紙の本
読む戯曲としては面白い
2019/05/29 14:26
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投稿者:ぷりしら - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞台上の動きは少なく,登場人物がひたすら話しをしている戯曲。
統治者が現実を一切顧みることなく時代を先取りし(過ぎ)た理想を絶対視した果てのカタストロフィを容赦なく描く。
その過程の思想的対立の構図もスリリング。
ただ,動きが少ないので実際に演劇の形で見たら退屈するかも。
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父王の死に伴いエジプトのファラオとして即位したアクナーテン。神官たちの専横、生活に苦しむ民を救い理想の国家、世界をつくるために新たな都を作り新たな神を信仰する。神官たちとの対立。すべての戦争を否定するアクナーテン。離れていく民の心。自らの親友と考えていた軍人であるホルエムヘブとの決別。理想を追い求めるアクナーテンと現実を見るホルエムヘブとの溝。王位後継候補のツタンカーメンとの考え方の違い。宮廷で進む妃ネフェルティティの姉ネゼムートの陰謀。
2009年10月23日購入
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小説ではなく戯曲です。
アメンヘテプ三世との共同統治から
軍人ホルエムヘブとの出会い、ネフェルティティとの愛、
新しい都の建築、宗教改革、国の衰退、
神官たちの悪巧みと画策と王の死、そして
ツタンカーメンが王位につくだろうというところまでを
ドラマチックに描いている。
アクエンアテンの死については諸説あるけれど
クリスティー説を信じたくなるくらい面白かったです。
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クリスティーの話は必ずといっていいほど最初は面白くない。なぜならば言い回しがとてもまどろっこしかったりするし。でもストーリーが進むにつれて、次の展開がすごく気になってしまい知らず知らずのうちにそのストーリーにのめりこんでしまう。
そんなミステリー作家だと私は思っている。
しかしこの「アクナーテン」についてはミステリー小説ではなくロマンス小説だ。なのにどんどん引き込まれていってしまった。さすがクリスティーだな~って思った
この話ではストーリーの主となるものが宗教で、「多神教世界」からアテン神という太陽神のみを崇拝する。「一神教世界」を創りだしてしまったしまったがためにおきてしまった悲劇。
当然、今までの自分が信教していたものを廃止とういうことは国民は納得もいかず・・・大反乱をおこす
しかしアクナーテンは一神教「アテンの神こそ本当の神だ」と思い込んでしまっているので、傍からみたらキチガイじみている。
私は、カミサマというのは存在はしてなく弱い人間が創りだした
ものだと思っている。だから強制的に「~だけが神」「~だけを崇拝しろ」というのはもともと無理な話だ。暴動がおきて当然だ。
しかしそこに付け込んできたネゼムートは最低ではないだろうか?そしてホルエムヘブも最期の最期「どんな人間にもこれ以上我慢できないという一線があるものです」など言わずずっと忠誠を誓っていてほしかったと思う。
私がこの物語で一番好きなキャラはネフェルティティだ。姉のネゼムートは彼女を見下していたところがあったけれど、一番辛抱強くて王のことを愛していたのは彼女だと思う。アクナーテンがプッツンした時も冷静さを決して失わなかったのは彼女だけ。それだけアクナーテンを愛していたのに最期はネゼベートに騙されてアクナーテンに毒薬を飲ませてしまった時私は胸が詰まって涙がでてしまった。なんとも切ない・・・って感じだ。
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解説にもあるが、アガサクリスティのエジプト好きの成果だと思う。
他の作品ほど、人の間の心理の妙については、表現されていないようだが、
アガサクリスティの人間に対する考え方は表現しているだろう。
エジプト史は詳しくないので、どこまでが史実で、どこからが創作かは分からない。
王政、宗教、戦争などに対する一つの考え方を表現している。
戯曲なので、戯曲が嫌いな人には読みづらいかもしれない。
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アメン神を中心とした多神教の古代エジプトを、アテンを唯一神とする一神教世界に変えようとしたアクナーテン。
彼の思想はあまりに先進的過ぎ誰にも理解されない。
誰にも理解されない理想を追い進む姿と、一国の王としての理想の姿とは一致しない。
お互いを強く思いながらも、現実を祖国を憂うホムエルヘブと、理想を全世界を憂うアクナーテン二人の道は交わることはない。
アクナーテンの悲劇のもとは最後の石工のセリフに凝縮されていると思う。
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古代エジプトを舞台にした戯曲。
ミステリではなく、有名な王アクナーテンの生涯のポイントを描いたもの。
多神教が信じられていた古代エジプト。
中でもアメン神殿が王をしのぎかねないほどの大きな勢力を持っていた。
アクナーテンの母である王妃ティイは、神官の横暴に不信を抱きつつも権力を守るために神殿と結びつき、息子の純粋さを心配しているところから始まります。
軍人のホルエムヘブは信仰心は薄く現実的でまったく違うタイプだが、まじめさに通じるところがあり、アクナーテンは親友と思うほどになる。
王位についたアクナーテンは、太陽神であるアテンのみを信じる一神教とし、遷都して芸術家を集め、皆が愛し合う平和で美しい都を築こうとする。
外敵に襲われた属国や友邦に援軍を送ることを拒み、大罪人も厳罰を与えずに穏やかに反省させようとするアクナーテン。
エジプトは混乱し、次第に衰退していく。
美しい王妃ネフェルティティは夫を愛し続けるが、夫の宗教観を理解はしきれない。
貴族の少年ツタンカーテン(後のツタンカーメン)はネフェルティティの次女と結婚し、後継者となるのだが。
忠実だったホエルムヘブはついに耐え切れなくなり、王の暗殺を決意。
ネフェルティティの姉妹は野心家でホルエムヘブの妻となることを選び、後に王妃となるのだった‥
ホルエムヘブが軍人から王になったのは史実で、第18王朝の最後の王。
アテン神信仰を異端としてアクナーテンら4代の事績を抹消したため、正確なことがわからないんですね。
そのあたり、空想を膨らます余地もあるという。
アクナーテンは一神教をおこしたことでキリスト教社会では人気があるそう。なるほど。
紀元前1350~1334年頃の在位。
キリストの早すぎた先駆者といったところでしょうか。
(日本人にとっては、多神教を信じる庶民感覚もわかる気がするんだけど)
この時代についてはクリスチャン・ジャックの「光の王妃 アンケセナーメン」が詳しく、面白いですよ。アンケセナーメンは少年王ツタンカーメンの妃になった王女です。
アガサ・クリスティは考古学者マックス・マローワンと1930年に再婚。
この作品は1937年に執筆されていたが未発表で、1973年に刊行された。
気に入っている作品だそう。
個性豊かな歴史上の人物をいきいきと描き出した筆致は乗っていて、気に入っていたのはわかる気がします。
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有名なツタンカーメンのお父さんが主人公の戯曲。
とはいえ設定は戯曲用なので、実際の系譜とは違うところもありますね。
さらさらっと読了。
愛だの平和だの声高に言う人は微妙。そういう人に権力を握らせるのは危険というお話。
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やっと文庫版入手。Kingle版しか見つからなくて、読んでからずっと印象に強く残ってた作品。Kindle版には後書きとか解説が無いんだけど、文庫の解説、吉村作治先生だったー( ´ ▽ ` )
お気に入りの栞挟んでおく。
なんでこんなに惹かれるのか分からないけど、、、銀の匙みたいな繊細さと美しさと脆さと。ガラスのナイフみたいな透き通った鋭さ。
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エジプト第18王朝・アクナーテン王を描く。
アクナーテンは力を増し私腹を肥やしている神官勢力を削ぐため、太陽神を敬う一神教アテン教を唱える。王の理想は戦いの無い世の中であったが、周囲の国に攻め入られても己のその信念から武力で対抗しない。腹心の軍人ホルエムヘブが侵攻しようというと「力は平和をもたらしはしない」さらには「肝心なのは一つの国ではない、世界なのだ、私はエジプト一国を愛するだけではない。全世界を愛しているのだ」と言う。・・・確かに理想だが、その理想は現在も実現されていない。実在の王を通しクリスティの思いを吐いたように思う。
アクナーテン? 恥ずかしながら知らなかったのでちょっと検索すると、妻は父王の妻と同じ名。ん?と思うと父の側室の一人と出ている。さらにエジプトでは王族は平民と結婚しない、というようなことで近親婚となり、父と娘、兄妹での結婚も多いのが分かった。アクナーテンは正妻のほかに同父同母の妹も妻にし、その子供がかのツタンカーメンで、さらにツタンカーメンはアクナーテンの正妻の娘つまり異母妹と結婚、と載っていた。mm・・
解説がエジプト学者の吉村作治。吉村氏によるとアクナーテンがどういう形で死を迎えたのか記録は残ってなく、小説家の間ではいろいろな説が出されているとあり、クリスティさんは毒殺説をとり、アクナーテンは急に歴史から消えたので毒殺説が可能性が高いと思うと書いていた。
ツタンカーメンのミイラは1922年にハワード・カーターが発見。そんなニュースもリアルに聴いていたろう。
ツタンカーメンの母KV35YL(2010.9月ナショナルジオグラフィック)https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/1009/feature01/gallery/13.shtml
アクナーテン王の理想郷アマルナの庶民は?(NG)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/7701/
1937執筆(1973初演)
2004.10.15発行 図書館
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アクナーテン(イクナートン)は一神教の始祖として語られることもある
多神教世界のなかで他の神々の崇拝を禁じ、太陽神アテンのみを神としたという意味では、一神教というよりは、多神教の多数の神々のなかから一柱の神を選び出して優位においたというべきかもしれない
しかしヨセフやモーセが古代エジプトで重要な人物であったことからすると、やはり完成された一神教であるユダヤ教に与えた影響などを空想(妄想)してしまう
有名なネフェルティティ、ツタンカーメンも出てくる!
アクナーテンに興味のある人にはおもしろい作品
そうでない人はつまらないと感じるかも(ミステリではありません)
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ミステリの女王クリスティには考古学好き、西アジア好きという一面がある。
舞台はエジプト、後にアマルナ時代と言われるアクナーテン王の治世。強大なアメン神官の力を削ぐために、アクナーテンはテーベからアマルナへ遷都し、太陽の神アテンを唯一の神として祀り始める。長い古代エジプト史の中でも謎とロマンに満ちた時代だ。個人的には、アクナーテンという王は、アケナテンないしアクエンアテンと表記する方が見慣れた気がする。
美術史上最も美しいとされるネフェルティティの胸像をキーに、クリスティはアクナーテンの哀しい物語を、虚実ギリギリのところで描いている。実は私の恩師がこの時代の専門家で、学生時代にはそれなりに文献も読み漁った。著名な考古学者で夫でもあるマックス・マローワンのツテでクリスティがエジプト学者にも監修してもらったという本作は、細かい点まで史実に忠実で驚かされる。あの時代の彼らはこんな風に話し、考えていたのかなと想像するだけでも楽しい。
クリスティの最晩年に書かれたこの戯曲にはミステリの要素はほとんどない。クリスティのエジプトへの憧憬が書かせた作品という気がする。
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アクナーテン
どんな作品でもそうだが取りかかる順番はとても大事で、相乗効果で面白さが増す事がよくある。今作、「アクナーテン」を読む前に「ファラオの密室」(2024年)という作品を読んでいた為、世界観が踏襲され、まるで続編を読んでいるかの様な感覚になった。
「ファラオの密室」では神官とこの時代に生きる市民や奴隷、神々を中心に物語が描かれ、「アクナーテン」ではこの時代のファラオ、王族達を中心に物語が進められる。
今作に登場するファラオ、アクナーテン(おそらくアクエンアテンは読み方の違い)は愛と平和に憧憬する王なのだが、歴史上は余り評価されていない。彼が憧れる世界は理想郷であり、人間の悪い部分、醜い部分が一切見れていない。
彼の母親であるアイや妻であるネフェルティティ、心から信頼しているホルエムヘブなど彼を慕う人物達も沢山いる中で、大国エジプトのファラオの強大な権力、影響力が如何に秩序をもたらしていたのかという事がとてもわかりやすく設定されている。
戯曲は読み慣れていないし、実はクリスティ作品は沢山読んでいたが戯曲と恋愛シリーズは手付かずだったのだが、上記のきっかけもあり、クリスティ作品をもっと楽しみたい思惑もあり、読み始めてみた。
また、エジプト史は学生時代に興味を持っていた分野だったので、抵抗がなく、更に「ファラオの密室」で感じた余韻を楽しみたい意図もあり決心した次第だ。
世界観について、クリスティの設定は見事で、考古学に深い理解のある彼女ならではだと思う。
アクナーテンは悪王としての印象があるが、決してエジプトを滅亡に導いた訳ではなく、彼の思想、経験が破滅への土台になっていたという設定だ。彼はエジプトの神々を抹消し、一神教を強要していくが、その中で腹心であったはずのホルエムヘブさえもが彼の元をさり、最後、唯一愛したネフェルティティのみが彼の元に残るのは印象的な結末だ。
同じ時期にエジプトに関わる偉大な作品を、しかもミステリ、戯曲という型で読む事ができ、改めてエジプト史への興味が湧いてきたと同時に、ツタンカーメンに関わる文庫がまだ家にあったため、いずれ読もうと思う。
アクナーテンだけの感想では無いが、とても楽しめた一週間だった。