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  • 販売開始日: 2012/10/01
  • 出版社: 新潮社
  • ISBN:978-4-10-113318-8
一般書

落日燃ゆ

著者 城山三郎

東京裁判で絞首刑を宣告された七人のA級戦犯のうち、ただ一人の文官であった元総理、外相広田弘毅。戦争防止に努めながら、その努力に水をさし続けた軍人たちと共に処刑されるという...

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落日燃ゆ

税込 693 6pt

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商品説明

東京裁判で絞首刑を宣告された七人のA級戦犯のうち、ただ一人の文官であった元総理、外相広田弘毅。戦争防止に努めながら、その努力に水をさし続けた軍人たちと共に処刑されるという運命に直面させられた広田。そしてそれを従容として受け入れ一切の弁解をしなかった広田の生涯を、激動の昭和史と重ねながら抑制した筆致で克明にたどる。毎日出版文化賞・吉川英治文学賞受賞。

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みんなのレビュー257件

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評価内訳

「統帥権」に敗れたリベラリストの生き様

2008/04/21 13:26

15人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ナンダ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 すさまじい小説だ。司馬遼太郎的な英雄物語になるかならぬかのぎりぎりの線を守りながら、広田弘毅という人物を描ききっている。戦争は、天皇や軍部の一部個人だけの責任ではない、統帥権の独立という体制の問題である、ということが透けて見える。
 さらにいうならば、権力の大衆操作に加担したマスコミや政治家、そして大衆自身による翼賛的な圧力がなければ広田の外交はここまで破綻しなくてすんだかもしれない。
 政府の意向も軍の参謀本部の意思をも無視して独走する軍をおさえ、平和外交をめざそうと努力するが、「統帥権」をふりかざす軍部につぶされていく。まさに「長州の作った憲法が日本を滅ぼす」ことになった。
 皇族出身の近衛首相が、大衆的な人気を背に「革新(皇道)」という時流にのって勇ましい発言をくりかえす。
 国民精神総動員運動を主唱し、表現の自由まで圧殺する国家総動員法を「流動的な戦局に即応するためには必要であり、大筋だけでも議会を通して制定したほうが、立憲の精神に沿う」と通してしまう。また軍のふりかざす統帥権に悩んで、首相を構成員とする大本営をつくろうとしたが、陸海軍に反対され、結局、首相参加は拒まれ、陸海軍合同の作戦指導部という純粋な統帥機関をつくってしまった。
 そして最後は、事態収拾の自信を失い、内閣を投げだす。その直後に「軍部をまとめられるから」と東条内閣が生まれた。近衛がお坊ちゃん人気を背に軍事独裁への筋道をつけ、広田の主導していた「平和外交」の息の根を止めたのだった。
 そう、孫の細川元首相にそっくりなのだ。お殿様の家系と「政治改革」を標榜して人気を得て、結局は与党権力の独裁化を促す小選挙区を導入した。そして最後はあっけらかんと投げだした。
 ずるずると軍国への道へと押しやられ、広田は敗北する。そして戦後、「戦争については自分には責任がある。無罪とはいえぬ」といっさい自己弁護せず、最も嫌った軍人たちとともに絞首刑に処せられる。
 死刑の直前、他の戦犯が「天皇陛下万歳!」と叫ぶ傍らで、広田は「マンザイ」と唱えた。最後の最後に痛烈な皮肉を放った。
 広田らが処刑されたその日、吉田茂は国会を解散した。戦中の指導者は忘れられ、新時代はすごい勢いで流れる。あっというまに「戦争なんて遠い昔」となってしまった。

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自ら計らわず

2020/06/21 23:33

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:dsukesan - この投稿者のレビュー一覧を見る

日本が太平洋戦争へと踏み込んで行った経緯がよくわかる。決して一枚岩で戦争に突き進んだのではなく、天皇、首相、外務省、様々な立場が時に平和主義者として振る舞い、ある行動が戦争を促進に繋がったり。軍部の暴走に牽引された、大きなうねりにとなって戦争に陥入って行った歴史が紡がれる。
その、大きなうねりの中で、翻弄されながらも個人として、平和への志を失わずに、働き続け、死んで行った広田弘毅という人物の人生が静謐な筆致で描かれる。物来順応、自ら計らわぬ生きかた。決して真似することができないし、何故、他者にあれだけ邪魔をされても、自らの命を賭けてまでも、戦犯という汚名を着せられても、その様に在ることができたのか。全く理解ができないが、責任を果たすということ、意志を強く持つ人の姿にこの書を通じて触れることができたことは、自身の駄弱さを痛感し自らの来し方を省みる上で、僥倖なのかもしれない。

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歴史の教科書

2016/07/04 04:57

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ちぃ - この投稿者のレビュー一覧を見る

戦後70年を経過して、戦争の反省と教訓を考える材料として学校で習った無味な歴史の教科書を乗り越えた書物です。広田弘毅の生涯と生き様という個人の生き方だけでなく、南京事件、東京裁判を改めて考えさせてくれる時代背景、戦争を引き起こした多数の主要な人物の思考・行動が見えてくる書物です。読み終えましたが、再読に値する書物です。「城山さん、よくもここまで調べて名書物を遺してくれてありがとう」と言いたいくらいの感謝作品です。

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城山三郎氏の名作の一つです!

2016/08/10 09:15

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書は、城山三郎氏の有名な作品です。毎日出版文化賞、吉川英治文学賞を受賞した作品です。東京裁判で絞首刑を宣告された7人のA級戦犯のうち、ただ一人文官であった元総理、外相広田弘毅ですが、彼は戦争防止に努めながら、その努力に水をさし続けた軍人たちと共に処刑されるという運命に直面することになってしまいました。そして、それを従容として受け入れ一切の弁解をしなかった彼の生涯を、激動の昭和史と重ねながら抑制した筆致で克明にたどっていきます。ぜひ、皆さんに読んでいただきた作品です。

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広田弘毅

2019/11/09 20:30

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る

A級戦犯として処刑された外務大臣、広田弘毅。政治結社の娘である奥様が自ら命を絶った後も、「シズコドノ」という書き出しの手紙を家族あてに書いていたことに胸を打たれました。

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本物の庶民宰相だったのだが・・・

2023/09/18 23:19

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:和田呂宋兵衛 - この投稿者のレビュー一覧を見る

石材店の息子に生まれ家業をつぐはずが、周囲の期待を受けて進学コースを歩み、
日清戦争後の三国干渉を見て、戦争に勝っても外交で負ける日本ではだめだと、外交官を志す。
外交官になっても、パーティーやダンスといった社交ごとは苦手。
門閥、閨閥がモノをいう世界なのに、結婚したのは、郷里で学んだ玄洋社ゆかりの女性。
それでも広汎な情報収集と粘り強い交渉力で頭角を現わし、
満州事変、国際連盟脱退といった暗雲が立ちこめる時、外相に就任。
2.26事件後、「背広を着たやつがいい」ということで、まさかの首相を拝命する。
この人こそ、後年の「今太閤」なんぞと違う、本物の庶民宰相だったのではないか。
それだけに、昭和天皇に「名門をくずさぬように」と釘をさされたというのは、悲しい。
だが広田内閣は、中国大陸進出と軍備強化を推進しようとする軍部との折り合いがつかず、
一年も持たなかった。
その後、近衛内閣で再び外相に引っ張り出された時、日華事変が勃発。
軍部に真っ向から反対するのではなく、国益を守りながら平和的解決を図ろうとしたが、挫折。
首相・外相在任時の行動が、極東軍事裁判で、侵略のための「共同謀議」を行ったとして、
死刑を宣告される。
右翼団体と目された玄洋社とのつながり、頭山満の葬儀委員長を務めたことが、
命取りとなったのだろうか。
それでも、彼は一言も弁解しなかった。
義務を果たして生き、死ぬとは、こういうことか。見失いがちなことを、思い出させてくれた。

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落日燃ゆ

2014/11/17 17:23

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

A級戦犯で唯一の民間人であった事が心に残り、靖国神社問題を改めて考えるようになった。

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時代のスケープゴートとされた広田の生涯を辿る。

2003/07/23 04:06

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:由良 博英 - この投稿者のレビュー一覧を見る

文民統制が当然という、欧米の近代政治の価値観のなか、その首相時の「国策の基準」を共同謀議の起草とされ、東京裁判で唯一の文民として絞首刑に散ったA級戦犯、広田弘毅の評伝。陸軍の専横をさらに増長させた軍部大臣現役制の復活など、広田の失政を批判する声は現在も強い。しかし、二・二六事件で前内閣が総辞職し、彼が首相に推輓されたときに、既に日本に文民統制はなかった。時代のスケープゴートとされた広田の生涯を辿る。

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悲しい主人公の半生記

2017/08/17 19:00

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:井沢ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る

A級戦犯で一人だけの文民だった広田弘毅の半生。都合の良い理由をこじつけられた米国を中心とする連合国軍の裁判に一言も言い訳をせずに絞首刑になった。天皇の責任を追及され死刑にならないように、また、太平洋戦争を起こした時期でもないのに、元首相として戦争を避けることができなかった責任を感じたこと、また責任のなすりあいで被害者を出したくないという理由などで一言も弁明をせず、死刑を受け入れた。しかも、実態が戦争を回避することに尽力した人物であるにもかかわらず、そうなってしまったことの矛盾。初めて知ったこの偉人、とても悲しい。家族はどんな気持ちだったか想像に難くない。米国人の検事でさえその判決がおかしいと感じていたのに執行されてしまったのは、とても割り切れない。歴史は明治維新までに興味を持っていて、初めて読んだ著者の作品で、戦前・戦後の史実を学んだ。とても悲痛な気持ちに慣らされた。こんなに報われない人物もそういないと感じるとともに、開戦を決めた当時の首相兼軍人の東郷秀樹は悪魔だ。

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広田弘毅という政治家を知れる本

2016/05/05 10:18

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:mariner51 - この投稿者のレビュー一覧を見る

東京裁判でA級戦犯にされ、死刑判決を受けてしまった広田弘毅元首相・外相の話。

日本の昭和初期から戦前の政治が描かれていて、軍部と政治家が一枚岩になっていなかったことがよく分かる。こんな状態で共同謀議という罪状なんてあり得ないのだが、と改めて思う。

広田弘毅は戦争に反対していたし、早期講和を望んでいたと思われるが、それにも関わらず戦犯にされてしまったことは関係者の方々は悔しかったに違いない。(本人は責任ある立場で、戦争を止めれなかったことに責任を感じていたようだが)

戦前の日本は悪というように漠然と言われることが多い気がするが、こういった書籍を読むと、色々な立場や考え方があったことが分かり、勉強になる。

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悲運の首相

2017/05/24 12:27

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:こぶーふ - この投稿者のレビュー一覧を見る

東京裁判で文民で唯一絞首刑が執行された広田弘毅さんについての、城山さんの小説です。広田さんは賛否ある方ですが、この本は賛の視点で書かれてます。戦争中のキーパーソンがいろいろと登場し、読み応えもあります。

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無責任な男は死刑になって当然!

2002/04/10 21:31

16人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 広田弘毅は足して2で割る日本的政治家の典型だった。だから傲慢な軍部を前に敢然と立ちはだかることは出来ず、ずるずると後退を続けた。この凡庸な馬鹿外務大臣の時に、近衛文麿首相は有名な「以後、蒋介石を相手とせず」という愚かなセリフを吐き、日本の退路を断ってしまう。まるで今のイスラエルのシャロン首相みたいな馬鹿さ加減だ。広田は死刑になって当然だった。城山よ、あんまりウソ書くなよ。絶対読むな、こんなウソで固めた悪書を。

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2004/10/15 00:04

投稿元:ブクログ

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2005/01/03 17:49

投稿元:ブクログ

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2005/12/18 20:09

投稿元:ブクログ

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