紙の本
やはり川端氏の癖の強い人の作品は面白い
2020/10/25 21:54
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
川端氏の作品には「雪国」「伊豆の踊子」「山の音」に代表されるまさに日本文学と唸ってしまう、「ちゃんとした日本人」が登場する正統派の作品と、「眠れる美女」「片腕」そして、この「みずうみ」のような「性癖がきつい日本人」が登場する、川端氏の変態性が炸裂する作品の2通りの系統がある。私はどちらの作品も好きなのだが、どうしてもどちらかを選べと言われてしまうと、「性癖がきつい日本人」が登場する作品群の方に軍配を上げてしまう。といっても私は「腕フェチ」(片腕)でもなく、「眠っている女性」が好きなのでもなく(眠れる美女)、ましてや「足が醜い」(みずうみ)わけでもない、このような奇妙な人たちを主人公にできる作家は彼しかいないと思うからだ、あと女性では河野多恵子もそういう人だと思う
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意識の流れさながらに、捕らえどころの無い話。
2002/07/30 01:12
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投稿者:凛珠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「女性に対する暗い情念を意識の流れを描写することによって、永遠の憧憬に象徴化した」「西欧二十世紀の作家の新しい手法を試みた著者が、夢の領域に入り、微妙な連鎖作用を重ね合わせて、幽艶な非現実の世界を展開する」
……カバーの後ろの内容解説の捕らえどころの無さに惹かれて読んだのだが、内容も捕らえどころが無かった。作品を読んでみれば確かに内容解説は頷けるのだが、それと作品内容を完璧に理解したかどうかは別である。川端の作品は省略が多く、捕らえどころの無いものが多いが、意識的に行っているのだろう。私などはまだまだということか。
美しい女を見ると憑かれたように後をつける男・桃井銀平が主人公。教え子の後をつけ、見付かると水虫を言い訳にしたりする、薄気味悪いながらも滑稽で、なのに笑えないやはり薄気味悪い男だ。
川端の作品でもっと素直に気持ち良く読めて、女性の扱いにも救いのある作品は無いのだろうか……(汗)。
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川端作品は「雪国」「伊豆の踊り子」だけだと思ったら勿体無い。昔、「文学ト云フ事」という深夜番組でも言っていたが、この作品、今で言うストーカーが主人公。しかも高校教師。ドラマ化したらなかなか面白いかもしれないです。
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2006. 11. 15.
ヤバいよヤバいよ、とっても気持ちいいよ。何が?って考えると、どうやら構造みたいだよ。意味のわかる・わからないのバランスがツボです。全然ミニマルじゃないけど、ミニマルテクノ的な心地よさ。いやゴア系か。
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陰鬱、ぞっとする…。濃密な気持ち悪さ。美女のあとをつける銀平だけでなく、有田老人と宮子の関係も奇妙。みんな、どこかが少しずつずれているのかもしれん。もちろん、私達も。個人的には解説も気になりました。「大概の小説は現実に似ていることで迫真性を持っているが、この小説はその逆なのである。」
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川端ファンの中では異端視されてる小説だけれど、私は大好きだな。美しい女を見ると後をつけづにはいられない「醜い足」をもった男と、追われる女たちの物語。全体を通して妖しくて官能的なのに、ところどころ出てくる情景が幻想的で美しい。いわゆるギャップ萌え?
何かで見たこの小説のキャッチフレーズが「恋愛はこんなにも罪悪」だった気がするけど、なるほどうまいこと言ったもんだな、と。
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なんかなぁ。
銀平とか全く魅力的に感じないんだけど何ちゃっかり生徒とつきあってんの?
なんか男の小説の悪いところが出すぎてるよ。
最後はざまって感じだったけど。
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主人公の女性に対する妄執とコンプレックスのあるストーカー
現在のシーン中に回想を挿入して、コンプレックスの感じが一層強まって面白いです。
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雪国もそうでしたが、直接的な描写が無いのにめっちゃ艶めかしいです。
登場人物が複雑に絡み合っていて、主人公、夢と幻覚行ったり来たり。
すごく良かったです。
ろくでもない人物ばっかりですが、そこも非常に良い。
壊れているのが正解なのです。
09.09.07
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美しい女を見かけると、追いかけずにはいられないと言う厄介な性癖を持つ男の話。
主人公の男には、身体的なコンプレックスがあり、それが彼の心の中で大きなしこりとなっているのだが、そのしこりがあまりに巨大で暗過ぎた。
その暗さが、タイトルとの繋がりにもなるのだろうが、その暗さをひたすら引きずったままにクライマックスを迎える。
そして、内容でところどころ噛み合わない部分があるのは、川端の晩年の作品だからなのか…。
とりあえず、川端の『古都』の様な作風が好きな私には、あまりなじめない作品だった。
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今まで抱いていた川端康成のイメージとはちょっと違った。
銀平は教え子と交際したり、見知らぬ女性を付け回したりするのだけど、そこに罪の意識は存在していない。
ただ銀平に起きる衝動を捉え続けている。
銀平も有田老人も歳の離れた美少女に恋というより母性、拠り所を求めている気がする。
とっ散らかったイメージもあるけど、銀平をめぐる少女たちの群像劇のようでもあり、銀平の行く末から目が離せなかった。
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川端自身はこの小説をとても気に入っていると読んだことがあるが、川端に師事していた三島はその逆で、「破綻して、どろどろしている」と嫌悪している。
「みずうみ」はキーワードではあるが、そのタイトルから何か美しい物語を想像してはいけない。
美少女の後を思わずつけていってしまうという、今でいうところのストーカーの話である。
でも、主人公の銀平(学校の教師)につけられた女生徒・久子が「また私の後をつけて下さい」と頼んだりするあたりのかなり倒錯したエロスが、不思議な光を放っている小説だ。
いろんな過去の時間と現在が混然一体となって物語が続いていくので、読者は不意を突かれながら進んでいかなければならない。
話自体は面白いし、時間のずれがきれいに流れていくところの描き方も素晴らしいと思うが、明らかな未完で、物語があまりにも中途半端で終わっているので、好きになれない。
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川端康成の著作の中では一番好き。現実と回想の流れがスムーズで、曖昧になってぼーっとする。短いのに読み応えある。
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焦燥感から殴り割ったガラスがはらはらと乱反射しながら移る風景が自然と故郷の湖へと変わっていく
時代背景の生きた、退廃的で郷愁を誘う世界観、
そして美しいものを追わずにはいられない滑稽な主人公。
三島はこれを嫌いと言うが、金閣寺と全く同じ話じゃないか。
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「山の音」以降では、少し方向転換した様な、古典的な美しさより、どちらかと言えば幻想的な、透明な美しさが目立ったような作品だと思いました。
美しい女を見かけると、後を付けてしまう主人公の銀平、その心理描写を様々な女の視点を用いて表現し、川端作品の根底にある本質を元に書けるのは流石だと思いました。
現代的でもあるので、非常に読みやすいです。
三島作品は大好きですが、三島が批判しているこの作品は、自分は気に入っています。