デビュー作とは思えない完成度
2015/03/26 15:09
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投稿者:september - この投稿者のレビュー一覧を見る
盤上に濃縮された深淵かつ突き詰められた世界。表題作と『原爆の局』のつながりが良かった。デビュー作とは思えない完成度。今後も読みたい。
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文句無しに面白かった。
囲碁、チェッカー、麻雀などの盤上遊戯を題材にした6作の短編集。
神の一手を目指す者や戦争好きの王の気をそらすために遊戯を考え献上する者、ゲームを殺すゲームを作ろうとする者。
特に面白かったのは「千年の虚空」。将棋を題材に、二人の兄弟と一人の女性が目指した「暴力の終焉」。量子歴史学なんてSFっぽくパラドックスに満ちている。
他の作品も面白かった。
最も、私は盤上遊戯は苦手です。先を読もうとしすぎて面倒臭くなり、疲れてしまうので。
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「盤上の夜」 一読、この新人作家が稀有の才能の持ち主だとはすぐに知れることながら、果たしてこの作品が万人に受け入れられるかは疑問の残るところ。私はというと、取材する第三者的な視点から淡々と書かれる文体に魅かれて貪り読んだわけだが。ただ一点、『HUNTERxHUNTER』アリ編のラストのエピソードとカブるのが個人的には「玉に瑕」。
「人間の王」 ノンフィクションかと思いきや、ラストに捻りがあるんだな。でもまぁ、ラストの驚きよりもそこに到るまでの話の面白さが圧倒的である。一番好きな作品。
「清められた卓」 普段接している遊技だけに、麻雀を題材に選んだ時点で駄作と決めつけていたのだが、なんとまぁ、想像の斜め上をいかれてしまった。運というものが勝ち負けを大きく左右する競技を扱いながら、最初から最後まで計算しつくされた作品に仕上げた著者に脱帽。
麻雀の本質を描いたわけではないが、切り口の斬新さに驚いた。
「象を飛ばした王子」発祥の時に視点を置いた話。実際の戦争で象を飛ばすんじゃないかとドキドキしながら読んだが、そんなおバカな話にはなりようもなく、しみじみとした良い話だった。
「千年の虚空」どの一編も同じく、盤上へ賭ける熱意や執念が描かれているのだが、味付けはそれぞれ大きく異なる。
同じテーマで並列に置かれるものならば、似たような話になっても不思議はないわけで、その杞憂をするりと躱して奇譚に仕上げる筆力は新人のものとは思えない。
しかしながらこの話はそんな著者の力量が裏目に出たのか、私の理解が届かないのか、今ひとつの作品であった。
「原爆の局」この一編を加えることで盤上の戦士達の闘いに何らかの答を出そうとしたのか。
盤上にあるものは抽象か、はたまた具象なのか。終わりのない問いにしっかりと答を用意した著者に最大限の敬意を。
85点(100点満点)。
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囲碁、将棋、古代チェス、麻雀、チェッカーをテーマにした短編集です。
一応分類としてはSFになってるみたいですけど、ほんのちょっぴりSFテイストが入ってるだけで普通の小説ですね。
チェッカーの話とかほぼノンフィクションみたいなものですけどw
どれも結構面白かったです。こういうゲームが好きな人はぜひ読んでみて下さい!
麻雀小説って初めて読んだけど、どこかアカギっぽさがあって個人的にすごく好きですw
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「盤上の夜」囲碁・四肢を失った女性 「人間の王」チェッカー・コンピュータとの対戦 「清められた卓」麻雀・教祖の超能力 「象を飛ばした王子」チャトランガ・ブッダとその息子 「千年の虚空」将棋・兄は量子歴史学を立ち上げ、弟は将棋を通して 「原爆の局」囲碁・広島原爆投下時に打たれていた局 いずれの話もゲームの向こうの「世界を変える」を見据える。残念なことに出てくるゲームをひとつも知らない。知っていたら一層面白いだろう。
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囲碁、将棋、チェッカー、麻雀などのゲームを巡る連作集。魅力は、サイモン・シンの科学物ノンフィクションを読んでいるような面白さ。天才たちの高みに満ちた知覚を追体験できるあの感じだ。もちろんコレはフィクションなんだけど、ストーリーテラーである取材者の視点から淡々と、かつ詩的に書いてるところが読ませる。個人的に各ラストの締め方がサッパリし過ぎているので物足りないくらいか。各掌編に記されている参考文献が興味深い。次回作も期待!
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はい。今年一番どころか、表題作、『清められた卓』『象を飛ばした王子』は間違いなくオールタイムベストに名を連ねていいレベル。
文体は思いっきり硬質です。あえてこの文体を選んでいるのでしょうが、盤という最終的には孤独な世界。しかし盤上は世界の一部を展開させることもできる広大な世界である。それに取り憑かれたもの、そこに到達できなかったものを描くにはこの文体しかないともいえる。
素人読者が何を言ってもはじまらない。とにかく読め。買って読め。そして圧倒されろ!!
目眩く小説体験ができるはずだ。
ところで、山田正紀と飛浩隆がこの作品集を好きなのは、当然な気がする(そしてたぶん凄く嫉妬していると思う)。
「亜空間でポン!!」にあんな意味があったとは……知らんかった ヽ(゚∀゚)ノ
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囲碁、チェッカー、麻雀……、様々なボードゲームを素材にした6つの物語を収めた連作短編。極限まで研ぎ澄まされた勝負師の思考の末に現れる風景の凄まじさに心が震える。お気に入りは「盤上の夜」、「人間の王」、「清められた卓」かな。
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素晴らしい。
盤上遊戯、卓上遊戯ばかりを扱った
6 つの短編からなる作品集。
受賞作以外の 5 作品の出来が良いと思うのは、
作者の成長なのか。
偉そうでゴメンナサイ。
「盤上の夜」
2010 年 第 1 回創元SF短編賞選考委員特別賞(山田正紀賞)受賞。
2012 年 第 33 回日本 SF 大賞受賞作品。
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世界各地のボードゲームにまつわる人智を超えた物語を、一人のライターの目を通して描いた連作短編。
淡々としながらもリーダビリティに優れた硬質な文章によるものか、歴史やゲームの細かい解説・定石を織り交ぜることにより生まれるリアリティにとても説得力があるためか、世界に引き込まれるにつれ、ゲームを極める事は神との対話に似たりという錯覚さえ覚えます。
数奇な運命に弄ばれ、碁盤と感覚を同化した天才女性棋士の半生。
コンピュータと戦い、孤独の中に道を見たかに思えたチェッカーのチャンピオンの晩年。
精神病を患い、とある能力に開眼した女性教祖と、卓を囲む個性的な面々の決勝戦での半荘。
古代インド、偉大な王の下に生まれた小国の王子の采配とその後の生。
ある兄弟と女性が織る、将棋界を舞台とした狂乱の日々と真実。
原爆の落ちた日に打たれた棋譜をめぐる、天才女性棋士のその後の物語。
いずれ劣らぬ奇妙な物語を客観的な視点で描くことで、ボードゲームやそこに関わる人々の特異性を際立たせ、ひいては「天才」と呼ばれる勝負師達の尋常ならざる境地を描くことに成功していると思います。
個人的なお気に入りは「清められた卓」。麻雀をテーマとした本編は、どんな麻雀漫画よりもアツい、エキサイティングなバトル小説です。
SFファン以外にも是非お勧めしたい一冊ですね。
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期待が大きかっただけに、今ひとつ物足りない感じもした。
麻雀の話が一番、面白かった。囲碁の話はもう少しドラマチックな展開があればよかったと思う。チェッカーの話は、ちょっとくどい感じ。麻雀の対決場面は臨場感があった。
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囲碁、チェス、将棋などの対局を通して、「人間」「世界」「神」をミステリアスに浮かび上がらせる短編集。
ゲームと哲学が融合したようなストーリーに知的興奮をおぼえた。
ネタバレになるので語りにくいのだけど、たとえば、「コンピュータ VS 人間」という対戦が行き着く先、そこに残るものは何か。
ルポタージュにも似た硬めの文章でつづられるストーリーは、数学の歴史における「無限」の概念を言葉でたどり直しているかのようであった。
これはSFともミステリーとも、フィクションともノンフィクションとも捉えがたい、挑戦的な小説。
ちなみに僕は、ここに出てくるゲームのルールを1つも知らないで読んだ。
それでも面白かったし、この本の影響で囲碁をやり始めたほど。
ひとことで言うならば、この本は非常に美しい。
(※訂正:ウソだわ、将棋は知ってたわ!)
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銀は真横と真後ろには行けない…
かろうじて、将棋の駒の動かし方は知っている。囲碁に「劫」なるものがあるという程度の知識で、麻雀は全くわかりませんし、チェスには触ったこともありません。ギャンブルにも興味はありません。しかしですよ、そこで行われる人々の精神活動・知的営為の妙味にはうなりました。壮絶でもあり、凄惨でもあり。身体、宇宙。
面白かったなあ。たとえば麻雀を知っている人ならもっと楽しめたのかなあ。
何らかの定め・ルールの下で人と人とが戦い、勝敗が決まる構造を有する事象は数多ありますよね。スポーツだって、ビデオゲームだって…ある意味ではビジネスも…
それらに対する態度や視点を見直す機会になったかも。
著者の他の作品も読みたい。
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第1回創元SF短編賞山田正紀賞であり、第147回直木賞候補にもなり、レビューも良かったので、期待していたのだが、これってSFなんだろうか?
好みが分かれる作品なのだろうが、私は本書の世界観には入れなかった。
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囲碁、将棋、麻雀、チェッカーなどを題材に取った短編集。
それぞれのゲームが持つ世界観を展開していく構想力は抜群。盤上の世界と外の世界の境界を大胆に溶かしていく。
直木賞の候補になったことだし…と思い手を出したが、納得。