新潮文庫 20世紀の100冊(新潮新書)
著者 関川夏央 (著)
文学作品は、時代から独立して存在しているわけではない。その作品が書かれ、受け入れられ、生き残ってきたことには理由がある。与謝野晶子、夏目漱石、森鴎外などの古典から、谷崎潤...
新潮文庫 20世紀の100冊(新潮新書)
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商品説明
文学作品は、時代から独立して存在しているわけではない。その作品が書かれ、受け入れられ、生き残ってきたことには理由がある。与謝野晶子、夏目漱石、森鴎外などの古典から、谷崎潤一郎、三島由紀夫などの昭和の文豪、現代の村上春樹、宮部みゆきまで、1年1冊、合計100冊の「20世紀の名著」を厳選。希代の本読み、関川夏央による最強のブックガイド。
著者紹介
関川夏央 (著)
- 略歴
- 1949年新潟県生まれ。上智大学外国語学部中退。作家・評論家。神戸女学院大学特別客員教授。「海峡を越えたホームラン」で講談社ノンフィクション賞受賞。ほかの著書に「家族の昭和」など。
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他人と違う何かを語りたかったら、他人と違う言葉で語りなさい
2009/05/20 08:16
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は、どうやら、本という「製品」が好きなようである。
その形状、手触り、ページから立ち上る芳香、といった諸々をふくめた、本としての「製品」のことである。
新潮文庫が2000年に既刊の文庫に「20世紀の100冊」という、関川夏央の解説のついた特別カバーの文庫を刊行し始めた時、そのカバーが読みたくて、つい何冊か購入したのも、本という「製品」に対する私の嗜好癖がくすぐられたからだ。
装いをちがえただけであっても、人は既読の本でも手にする。本という、不思議な魔力としかいいようがない。
さて、その際刊行された100冊の解説を一冊にまとめられたのが本書なのだが、もちろん新潮文庫として出版されている作品という制約があるものの、100冊の本たちは先の世紀が残してくれた贅沢な遺産として見事である。
関川はその100年を「日本文学にとっては、西洋文学と西洋思想を咀嚼・吸収し、さらには変容させて、江戸近世文学以来の日本独自の近代文学を完成させるまでに要した」(6頁)期間とみている。ちなみに、20世紀の初めの年(1901年)を日本の元号の呼び名でいえば明治34年である。夏目漱石はまだ小説を書いていない。
関川は先の文章に続けてこう書いている。「青年たちは誠実に貪欲だった。先人の営為は偉大であった」と。
私はこのような関川夏央の、少しばかりしめりけの多い文章が好きである。
100冊の解説文の中でも、特に20世紀後半の解説に多いが、そういう表現が時折顔をのぞかせる。
「「戦後」は若かった。若くて貧しかった。汚れてもいた。しかし、それにもかかわらず、またそうだからこそ、誰もが懸命に生き抜こうとし、ときにその懸命さが悲劇をもたらした」(138頁・『飢餓海峡』)、「いずれにしても70年代は、古いアルバムにはさみこまれた写真の束のように未整理のまま放置されている」(164頁・『戒厳令の夜』)といった文体は、「解説」文としては装飾が多すぎるかもしれないが、それが関川の文章の魅力であるにちがいない。
また解説文につけられたそれぞれのタイトルがいい。
例えば梶井基次郎の『檸檬』(1925年)には「彼によって、どれだけの青年が「檸檬」という漢字を覚えただろう」とある。なるほど、うまいことをいう。
また、開高健の『輝ける闇』(1968年)には「頬の削げたナイフのような青年は、熱帯雨林の「死」を通過して「太った」」とおどける。
この感性もまた本書の面白さといっていい。
◆この書評のこぼれ話はblog「ほん☆たす」で。
一風変わった読書案内
2009/07/06 22:29
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
20世紀(1901年の「みだれ髪」から2000年の「朗読者」)の1年1年に1冊ずつを選び、紹介をしている。著者は『100冊の選択におおむね異論はなかった。』(p.2)そうだが、私のとは違う。もちろん、新潮文庫という制約はあるのだが、これを選ぶのかと疑問を覚えるものがあった。それは好みの問題以外に、選択の視点の違いもあるだろう。名作と面白い本と読むべき本は、それぞれ違う観点だからである。
本編は、解説と内容解説の部分に分かれている。解説部分は作品及びその著者の解題のようであり、内容解説はその文庫に収録された作品のプロット紹介である。解説の質はピンキリである。俎上にあがった作品のほとんどが日本文学で、明治から戦前の文学作品解説は流石なのであるが、海外文学となると心もとない解説が増える。いっそ日本文学に限ったほうがよかったのではないか。
100冊の中には読んでいない作品、作家がいくらかあり、読まずして先入観から手をつけなかったものがあるのに気づかされた。本棚からひっぱりだしてきて久しぶりに文学三昧をしてみてもいいなという気分にさせられた。高校・大学の間にこの100冊くらいは読んでおいたほうがいい。順に週1くらいで読むと決めて実行することを奨める。
話は変わるが、この本は読書案内として以外の利用ができる。そして、これが本編よりけっこう楽しかった。特にその年に誰が生まれたかのコーナーは、この人とこの人が同い年なんだと驚くこと多し。さらに、自分と同年代は?と興味は尽きない。