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2012/7/21 Amazonより届く。
2017/5/17〜5/22
5年前の本で内容的には古いところもあるが、大きな潮流としては変わっていないので、現在の世界を読み解くにも非常に参考になる。特に、橋下徹氏に対する分析は面白かった(橋下さんはこの5年の間に政界を引退したが)。
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語りおろしということで、確かに読みやすかった。でも、さすがにこの著者の本なので、内容は濃かったです。
最終章は、じっくり読むべし。そこには、本を読むことの大切さが書かれていた。全くその通りだと思った。古典の功徳を、月刊文藝春秋で解説していた趣旨がわかった。
自分自身、過去に読んだいろんな本のストーリーは覚えていない。でも、読んだことで感性、価値観、道徳観の肉付けが進んだと感じている。著者の佐藤優さんは、そういうことが大事だと言っているのだと思う。
私としては、宮城谷さんの中国古代史の小説や、城山三郎、藤沢周平、池波正太郎などの本が、結局、そういう肉付けをしてくれたんだと感じている。また、岡崎久彦や草柳大蔵は、教養とは何かを書いているけれども、本を読んだりして身に付いた考え方とか、身の処し方が教養だと思う。
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下がる賃金、厳しい就活、ひろがる格差。あなたの仕事がつらいのは、世界がすでに「新・帝国主義」時代に入っているからだと『外務省のラスプーチン』佐藤優氏が『語り下ろし』という手法を使って問いかける一冊。
僕も『国家の罠』に衝撃を受けて、筆者の本は大体読んできたつもりでございます。その中でも本書は『語り下ろし』という形式をはじめてとってあらわしたものだそうで、読んできた中でも屈指のる読みごたえある一冊でございました。
またさらに中学生の息子(娘)や、日本語を理解する外国人が通読できるように作られているので、(筆者の著作の中では)圧倒的に読みやすく、なるほどなぁと頷くことも多いかと思われます。なぜあなたの仕事はつらく、給料は上がらないのか? TPP加盟はほんとうに悪なのか?橋下徹氏にこの国をゆだねるべきか?その根幹にある原因が『時代は「新・帝国主義時代」に向かっている』と説きます。
新聞やテレビ、ラジオのニュースでも明らかだとは思われますが、米露中の大国に始まり、さらにEUと中東にいたるまで、「新・帝国主義」の論理によって行動し、世界を再編し、それぞれの国がまさに生き残りをかけて国家のエゴ剥き出しで戦っている、と筆者は持ち前の知識と論理でわれわれに語りかけてきます。
読んでいて驚いたのはロシアのプーチン政権を下支えするエリート層の中に、かつて筆者が『自壊する帝国』の中でキーパーソンとして描かれていた「リガのサーシャ」こと、アレクサンドル・カザコフの存在があったことでした。彼と筆者が連絡を取ったのは10年ぶりのことらしく、サーシャはプーチン政権のイデオロギーを構築し、自らも親衛隊の責任者という立場なのだそうです。
さらには第3章の『ハルマゲドンを信じている人々』という箇所では日本人には複雑を極める中東のイスラム教派閥の事情を解き明かし、イラン大統領が「ハルマゲドン」を本気で信じているからこそ、核兵器のボタンを本気で押しかねないということを危惧し、『全人類から同情されながら死に絶えるよりも、全人類を敵に回しても戦って生き残る』という国是を持つイスラエルが暴発しかねないことを危惧しておりました。
他にも、『資本論』を革命の書としてではなく資本主義についての解説書として読むことで現代を読み解いたり、橋下徹氏についての考察も筆者ならではのものがありました。
本書にとって処方箋に当たる『どうやって善く生きるか』では最低でも2つの古典を読み込んで生きる指針とせよと説きますが、「マネー教育をしてはいけない」というところだけは若干自分と考え方が違うなぁと重いながら、東京大学が秋入学を決断したのは国家と賭しての生き残り本能だと看破するのは日本と旧ソ連、ロシアで最高クラスの頭脳を相手に教鞭をとってきただけのことはあるなと思いながら最後まで一気に読み終えました。本当に面白かったです。
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個別の主張に対する理由の記載が少なく消化不良。もっと厚くてもよいので、「なぜそのように主張するのか」をきちんと書いて欲しかった。それは本書の趣旨に反する?著者の他の本を読め?自分で調べて自分で考えろ?そうですね、確かに。そうします。
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語り下し本、というだけあって、とても読みやすい。
今の「日本」の問題点と世界の中での位置づけ等について、帝国主義化(資本主義のグローバリゼーション)という文脈で語られた本。印象に残ったのは以下。
・日本の教育システムは非常に特殊。後進国型の詰め込み方式。その結果、日本の官僚が恐ろしく低学歴に。
・移民の受け入れ方は2つしかない。フランスとイギリス。フランスは徹底的に厳しく同化させる。その代わり二代目には差別がなくなる。イギリスは同化させない。寛容型。経済が悪くなると移民に皺寄せ。差別されて就職もできなくなる。
・エリート層の重要性。
・民主主義を考えた場合、国民一人一人が常に政治に関心を持っている体制はいい体制ではない。生産活動が疎かになる。
‥‥ちなみに、この人の本読むと、いつも「資本論」読んだ方がいいのかな~、という気持ちになる。
あと、松岡正剛氏の編集工学研究所の関与した企業研修の話も載っていて興味深かった。
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面白い。今の時代は新帝国主義の時代であると著者は説く。読みながら、今の世界の状況は共和制末期のローマに非常に似てるのだろうな、と思った。危機的な状況においては、帝政のように少数の人に権力を集中しないと、めまぐるしく変わる状況に対応出来ないのだろう。同じ著者の「国家論」も読みたいと思う。
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最後に書かれていることが、とても印象的だった。
小説ではなくて歴史でも寓話でもいいのですが、何らかの物語を作らないと、恐らく人間は「死」に対応できないでしょう。自分が生きてきたことの物語、あるいは自分の親しい人の物語はどうしても必要なのです。
真理は常に匿名性の下に現れる。(ヘーゲルが『法の哲学』でいった)ミネルバのフクロウも、(キリスト教の概念の)インコグニトも、あるいは神道の「言挙げせず」というのも、すべて共通していると思うのですが、形をなすのは、事後なのです。
日本が元気に立ち直るためには、日本人一人ひとりが言葉の使い方を変えて、国民を統合する物語をつくりだすしかないのです。そして、目に見えないものに想いをはせる。それが叡智に近づく唯一の道だと思うのです。
佐藤優がいうキーワードとして、「物語」、「真理」、「言葉」、そして「目に見えないもの」。
最近読んだ本に、「真理とはわずかなものです」ということが書かれていた。目に見えない真理を、言葉として、そして物語として紡いでいくことが大切なのだというメッセージ。
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この国における知のリーダーを育成する必要性を切に感じます。現在の知識エリートにも優秀な人材はいるのでしょうが、これからの物語を紡げる若い人達の出現を叶えることにもっと腐心すべきではないでしょうか。叡智をたどる良書です、そして我々の未来を照らします。
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いまの国内の歪み軋みに対して、国家自体を生き物に見立てると、本能的にリスクを回避しようとうごめいているという。ってことは、まあなるようにしかならないってことだ。
人を見るときの4つの要素は、すぐに役立ちそう。
移民・外交・国家、普段の仕事に置き換えて考えてみると展望が開ける。かもしれない一冊。
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語り下しということで読みやすくはあるが、内容は濃く、僕にとっては難しく感じた。
新・帝国主義という国際環境の中で日本が、日本人がどうすればいいのかを丁寧に説明してくれている。
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昨今の国際社会のルールが、かつての帝国主義に似たもの=「新・帝国主義」になっている、というのが主題。
資本主義の最高段階が帝国主義だが、それはいつか限界が来て革命が起こり、社会主義社会、共産主義社会に発展するというのがマルクスの主張であり、世界共通の歴史観だった。
しかしソ連崩壊によって社会主義は失敗したため、世界は「新・帝国主義」となった。
「新・帝国主義」は自国の利益を最大限主張するが、相手国が抵抗し、国際社会も反発すると国際協調に転じる、というのが基本ルール。
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MEMO:
p205
新書を読むような人は読書人階級に属している。ものごとの理屈とか意味を知りたいという欲望が強く、他の人とは少し違う。
読書人口はどの国でも総人口の5%程度。その人たちによって世の中は変わっていく。
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イランに関する分析や橋下徹評など普通の記事や読書では気付くことのない角度から考えを深めることができた。
ただ、中学生が読めるほど容易にはなっていないのではないかと思った。
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現代を新帝国主義の時代と位置付け、歴史的な経過と現在のトレンド、ルールを、氏らしい視点で分析する。平易でかつ薄い本ですが、ここ最近の氏の著作の中でも屈指の内容であります。あんまり共感はできないけどね。
国家機能の強化を力説する氏が、(柄谷行人と同じく)中間共同体の必要性を訴えてるのはちょと面白いと思った。
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・この筆者では久しぶりの評論モノ。今は、新帝国主義であると説く。この弱肉強食がさらに進むであろう世界での生き方をわかり易く語っている。
考え方の参考として読んでおくには良い一冊。
・マルクス主義者である、カール カウツキーの「超帝国主義論」は、21世紀の超帝国主義的な平和の維持を、読み解く上でカギになると見ている。
・中国はいまネーション・ビルディング(民族形成)をしている最中で、「漢人」ではなく、「中国人」という民族が生まれてきている。
・中国が航空母艦を持てば、沖縄は海兵隊を置くには近すぎて危険になるので、普天間基地が県外に移設される可能性が出てくる。
・民主主義の起源は、良き者を選ぶというより、悪しき者を排除すること。
・外交においては、詰めた方がいいことと曖昧にしておいたほうがいいことがある。
・国家本来は、絶対的に「力」によって成り立っている。では日本の力の要素は何なのかというと、日米安全保障条約です。
・タブーのない社会は悪い社会です。
・民主主義について考えた場合、国民一人ひとりが常に政治に感心を持っている体制は、いい体制ではない。生産活動が疎かになってしまうから。
・代議制民主主義は、本来独裁への道を開く可能性をはらんでいる。
日本が独裁の方向へ進むとしたら、それは民主主義の危機ではなくて、民主主義が純化されようとしている。
・橋下ブームは実は民主主義の危機ではなくて、自由主義の危機。
・テレビで流行るドラマなどは、一種の時代の転換を表している。だから、インテリジェンスの世界の人間は、視聴率の高いドラマを見るのです。
・結局、人間はナショナリズム、啓蒙の思想、人権の思想、そういうもので動くのだと思うのです。ただし、それらの思想はまやかしなのです。それを承知でいかにイメージ操作をしていくかというのが課題。
・言いかえれば、物語をつくること。ストーリーテリングの能力が大事。
・身近な同胞意識をもち、かつ民族だけに縛られない。二重性を認識しておくのが大事。
・日本で読書が習慣になったのは、昭和のはじめ。いずれにしても、現代でも日常的に読書する人間は特殊な階級に属しているという自己意識を持つ必要がある。
・読書階級はどの国でも総人口の5%前後。彼らは共通の言語を持っている。そしてその人たちによって、世の中は変わっていくと思うのです。
・他人の内在的論理を捉えるために、最低2つの古典を持て。
・ゲーテのファウストから、内在的論理とは次の4つから成り立っている。「言葉」「心」「力」「行為」。
・新帝国主義の時代を生きるうえで必要なのは、案外に小説的な教養なのです。
・人口学から、テロの原因を若年世代の人口過剰の問題に還元している。一家族に三人以上の男の子がいるとテロリズムもしくは犯罪がおこるという。
・戦前の日本も人口が過剰だったので、対外侵略をしたという仮説で、人口学者は一致している。
・インテリは国を超えて共通言語を持っている。
・日本人一人ひとりが言葉の使い方を変えて、国民を統合する物語を作り出すしかない。そして、目��見えないものに想いをはせる。
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下がる賃金、厳しい就活、ひろがる格差。その理由は世界が既に食うか食われるかの「新・帝国主義」の時代に入っていると論じる。全6章からなる生き抜くためのサバイバル国家論。
本書の「はじめ」に語り下しと書かれていたけれど、やはり著者の文章というか内容が難しい(^_^;)心に残ったものをランダムに記す。
3月11日の東日本大震災における天皇陛下のビデオメッセージの意味。マルクスの『資本論』を革命の書としてではなく経済書として読む。
「家政婦のミタ」という一時ブームとなったテレビドラマなどは、一種の時代の転換を表していて、家政婦も面白い仕事だぞ、と思ってほしいという日本の集合的無意識がある。だからインテリジェンスの世界の人間は、視聴率の高い連続ドラマを見る。と述べている。
若い人たちは最低ふたつの古典を持て、と挙げられている。
バルトの『ロマ書』、ブーバーの『我と汝』、『資本論』、『聖書』、ヘーゲルの『精神現象学』、カントの『純粋理性批判』、『太平記』、『源氏物語』、『法華経』・・・etc