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陰謀論の持つ滑稽さと暗い闇
2016/01/30 22:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
自称「保守」の論客達が主張する「張作霖爆殺の真犯人はGRUだった」とか「真珠湾奇襲はルーズヴェルトがわざとやらせた」といった事柄を著者は軽妙な語り口で木っ端微塵にしている。共産主義者だったら「朝鮮戦争は李承晩が北侵した」といった主張が陰謀論の見方だろう。
陰謀論は一見もっともらしく見えるようだが、実は馬鹿馬鹿しい程滑稽な代物だ。それを「信奉」したら、例えば「コミンテルン(あるいはフリーメーソンやアメリカ帝国主義など代替え用語は色々とある)の陰謀が世界を動かしている!」と見えるようだ。本当にコミンテルンやフリーメーソンがそんな実力があるのか、少しでもキチンと批判的に調べて考えてみれば分かりそうなものなのに。
「ユダヤ人が世界を支配しようとしている(または、支配している)」といった陰謀論は反ユダヤ主義が生まれた時代から根が深いが、それがアウシュヴィッツへの道を開いたのだから。「ユダヤ人問題によせて」のような経済に全てを求めた底の浅い本の著者の弟子を任じた共産主義者達が「トロツキスト」とか「コスモポリタン」、「シオニスト」と言い換えた新たな反ユダヤ主義を生み出して、日本の左翼にも、それが見られる。
紙の本
バイアス
2012/07/07 22:18
2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
陰謀論というのは実に便利な論法だと思う。
なぜなら加害者であっても被害者のふりができるから。
しかも証拠は、ほとんどいらない。
いや、証拠が全くないケースでも
「これに関する証拠が全くない事が逆に証拠となっている」
などと言う事ができる。
最近、逮捕された指名手配犯がかつて所属していた某宗教団体が強制捜査を受けているとき
「自分達を陥れようとしている何者かの罠だ」
と主張していたことを覚えている人もいるだろう。
本書は、そんな陰謀論を一刀両断にするもの、と思ったが、さにあらず。
ジャンルも日米関係、それも第二次世界大戦前後に絞っている。
しかも日米関係の歴史に全体の半分近いページ数を割いて説明している。
一番、興味を持ったのは、一つの章を使って、元自衛隊幕僚長の某氏の論文を批判している部分。
過去に出てきた陰謀論を体系的にまとめているという功績はあるものの目新しい内容はなく、事実誤認も多いらしい。
以前、ニコラ・テスラ(エジソンのライバルと言われた人物)の伝記を読んだことがある。
本自体、古本屋で買ったものだったのだが、オカルトに近い事になるとあちこちに赤線が引いてあるが、電気についてなどの業績に関わる部分には1本の赤線もなかった。
人は何かを見たり、読んだりしても、ありのままでなく、無意識に自分が望んでいるものに合うもの以外は切り捨てているのだな、とつくづく思う。
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東京裁判、コミンテルン、CIA、フリーメーソン・・・疑心が疑心を呼ぶ。
第一人者が現代史に潜む魔性に迫る。
「何かあるに、ちがいない」陰謀論と秘密組織の謎
誰が史実を曲解し、歴史を歪めるのか。
第1章 陰謀史観の誕生
第2章 日米対立の史的構図(上)
第3章 日米対立の史的構図(下)
第4章 コミンテルン陰謀説と田母神史観
第5章 陰謀史観の決算
世の中には、陰謀史観というものがある。本書では現代史研究の第一人者
である著者が徹底検証している。陰謀史観には、根拠の不明確なものや論
証の粗いものが多い。自分の主張ありきで、資料の都合の良い部分だけを
引用する牽強付会な感がある。
東京裁判史観を批判する人たちには、歴史の専門家は少なく他分野(英語学、
ドイツ文学、国文学、数学)やアマチュアの論客が多いという。
いずれも読者の情緒に訴えるレトリックの功者であることから、支持する人
も多いようである。
陰謀史観がはびこる背景には、あえて異を唱え名を売るという側面もあるよ
うだ。「歴史学では大小の論争がつきものである。そして問題提起、推論、
仮説が出つくす過程を経ておのずと通説や定説が固まってくるのだが、それ
にあえて異を唱える主張と論者は修正主義、修正論者と呼ばれる。新人が名
を売る早道なので、アメリカには「修正主義者は事件の数ほどいる」と皮肉
る声もある。」
本書は、現代史をテーマに取り扱った本であるが、歴史とどう向き合うのか
考えることが出来る内容である。
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第一次・第二次世界大戦における陰謀史観を検証した本。前半はアメリカでたびたび出てくる昭和天皇を戦争の「元凶」とする仮説で、後半は主にソ連やコミンテルンの「陰謀」とする言説を取り扱う。現在まかり通る(そして、今後もまかり通るであろう)陰謀史観に対抗する知識や姿勢を身につける上では必読。
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ルーズベルトは真珠湾攻撃を知っていたとか、田母神様の論文の内容など主に近代史に顔を出す陰謀論についての考察。戦争などの原因などは多方面に渡ることが多いので、どうしてもこれといった確定的な要因が無いことが陰謀論のはびこる原因だということがわかる。個人的にハワイ併合の話は知らなかったので参考になった。
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*寄付
昭和天皇に評された軍部 進むを知って退くを知らず
★戦争をくぐり抜けた日米両国は半世紀を超える強調と同盟の関係を維持してきた。それを対米従属とみなし、「甘えても怒られない」(怒ってくれない)のを承知の上で反発する論調は今後も絶えないだろう。むしろ懸念されるのは、アメリカが日本を捨てる時の到来かもしれない
検証 真珠湾の謎と真実
江藤淳 war guild論 米財団の給費で研究生活を送っている最中に米人教授から提供された材料を使って仕上げた 米議会がベトナム反戦運動のリーダー小田実(元フルブライト留学生)をやり玉に上げたのと違い、非難された形跡がない
日米関係にひそむ甘えの精神構造に早くから気付き、それを最大限利用
江藤がGHQによる愚民化政策と見立てた検閲が早い段階で緩和されたのは日本人が進んで占領方針に同調したので、宣伝や教育はあまり必要でなくなったと判断したのかもしれない。だが江藤はそう考えていない
一人をだますより、多数の人間を騙すほうがやさしい ヘロドトス
陰謀説の嘘の著者であるアーロノビッチ 陰謀説が政治的敗者によって考案され、社会的弱者によって支持されてきたと観察する。敗者や弱者の挫折は自身の失敗のせいではなく、邪悪な陰謀者の悪巧みにうっかり乗せられてしまったせいにすれば、気が晴れるというもの。
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秦郁彦は実績ある学者である。
彼の最大の功績は従軍慰安婦に関する嘘を暴き出したことにあるだろう。
政治的にはともかくとして、学術的に従軍慰安婦問題はケリのついた話になっている現況は、秦郁彦等の研究者たちの地道な努力の結果だと考える。
その秦郁彦による陰謀史観の本。
さて、読後感だが、研究者としての秦郁彦が集めたデータ・資料が本著にもふんだんに盛り込まれているが、これは大いに参考になる。しかしながら、全体的に著者の史観がバイアスとなって読みにくいことこの上なかった。このあたりを割り引いて読まねばならぬと感じた次第。
もうひとつの読後感は、『陰謀史観そのものは排除すべき』だが、『すべてを陰謀史観として排除してもならない』ことである。
例えば、「ユダヤ資本が日本を支配している」という史観がある。これを否定するだけの材料もないが、さりとて俄かに肯定しがたいところもある。だから、私としてはYesともNoとも言えない。こういった史観をフレームワークにすることは、正直、できない。
ならば、こういう「ものの見方」はどうだろう。
「中国は対日戦略として日本のマスコミを手中にしている」
これを否定するだけの材料は、市井の私たちは持ちえない。しかし、これは何となくありそうな気がする。つまり、「自分が中国首脳部であった場合、手っ取り早く日本の世論を手中に置きたかったら何をするのか?」といった視点で考えれば良いだけのことだ。この程度のことは、『戦国策』を紐解くまでもなく、彼の国では常識の範疇だろう。
私はここで「中国が日本のマスコミを手中にしているか否か」ということを問題にしているのではない。何でもかんでも「それは陰謀史観というやつですね」と切り捨ててしまうのも、戦略眼を曇らせてしまうことになると言いたいのだ。
その兼ね合いは実に難しいのだが…
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第二次大戦はコミンテルンやユダヤが仕組んだものだ、などという世間に流布する陰謀史観を検証。スケールの大きい話で反証しきれないことが、説がいつまでも生き続けることの背景にあるらしい。国際理解の妨げになるのでは問題だが、わかったうえで珍説を楽しむのならばよいのだろう。そのためにも騙されないようにしないと。。
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張作霖爆殺はソ連の仕業,ルーズベルトは真珠湾攻撃を知っていた,世界はユダヤ人やフリーメーソンに操られている…。こういった近現代史を捻じ曲げる臆説の数々を紹介し論駁を加えた好著。世に陰謀論の種は尽きない…。
著者の定義によると,陰謀史観とは,「特定の個人ないし組織による秘密謀議で合意された筋書の通りに歴史は進行したし、進行するだろうという見方」(p.8)。なんとも不自然な視点だが,単純明快で結構受け入れられてしまう。政治的敗者によって考案され,社会的弱者によって支持される。
田中上奏文,シオン議定書など,偽書であることがほぼ証明されている文書や,なかばでっち上げられた史料に(そうとは知らず/それを信じず)基づいて,陰謀史観に陥る人は後を絶たない。田母上史観がそんなにやばいとは,知らなかった。かなり体系的に自身の陰謀史観を固めている様子。それを広める藤原正彦氏…。
こういう人々に,陰謀組織としてあげつらわれるものには2タイプある。コミンテルン,ナチ,CIA,MI6,モサドのような国家機関と,ユダヤ,フリーメーソン,国際金融資本,カルト教団などの秘密結社。後者は活動内容が事後的にも見えづらく,論者の妄想力はますますたくましくなっていく…。
真珠湾奇襲はプロの軍人にはあまりにも投機的に見えて,意表を突かれたというのが真相のよう。哨戒飛行もしていない。相当な戦果を挙げたのだし,ほんとに察知してたなら前日に艦隊を移動していたはずという秦氏の意見はもっともだなぁ。
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陰謀論というのは実に便利な論法だと思う。
なぜなら加害者であっても被害者のふりができるから。
しかも証拠は、ほとんどいらない。
いや、証拠が全くないケースでも
「これに関する証拠が全くない事が逆に証拠となっている」
などと言う事ができる。
最近、逮捕された指名手配犯がかつて所属していた某宗教団体が強制捜査を受けているとき
「自分達を陥れようとしている何者かの罠だ」
と主張していたことを覚えている人もいるだろう。
本書は、そんな陰謀論を一刀両断にするもの、と思ったが、さにあらず。
ジャンルも日米関係、それも第二次世界大戦前後に絞っている。
しかも日米関係の歴史に全体の半分近いページ数を割いて説明している。
一番、興味を持ったのは、一つの章を使って、元自衛隊幕僚長の某氏の論文を批判している部分。
過去に出てきた陰謀論を体系的にまとめているという功績はあるものの目新しい内容はなく、事実誤認も多いらしい。
以前、ニコラ・テスラ(エジソンのライバルと言われた人物)の伝記を読んだことがある。
本自体、古本屋で買ったものだったのだが、オカルトに近い事になるとあちこちに赤線が引いてあるが、電気についてなどの業績に関わる部分には1本の赤線もなかった。
人は何かを見たり、読んだりしても、ありのままでなく、無意識に自分が望んでいるものに合うもの以外は切り捨てているのだな、とつくづく思う。
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よく原因の分からない出来事が起きると何かの陰謀によると考える陰謀史観を、第2次大戦前に欧米で流布した田中上奏文から現代の田母神史観まで様々な実例を挙げて解説している。冷静になれば簡単に見抜けるような陰謀史観も疑心暗鬼な土壌が有ると容易に浸透するようで、荒唐無稽と甘く見ていると危険である。この本の内容は、これからの世の中で、的確な判断をしていくために最低限必要なリテラシーであろう。
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どんなに愉快な陰謀論でも、本当に信じちゃう人が出てきた途端に興醒めなので、そういう人を根絶する具体的方法を示してほしかった。
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いつの時代も疑心暗鬼になると、歴史上に陰謀史観がでてくることが多い。本書は特に近代以降のアメリカとの戦争前後の関係、コミンテルンなどの陰謀と言われることについて検討し、述べている。
著者によると、「特定の個人ないし組織による秘密謀議で合意された筋書の通りに歴史は進行したし、進行するだろうという見方」という定義になるが、いろいろな歴史上のことを確認すると勘違い等や特定の人間の恣意によって事実が曲げられていることも多い。
CIAなどの大きな組織や、ユダヤ人や秘密結社のような小さいものまでの団体はあるが、やはりそれらを見抜く力が必要だと感じさせられた。
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陰謀史観ちゅーのはね、と・・・
著者は・・・
『身のまわりに不思議な出来事が起きる。
もしかしたら、それは偶然ではなくて、何かの陰謀、<彼ら>の企みではないだろうか。このような考えを陰謀史観という。
この、見えない<彼ら>は、神であるかもしれず、悪魔であるかもしれない。
<彼ら>として、ユダヤ人、フリーメーソン、ナチ、共産主義者、さらには宇宙人までもが名指しされてきた。』との解説を紹介し、
これに著者は、『特定の個人ないし組織による秘密謀議で合意された筋書の通りに歴史は進行したし、進行するだろうと信じる見方』とも付け加える・・・
世の中にはたくさんの陰謀史観がありますが・・・
この本では、主に日本の近現代に絡むメジャーな陰謀論、陰謀史観を取り上げ、ヨユーで各個撃破していく・・・
そして様々な陰謀史観の内容と共に、日米戦争を巡る歴史講義のような形になっているので、歴史本としてもgooというお得スタイル・・・
ちなみにメジャーな陰謀論というと・・・
田中上奏文
ルーズベルト陰謀説
コミンテルン陰謀説
等々・・・
陰謀史観をクールに分解していくのも面白いし、歴史講義としてもなかなかに面白い・・・
good
さて、陰謀って・・・
何だか面白そうで興味惹かれちゃうし・・・
ストーリーも至ってシンプルで分かりやすいし・・・
実はこうだ、って言うのを知ってると何だか通っぽくなれるし・・・
非常に魅力的なモノなんだけど・・・
実際、世の中に陰謀はいっぱいあるんだろうけど・・・
陰謀通りにコトが進むなんて・・・
この複雑怪奇な世の中じゃほとんどないんじゃない?と思うよね・・・
いろんな思惑、それこそいろんな陰謀がめちゃくちゃ絡まり合うんだからね・・・
そうそう陰謀なんて上手くいかない・・・
ということで・・・
この本のラストは・・・
CIAやMI6・・・
ナチスやコミンテルン・・・
ユダヤやフリーメーソン・・・
三百人委員会など・・・
実態、実績をザックリ総ざらいし・・・
陰謀史観の手口を確認し、単純なそれに引っかからないよう学べるようになっている・・・
でも・・・
例えば・・・
日本がこんなになってしまったのは、とか自分がこうなったのは・・・
きっと誰々(どこどこ)の陰謀のせいに違いない・・・
と誰か(どこか)の陰謀のせいにすれば・・・
それはそれで少しは楽になれる、スッキリするから・・・
今後とも・・・
陰謀史観ってーのは・・・
廃れはしないんだろうなぁ、と思うよね・・・
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●:引用、無印・→:感想
コミンテルンの陰謀説に興味を持って読んだのだが、当たり前のように否定されている。まあ、こちらも読む前から、それは常識的には否定されることを予想しているのだが。
ただ、陳立夫の発言や、終戦時のソ連への和平交渉のことを考えると・・・
●「陰謀説の嘘」の著者であるアーロノビッチは、陰謀説が「政治的敗者によって考案され、社会的弱者によって支持され」てきたと観察する。敗者や弱者の挫折は自己の失敗のせいではなく、邪悪な陰謀者の悪だくみにうっかり乗せられてしまったせいにすれば、気が晴れるというもの。敗戦後の日本でアメリカ、コミンテルン、ユダヤ=メーソンの陰謀論が歓迎されたのは好例だが(後略)
→事実、というよりはある事柄を、素直に受け入れられない、納得できない時、それを受け入れる納得させるシステムとして発動するのが陰謀史観ということ。イソップ?のキツネ。
タモガミや中西などの著書を読まないと肯定的には書かれていないのだろうが、あえて読んでみる必要はあるのか?