- 販売開始日: 2012/11/01
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-112202-1
強力伝・孤島
著者 新田次郎
五十貫もの巨石を背負って白馬岳山頂に挑む山男を描いた処女作「強力伝」。富士山頂観測所の建設に生涯を捧げた一技師の物語「凍傷」。太平洋上の離島で孤独に耐えながら気象観測に励...
強力伝・孤島
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商品説明
五十貫もの巨石を背負って白馬岳山頂に挑む山男を描いた処女作「強力伝」。富士山頂観測所の建設に生涯を捧げた一技師の物語「凍傷」。太平洋上の離島で孤独に耐えながら気象観測に励む人びとを描く「孤島」。明治35年1月、青森歩兵第五連隊の210名の兵が遭難した悲劇的雪中行軍を描く「八甲田山」。ほかに「おとし穴」「山犬物語」。“山”を知り“雪”を“風”を知っている著者の傑作短編集。
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新田次郎の直木賞受賞作品
2008/09/15 18:45
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MtVictory - この投稿者のレビュー一覧を見る
直木賞受賞(昭和30年)の処女作「強力伝」を含む、作者初期の6つの短編集。舞台こそ違うが、いずれも極限の状況に置かれた人間が懸命に何かをやり遂げよう、または生きようとする姿が迫力をもって描かれている。
ここでは「強力伝」を取り上げる。強力(ごうりき)とは文字通り重い荷物を背負って高い山の上に物資を運ぶ人のこと。主人公の強力・小宮は富士山の優れた強力として活躍した人物(実在のモデルがいる)。その怪力ぶりから白馬岳山頂に風景指示盤用の重さ50貫(約187Kg)もある石を運ぶ依頼が彼にきた。人間の力だけでその石を2個も山頂に運び上げたこと自体が信じられないが、それをやり遂げるプロ根性は自らの命を縮めることにもなったようだ。相手は巨石だけではなく、白馬岳の険しい山道と雪渓が、その仕事を更に過酷なものにした。死と向き合いながらの石との、そして山との格闘の描写が痛々しいほどに鋭い。
1999年の秋、私も強力の小宮も通った滑りやすい雪渓を恐る恐る渡り、白馬岳の山頂を踏んだ。確かに山頂にはそこから展望できる四方の山々を描いた円形の風景指示盤があった気がする。が、それが彼が運んだものであるかどうか、なんてことなど気にも掛けようがなかった(この本で初めて知ったことだから)。まさか人間の力で運んだなんて想像もできない。平地を運ぶのとは訳が違う。こんなことを成し遂げた豪傑がこの日本にいたことを誇りに思える。