- 販売開始日: 2012/08/01
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-110923-7
時間の習俗
著者 松本清張 (著)
神奈川県の相模湖畔で交通関係の業界紙の社長が殺された。関係者の一人だが容疑者としては一番無色なタクシー会社の専務は、殺害の数時間後、遠く九州の和布刈(めかり)神社で行われ...
時間の習俗
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商品説明
神奈川県の相模湖畔で交通関係の業界紙の社長が殺された。関係者の一人だが容疑者としては一番無色なタクシー会社の専務は、殺害の数時間後、遠く九州の和布刈(めかり)神社で行われた新年の神事を見物し、カメラに収めていたという完璧すぎるアリバイに不審を持たれる――『点と線』の名コンビ三原警部補と鳥飼老刑事が試行錯誤を繰返しながら巧妙なトリックを解明してゆく本格推理長編。
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代表作といってもいいのでは。
2022/01/27 15:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:imikuto - この投稿者のレビュー一覧を見る
松本清張には、ゼロの焦点、砂の器、点と線など、代表作、有名作と言われるものが多い。
本書もそれらに仲間入りさせてほしい。ただ、上記3作にくらべれば、知名度は低いし、レビュー数もかなり少ない。
清張ミステリーにはシリーズ物が少ない。少ないどころか、点と線と本書が唯一のシリーズ物と言える。
シリーズ第2作だからなのか、点と線より評価がされていないのは悲しい。
評価が低いなんてことは絶対ない。すくなくとも本格性については同等か、それ以上ではないかと思う。
点と線が、社会派と本格派との融合だったのが、本書では本格派に絞っている。そこが評価の低い一因となるのだろうか。
おそらく清張は、点と線よりももっともっとすごいトリックを書きたくて本書を書いたのだろうと想像できる。
ついつい「点と線」と比べてしまいますが
2017/01/31 22:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:midnight-sun - この投稿者のレビュー一覧を見る
2007年のビートたけし主演のドラマ「点と線」は、鳥飼刑事と警視庁の三原刑事は事件の後二度と再開することなく、老年となった三原刑事に、同じく年を重ねた鳥飼の娘が東京へ会いに来て、事件を回想するという設定から始まる。しかし、これはドラマのオリジナルの設定であって、鳥飼・三原のコンビが活躍する作品としては後に書かれたのがこの「時間の習俗」がある。当時の社会派推理小説としては、題材としている社会的背景という点で「点と線」が秀逸なのだろうが、事件解決に至る過程はこちらの「時間の習俗」の方が密度が濃いのではないだろうか、そういう見方もあって良いと思います。それと、もう少し文章が丁寧に書かれていたら、「点と線」のような鳥飼・三原両刑事の互いの信頼に思いを馳せて読むことができたかもしれないが、さすがに多作な時期ということもあるのか、話の展開を追うだけという雰囲気が感じられて、その点も若干残念です。
本格ファン必読!『点と線』以上にトリッキーな「アリバイ崩し」
2000/08/10 01:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:松谷嘉平 - この投稿者のレビュー一覧を見る
■極めてトリッキーな「アリバイ崩しもの」の本格推理小説。
▼神奈川県の相模湖畔で交通業界紙の社長が殺害される。三原警部補は容疑者としてタクシー会社の専務に注目するが、彼は殺害推定時刻の数時間後に九州の和布刈(めかり)神社で行われた神事を見物していたと主張、その写真を証拠として提出する。三原は「あさかぜ」の事件(『点と線』)時と同じように、福岡の鳥飼老刑事の協力を受けながらこの鉄壁と思われるアリバイを解明していく。
■『点と線』以上にトリック小説としては高度な作品。非常に手強いアリバイ・トリック(ちょっと物理的には時代遅れになってますが)を、幾多の試行錯誤を経て解明していく展開は、まさに推理小説。「これをパズラーと言わずして、何と言う」といった感じ。なんですが、あまり評価されないんですね。その理由は結構、単純なんじゃないかなって思います。
■まず、犯人があまりにも早くから一人に絞られてしまうこと。
つまりフーダニット性が皆無。『点と線』の方は同じように見えて実はそうではない作品で、しかも「動機の複雑さ」というのも用意していたりするんですが、そういうのは、まるでなし。動機も単純で掘り下げもなく、その点「社会派」とも言えないです。
■阿刀田高は『松本清張あらかると』で、本作について「刑事コロンボを想起した」というようなことを書いているんですが、確かに、倒叙物のスタイルでストレートに書かれていた方が面白く読めたかもしれません。
■このことを含めて、結局、本作の欠点を一言で言えば、小説としての叙述に魅力が乏しいということなんですね。
■特に推理の過程が単なる「説明」に流れてしまうところが問題。このことは『点と線』でも多少言える事で、もしかしたら清張の欠点なのかもしれませんが、それでも後者では推理している三原の「様子」を同時に描くことで上手くカヴァーできてるのに対して、本作の方は、そういう部分の描写が少なく、叙述と推理の説明の間の距離がゼロに近くなってしまってるところが多すぎて、何だか小説のシノプシスを読まされているような気分になってしまい、著しくサスペンスが減退するという悪い結果になってしまっています。
■このころは清張は完全な流行作家で忙しかったんでしょうし、本作がそうかは判りませんが、口述筆記もしていたようで、その点で小説としての表現に不備が出てしまったんでしょうね。そういう点がきちんとしていれば、かなりの傑作になったと思われるので、ちょっと残念。ただ、マニアな方は、絶対に抑えておくべき一編かと思います