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地球の営みと人間の暮らしがどのような原理で結びついているのかを、エネルギーを軸に、さまざまな時代の出来事にスポットを当てながら考えてみる、という本である。
とかく専門的になりがちな理数系の話も多いのだが、キャプション入りの写真や図説などが手間を惜しまず適所に挿入されており、ことのほかわかりやすく、かつ面白い。
石油ストーブを部屋の中で使うことを化学式で表わしたりするのも、言葉だけの説明よりかえって理解しやすいから不思議だ。また、「人生とは連綿と続く一連の化学反応に他ならない」といった見方も、読んでいくうちになるほどと納得してしまう。ちょっと人に話したくなるような雑学ネタもふんだんにちりばめられているので、読んでいても飽きのこないお薦めの1冊といえる。
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石油・石炭・天然ガス・原子力と、今では多くのエネルギー源を使っている人間ですが、これらはすべて地球が誕生してから長い年月を経て生成されたことをどれほど意識しているでしょうか。少なくとも日本では昨年(2011)の震災以来、原子力以外の発電方法が見直されてきている中で、石油・石炭・天然ガスの重要性が増してくることでしょう。
この本では、化石燃料がどのように形成されたか、及び日本近海に多くあると言われている「メタンハイドレード」や、原子力エネルギー等が詳しく解説されています。類書を読んできたつもりですが、この本が一番わかりやすかったです。
また、この本で「赤潮」の発生の仕組み、なぜ赤潮が問題なのか(p139)がわかりました。更には、窒素固定技術や黒船来航の原因について歴史の事件も踏まえて解説してあり歴史好きの私には興味深い内容でした。
以下は気になったポイントです。
・現在一人の日本人が1日に消費する総エネルギー量は30万キロジュール、毎日口にする食物はおよそ1万キロジュール(2400Kcal)なので、その30倍以上のエネルギーを使って生活している(p13)
・植物が光合成によって固定化する太陽エネルギーは、0.1%にすぎないが 1000億キロワット(1000億キロジュール毎秒)という莫大な量である(p20)
・人口が増えることになった転機は、1万年程前に人類が発明した「農耕」にある、人類が太地の一部を切り分けて自分たちのみの食糧を育てることを発明した(p27)
・植物の化学組成を多い順にあげると、炭素・水素・酸素・窒素・硫黄・リンとなる、4番目以降の元素は、土に含まれていたものを吸収している(p29)
・窒素こそが地球の定員を決めている元素である、以前はグアノ(鳥の糞や死骸が変質したもの)と呼ばれる肥料を欧州はペルーから輸入していた(p31、32)
・19世紀後半になると、グアノは肥料ではなく火薬(硝酸カリウム、ニトログリセリン)を合成する原料として消費されるようになった、グアノがなくなると、チリ硝石(硝酸ナトリウム)が19世紀前半に見つけられた(p35)
・ハーバーは高温高圧でオスミウムという触媒とともに反応させるとアンモニアが固定化されることを確立し、それをBASFへ売り込んだ、それを若いエンジニアのボッシュが3年後に工業化させた(p42)
・1913年に窒素肥料である硫安(硫酸アンモニウム)をビジネス化したが、第一次世界大戦勃発により、火薬原料の硝酸の合成プラントに変更した(p43)
・ドイツは講和会議にて、BASF社の工場閉鎖を免れる代わりに、アンモニア工業生産技術は開示することになった(p45)
・電気エネルギーに変身する第一次エネルギーは全体の40%、原子力は100%変更されるが、天然ガスは60%、石油は10%程度(p57)
・最初のオイルショックがくるまで、1リットルの石油が1セント、当時のコカコーラが1ドル(p67)
・シュメール人は多くの立像を残したが、接着剤としてアスファルトを用いた、水と混じらない性質や熱すると溶ける性質を利��(p70)
・コークスとは石炭を蒸し焼きにしたもので、硫黄などの臭いや煙の元になる成分が少ないうえ、燃焼温度が高いという長所がある、中華料理はコークスの火力により発達した(p73)
・イギリスでコークスが独自に発明されるのは17世紀、13世紀後半からは石炭の燃焼によって排出される煤煙が人類による初めての大気汚染をもたらした(p73)
・ペリーは日本人を威嚇するために、黒煙を大量に発生する質の低い石炭を燃やした(p84)
・三池炭田を購入したのは、三井財閥の一角の三井物産、落札価格は455万円、三菱に払い下げられた長崎造船所(9万円)比較でも高値(p92)
・ドイツ各地に建設された合成燃料の工場はピーク時(1944初頭)には650万トン(年間)を生産し、戦争で使用する航空燃料の9割以上を賄っていたが、その後に空爆を受けて壊滅的となった(p104)
・陸軍は府中市、海軍は大船・四日市・徳山に人造石油工場を作ったが殆どが破壊された(p107)
・新潟から秋田に点在する油田から噴出するガスのヘリウム同位体比の測定結果は、明らかに地球深部から漏れ出てくるガスを含んでいることを示した(p126)
・19世紀中ごろにスコットランドで開発された方法である黒色頁岩(海底にたまったヘドロ)を乾留してできた油(イギリス:パラフィン、アメリカ:ケロシン)は高価だった鯨油の代替品としてランプ用に使われた(p138)
・栄養分が流れ込んだ海はプランクトンが異常に発生する、その死骸が腐るとバクテリアによって分解されるので海水中の酸素が消費されるのが問題となる、他の生き物が生きていけなくなる(p139)
・赤潮により海が広範囲にわたって酸欠状態になりヘドロが溜まった、その一部が石油へ変質した(p144)
・和親条約により開放された函館では、釧路の西隣の白糠で採炭されたものが使われ、後に積丹半島の茅沼で採掘されたものが使われた(p152)
・三池炭田は当初はおもに囚人や外国人の強制労働で支えられて安価で石炭が供給された(p157)
・有機物が高温にさらされると、酸素ガスが十分にあれば二酸化炭素と水になるが、そうでない場合はメタンとなる(p167)
・日本近海では、静岡県から高知県沖に広がる「南海トラフ」において、ハイドレードが大量に存在していることを確認、新潟沖では海底にまで顔をだしてそこから溶け出したメタン泡が海底から立ちあがている(p175)
・当初天然ガスは水分を取り除かないままパイプラインで送られていたので、圧力の高いパイプライン内でハイドレートが形成され、目詰まりを起こして爆発につながった(p180)
・東京都、埼玉県南部、千葉県ほぼ全域に、大量の天然ガスが存在している、埋蔵量は日本の天然ガス消費量の5年分に相当、地盤沈下のためガス採掘は禁じられている(p183)
・毎年0.4%分の炭素が減っていく(炭素サイクル参照)が、そのを補うのが火山活動(p199)
・ウラン238とウラン235の平均寿命は、それぞれ65億年と10億年(半減期:45,7億年)もある(p205)
・陽子を繋ぎ止めていた莫大なエネルギーを放出する場合、瞬時に運動エネルギーに変えるのが原子爆弾、ゆっくりと電気エネルギーに変えるのが原子力発電(p209)
・核分裂によって生じる中性子の一部を核分裂しない原子に吸収させ、生成される中性子数を一定に保つことを「臨界」という(p210)
・広島に投下された原爆は50キロのウラン235が用いられて、1キロが爆発、その時に800億キロジュール(=石油換算で1000トン)が放出された(p211)
・1963年に核実験の舞台が地下に移るまでに原水爆あわせて2000発が世界中で爆破された(p212)
2012年6月17日作成
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素晴らしかった.
今改めて考えないといけないエネルギーの問題の根本について地球科学の立場から書いた本.
と,書くと堅苦しい感じだが,時代や歴史との交錯がとても面白く,読みやすい.
是非多くの人に読んでほしい本.
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むずかしいエネルギーの話を、非常にわかりやすく解説してくれる本である。化学式やイラストを用いた説明、資源活用の歴史など、内容も豊富で最後まで飽きさせない。ジェームズ・ラブロック氏の「ガイア理論」に通じる部分も多いと感じた。
本作を読んで改めて感じたが、人類が大きなエネルギーを手に入れ、それらを散々使いまくった代償は決して小さくないのだ。美味しいものを食べ過ぎて肥満になったり、テレビやスマホの見すぎで目が悪くなるように、楽しんだ後は必ずツケを払わされる事になるのだ。子孫たちに美しい地球を残すため、今すぐ大きく舵を切るべきである。
ちなみに本作によると、化学反応とは高温と圧力によって起きる現象らしい。そういえば最近枕が少し臭うのだが、きっと化学反応が起きているに違いない・・・・・・加齢じゃないの!化学なの!
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最初の章は、具体的な数字で地球規模でエネルギーの終始を説明してるので、数字が出てくる理科が苦手な人はページをめくる手が止まってしまうかもしれないけど、その後の章では石油・石炭・天然ガス・原子力などについて、エネルギーを生み出す機構や人類の歴史との絡みが分かりやすく書かれてます。
人類が石炭や石油を大量に使い出したのはここ100~200年くらいだけど、なにがしかの方法で利用したのはかなり古く、先史時代にまでさかのぼるそうで。 このあたりの話は全く知らなかったので興味深く読めました。
東日本大震災と福島原発事故で国のエネルギー政策が見直しを余儀なくされている昨今、この本で今一度エネルギーについての理解を深めておくのは良いことかと。
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エネルギーに焦点を絞って人類の歴史を展開した本。
石油や石炭と人類発展の関係を理系的観点から紐解いている。
太陽光、地震、火山など様々なエネルギーが数値化されており、新しい視点が得られた。
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昨年の原発事故以来、原発の危険性が叫ばれる一方、代替エネルギーの供給に関するバランスのとれた議論は途絶えて久しい。そんな時代だからこそ、エネルギーが地球をどのように循環しているかを知ることの意味は大きいだろう。
例えば、窒素。肥料として非常に重要なこの物質は、大気中に豊富に含まれるにも関わらず、化学的に安定であるが故に、自然界では容易には土壌に固定されない。工業化以前の社会では、事実上、この窒素固定のプロセスが、地球の”定員”を制限していた。20世紀の人口爆発は、人工的な窒素固定法の発見に端を発する。裏を返せば、エネルギーを人為的に投入しない限り、地球は今日の人口を支えることができないのである。
では、そのエネルギーは何に由来するのだろうか。原子力と地熱を除く多くのエネルギーの、もともとの由来をたどっていくと、たいていは太陽エネルギーにたどり着く。一見太陽とは関係のなさそうな化石エネルギーだって、もとはと言えば植物が光合成によって固定したエネルギーなのだ。
エネルギーの循環は、様々な科学の学際的な領域である。それだけに、学校の勉強で学ぶ機会はあまりないが、現代社会を生きる上で、必要なリテラシーであることは間違いない。理系にも文系にもおすすめしたい一冊です。
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地球上の生物の生息に不可欠なエネルギーの本質とは何なのか、ということが本書のテーマである。
素人にも判りやすい表現になっており、論理的で説得力があった。
人類の「都市化」という現象がエネルギー連鎖破壊の大きな要因になっていることは興味深い。この問題への解決が今日のエネルギー問題の本質ではないかと感じた。
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エネルギー問題もさることながら人工窒素の問題もあることを知った。
あと日本人はアメリカ人に比べておならのメタンの含有量が少ないのでおならが臭いことも知った(゚д゚( 人 ) =3 ブッ
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エネルギー問題に関連する興味ある話が満載.赤潮のヘドロがシアノバクテリアの作用で石油に変わったこと,17億年前に天然の原子炉が存在し活動していたこと,またそれを予測したのが日本の科学者だったこと など.理系の内容を分かりやく記述しているのは素晴らしい.
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まず前提となる地球のエネルギー総量と農耕に頼ると地球の定員は窒素の量であることが書かれいます。
ハーバー・ボッシュ法の窒素肥料がなければ現在の70億人の人口はなかった。
石油や石炭などがどのように発見され使われてきたかが書いてあります。
脱原発は燃料を海外から輸入し続けて公害問題を受け入れて火力発電に頼るか横浜駅と浅草寺を一辺とする正方形の面積のパネルを設置する太陽光発電をするぐらいでないと現在の生活は維持できない。
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地球が誕生してから、46億年程度。地球が誕生してから現在までを1日とすると、人間が誕生してからの時間は数秒のオーダーになります。その間、文明という盾をもとに地球に多くの変化をもたらし、環境の急激な変化を起こしています。それが数秒の間に。
ただ、地球温暖化も生物の絶滅も今まで地球は経験済み。それを考えると、ちっぽけな自分たちなのですが、ちっぽけなりとも一つの命、それをつなげて何かが達成されるのだろうという壮大感も感じてしまいます。
いわゆる化石燃料系の生誕と、人類の浪費による環境への影響を知ることができるオススメの一冊。
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エネルギーの量や変遷について学べました。化学的なこともわかりやすく書いてあってよかったです。
もう少し提言的なことを書かれていると面白いなあと思いました。
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エネルギーを軸に、地球史・人類史を説明した本です。
著者の専門からはちょっとはずれた内容のようですが、すさまじいほどの博識ぶりを遺憾なく発揮していると思います。
エネルギーという一貫したテーマで、ここまで大きなことから小さなことまで広く語れる人は、なかなかいないんじゃないでしょうか。
とくに、石油・石炭などの化石燃料については、いい勉強になりました。
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書名から想像してたのとはちょっと違って,人類とエネルギーと地球の話。雑誌連載の書籍化で,一章ごとに区切りがつくので読みやすい。内容もしっかりしてる。
しかし70億人は殖えすぎた感ある。一億倍も周期の異なる炭素の生物サイクルと地球サイクル。この間をバイパスすることで人類はここまで急速に肥大してしまった。食糧生産のための窒素固定に,原発150基分のエネルギーを費やすようなやり方が,いつまで続くんだろうか。ちょっと先行きが不安になってしまう。