紙の本
登場人物たちと共に成長する読書にはならなかった。
2012/02/02 21:58
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投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
1969年生まれの伊吹は親友の瑞恵とともに、1999年に人類は滅亡するというノストラダムスの予言を固く信じる少女。その彼女の2000年までの人生の軌跡をたどる小説。
私も伊吹、そして作者の粕谷知世(かすやちせ)と同じく1960年代の生まれです。まさにこの小説に登場する若者たちと同じように、幼い時期にノストラダムスを信じた、全共闘世代のひとつ下の世代に属しています。
私たちの世代とは、先輩たちの情熱を吸い上げ、そして彼らの多くに狂気を注入していったマルキシズムとは大きく距離をとり、その代替物としてオウムというカルトに走ってしまった多くの同輩を持つ1960年代世代です。
自分の世代の歴史をなぞりながら物語を読み進め、前半部分こそ、そういえばそんな時代もあったなと懐かしく思ったものです。
しかし、後半になればなるほど、物語から気持ちが離れていくのがわかりました。
大学生となった伊吹たちが、自分たちの聖書を懸命に綴ろうとする姿には、少々花白む思いがしたほどです。
登場人物たちの青さは、まさにあの頃の私の青さに重なるのです。彼らの気持ちはわかります。
ですが分かるとはいえ、もうそれは既に私にとって通り過ぎて来た道。いまさら振り返りたいとまでは思わない場所です。
登場人物たちが蒙を啓かれていった道のりを、今日あらためて追体験する気にはなれないのです。
私もそれだけなんとか成長してきたのだという安堵の気持ちこそあれ、登場人物とともに成長することを望めないとき、小説の悦びは得られないということをかみしめた読書でもありました。
おそらく高校生くらいの若い読者であれば彼らに共感しながら頁を繰ることができるかもしれませんが、いまや主人公同様、40の坂を越した私のための書ではなかったようです。
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1999年、7月……あの予言どおりには、世界は終わらなかった。私はまだ生きている──。
ノストラダムスの予言を知った私と瑞恵は、「世界を救うために全力を尽くす」と誓った。「今でも世界が滅びるって信じてるの?」――世界は今この瞬間も、終わり続けている。私の命はいつだって死へと向かっている。それでも、生きる意味はあるのか。迷いながら生き延びる伊吹の心の軌跡を辿り、同時代を生きる魂に問いかける、渾身の書下ろし長篇小説。
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人に影響されやすい主人公・伊吹。ノストラダムスの大予言を信じて、破滅を回避するためにたくさん勉強して何か世界を救う役に立つような人間にならなくちゃ、と真剣に言っていた親友は高校に入って間もなく死んでしまい、その喪失から立ち直れないまま大学生になる。なりゆきで入ったサークルで、大予言を信じる根拠をことごとくへし折られ・・・。
主人公と親友との出会いから30歳頃までの長い期間を描いた小説。
ノストラダムスの大予言を信じていた人って実は結構いたんじゃないかな。この主人公も途中からは懐疑的だけど、サークルで完全否定されるあたりの描写は何だか可哀想なくらいだった。でもこれがあったからこそその後は軌道修正できたんだと思うけど。
大学生活の半ばからは恋愛絡みの人間関係のゴタゴタが主軸になり、結構生々しい。
1999年以降どうなるのかと思いきや、それまでの展開を思うと割と地味な感じで終わった。でもそこが却って現実的でいい。
作中で実際には一度も出てこなかったサークルの創始者・東堂さんが伝聞の話だけでもすごく面白そうな人物だったので、実際出てきてほしかった。
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それでも人生は続く。
濃い。300ページ以降は一言一言が深い。
特にP.340は必読。
終わり続ける、というタイトルは秀逸。
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前半、無理かもしれないなと読むのをやめようかと思いつつ、どう終わるのか知りたくて読み進め、結局最後まで興味深く読めたのはやっぱり作家さんが上手なのかな。
それにしても、前半は特に、気持ちがザワザワしてなんとなく不安感を感じる本だった。
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電子書籍で読了。
小学生の時に偶然テレビ番組で知った「ノストラダムスの大予言」に影響され、終末思想にとらわれてしまった女性の半生を描いた小説。
何とも不思議な肌触りの物語で、おそらく読者を選ぶタイプの小説かと思うが、主人公と同世代の自分としては、比較的すんなり世界観に入っていくことが出来た。
主人公のキャラクター設定も、基本ネガティブで自主性に欠け、人によってはもどかしく感じられるのだろうが、様々な人々との出会いと別れを通じて、少しずつ自分なりの生き方を学んでいく過程が丁寧に描かれており、テーマはさておき、一人の少女の成長物語として読むべき作品だろう。
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この小説は、久々に私に大きなインパクトを与えてくれました。
ここで描かれているストーリーは決して読んでいて心地の良いものではないのに、
ラストは実に感動的です。
著者の書き下ろしだそうですが、東日本大震災を経て感じたことを
一息に書いたのではないかと想像するくらい、
文章に‘熱’を覚えました。
気になる作家がまた一人増えました。
他の作品も読んでみようと思います。
今年もあっという間に終わりですが、
それにしても、あえて意図したわけでもないのに、
阪神大震災が出てくる作品を4本、しかもオウム事件も登場する作品を
立て続けに2本読むという、不思議な体験をしました。
来年はどんな作品と出会えるでしょうか。
感性の赴くままに作品を選んでいく予定ですが、
素敵な出会いがありますように。
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ノストラダムスの予言通り1999年に世界が終わると信じてしまった1969年生まれの少女が「その時」を超えるまでの物語。
小学生時代は親友と共に世界を破滅から救おうと考え、高校時代は親友との距離に悩み、大学では「世界救済委員会」のサークル内で人間関係に悩み、社会に出てからも自分と世界との関係の狭間で揺れ動く主人公。
冒頭を読み始めて「苦手かも」と思ったものの、読みすすめたらぐいぐい引き込まれた。
彼女の考えが私にとって「痛い」のは私が「口先原理主義者」で彼女の考えがよく判ると共に「そのように」生きてこなかったから。
終章で主人公は一応の決着を見るが、この先も彼女は周りの人々に影響を受けながら傷つき、傷つけ生きていくのだろう。
「みんなが一人で一人はみんな」なのだから。
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@matareyo00さん
ではこちらにて。粕谷知世『終わり続ける世界のなかで』 新年始まったら妙にこのタイトルが気になって開きました。 #読み初め棚
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なんだかとてもよく分かる気がする。
真剣に生きるということ。
真剣に生きるというのは実は辛いことだ。
人は、常に真剣でいることは難しい。
真面目でいようとすると、真剣になれない時の自分を責めてしまうこともある。
主人公と私は同じ年。
なんとなく主人公と自分が似ているとさえ思った。
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「ノストラダムスの大予言」は中学生の頃にやっぱり熟読したけれど、この作品の登場人物のように「世界が終わる」と思い詰めたりはしなかった。そこがピンとこないので、登場人物の言動にたびたび無理を感じてしまった。しかし、自分が周りとしっくりこない、そんな時期、特定の思いや感じ方にとらわれて苦しい思いをする、その感じはよくわかる。大学の文化系サークルの青臭い感じも懐かしい。これだけゴツゴツした思考の流れをぐいぐい読ませる著者の筆力はすごい。たいした力業だ。ちょっと高橋和巳を思い出した。
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難しいー。作中いろいろな考えが出てくるけど
なぜ生まれたのか、生きていく意味、答えなんかは出ない。全部が正しいのかな。とりあえず頭使う。
でもなんだかんだで最後まで気になって読んでしまった。
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タイトルに惹かれて読んだ本。
ノストラダムスの予言に怯えた少女がその後どう生きたかを描き、人生とは何かを作者なりに伝えた本。
ノストラダムスの反論やいくつか出てくる宗教に対する反論など、作者の考えが如実に表れて、「なるほどね。」と思いながら読むことが出来ました。
共感できる部分も出来ない部分もあると思いますが、生きていくということをもう一度考えるきっかけになると思います。
悩める人におすすめ。
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読み終わって、タイトルの秀逸さに唸った。
ほぼラストまで読んでるのが苦痛で、主人公伊吹の周りからの影響のされやすさと、視野の狭さというか、固執した思想とか…伊吹にモヤモヤしっぱなしだった。
でも彼女は彼女なりに考えていて、影響を受けながら少しずつ前に向って歩いている、三歩進んで二歩下がるみたいな速度だなぁと思ったけど。
最後まで伊吹と関わることのなかった東堂さん。その東堂さんの言葉にたくさん影響されていて、直接合わなくても影響を与えられる人物。何者。
人生に絶望したり、生きる意味を考えたりするけれど、ラストの篠田さんからの手紙「みんなは一人、一人はみんな」の言葉は、ああそうなのかもしれないなぁと思った。
今の私が形成されまるまで、巡り合った人、出会った書物、聴いた音楽や言葉、それらに少しずつ影響されながら「私」が形成されていて、それらが組み合わされているんなら、私はあなた、あなたは私、たくさん連なって一人はみんなでみんなはひとりなんだなぁ。海につかってるような……。
伊吹がみた海と夕日の景色のような、心地よい終わり方でした。今までのもやもやが吹き飛ぶような……晴れ晴れとしました。
友達がいないと嘆いているけど、かけがえのない友がいたね、と伊吹の肩を叩きたくなった。顔を上げればみえるものがあるよ。