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誰にも出来る殺人/棺の中の悦楽 山田風太郎ベストコレクション
著者 山田 風太郎
「人間荘」に越してきた私が押入れの奥から見つけた1冊のノート。そこには歴代の住人たちの哀しくも恐ろしい人生の記録が記されていた──。(「誰にも出来る殺人」)彼女のため殺人...
誰にも出来る殺人/棺の中の悦楽 山田風太郎ベストコレクション
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誰にも出来る殺人/棺の中の悦楽 (角川文庫 山田風太郎ベストコレクション)
商品説明
「人間荘」に越してきた私が押入れの奥から見つけた1冊のノート。そこには歴代の住人たちの哀しくも恐ろしい人生の記録が記されていた──。(「誰にも出来る殺人」)彼女のため殺人まで犯すほど恋い続けた女性を失った。絶望した男は、残された金で半年ごとに異なる6人の女との情事を愉しみ、死のうと決めるが……。(「棺の中の悦楽」)人間の欲望を見事にえぐり出したノワール・ミステリの傑作!
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紙の本
市井のひとが犯罪者となる日。
2012/02/12 14:58
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
忍法帖シリーズで有名な著者。
名前だけは知っていたけれど
読むのはこれは初めて。
著者の作風云々についての知識もまったくなく、
どこぞで読んだ、本の解説で挙げられていたので
手に取ってみた。
本書に収められているのは「ノワール」で「ミステリ」な二篇。
「ノワール」とはフランス語で「黒」のこと。
それから転じてだとは思うのだけれど、
闇社会や、倫理的にどうかなぁ…という分別、
或いは悪意、暴力などが登場するものを指している(たぶん)。
「ノワール」ときいて
真っ先に思い浮かんだのは馳星周『不夜城』。
暴力シーンも多かった。
蛇頭なども登場していたような記憶がある。
ただ、本書は馳星周「的」ノワールのイメージとは
また異なる。
そこまで暴力沙汰は登場しないし、
ギャングも出てこない。
問われるのは倫理感だ。
『誰にも出来る殺人』
アパート人間荘の十二号室。
その部屋の押入に眠る一冊のノート。
書き出しはいつも言葉ではじまる。
「新しき住人、ようこそ」
そこには代々の間借人が
間借期間の人間荘での記録を綴っている。
そしてそれはまさしく、
誰にでもできる殺人の記録であった。
ちょっとした悪意、いたずら心、
思いこみ、思いちがい、
ほんとちょっとしたことで殺人ができてしまう。
「殺人」とは大仰なようでいて
起こってしまえばあっけないものなのかもしれない。
結末は哀しく、皮肉だった。
『棺の中の悦楽』
こちらも皮肉なラストだった。
愛する少女のために殺人を犯した脇坂は、
そのことをネタに見ず知らずの男から
横領した公金1500万円を7年間預かるよう脅される。
7年とは、横領犯が服役を終えるあいだの時間だった。
(※作品内の時代設定はサラリーが3万円)
慎ましく暮らしていた脇坂だったが、
4年が過ぎた頃、愛する少女が結婚したことを契機に
残りの3年で1500万円を使い果たし
3年後に死んでしまおうと決意する。
1500万円を使う対象は、女だ。
脇坂は各半年の契約で
少なくとも6人の女と関係を持ち、
有限の時間と金は3年後にゼロになった。
そこで明かされる真相の皮肉なことといったら。
人間性を疑われそうだけれど、好きだなぁ。
文章は想像していたほど読み辛くはない。
一文一文が短く、どちらかというと読みやすい。
が、
『誰にも出来る殺人』は構成が少し複雑で
登場人物も多いので状況把握に苦労した。
状況がわからないとトリックの衝撃も小さいだろう。
『棺の中の悦楽』は
タイトルから察しが付くとおり、
多少の性描写がある。
官能的な表現ではない。
どちらかというと荒々しく、ノワールだ。
他の山田作品を読むかどうかは現時点では不明。
たぶん、よっぽどじゃないと読まない、かな。
『誰にも出来る殺人』収録作品
・誰にも出来る殺人
・棺の中の悦楽