉への犬公方と嘲た世論を表現しているように思える。
その小太郎はやがて綱吉の『悪夢』から解放されるが、将軍の採決にあくまで反発し綱吉の『悪夢』に呪縛された赤穂浪士達は対照的に描かれている。
全体を通して綱吉のダメ将軍ぶりが伝わってくるが、結局それに振り回されている人たちは大変だ。
赤穂浪士の悲劇を生んだのも綱吉が原因である。
綱吉がやり手の将軍だったら浅野内匠頭と吉良上野介は喧嘩両成敗、それで終わりだったはず。
そうなると現代で語り継がれている、『忠臣蔵』もなかっただろう。