赤穂浪士の討ち入りにあの主人公が
2019/12/14 08:27
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
葉室麟さんが『蜩ノ記』で直木賞を受賞したのは、2012年の第146回だった。
それ以前、葉室さんが直木賞の候補になったのは『いのちなりけり』(2009年・140回)『秋月記』(2009年・141回)『花や散るらん』(2010年・142回)『恋しぐれ』(2011年・145回)と、続けざまに候補にあがるも受賞に至っていない。
それを辛い時期と見なすこともできるだろうが、その一方でいかに葉室さんの筆が充実していたかの証のような気がする。
つまり、葉室さんはこの時期絶好調だったに違いない。
ただこの作品については選考委員の評価は厳しい。
唯一評価が高いのは宮部みゆき氏だが、私はむしろ「咲弥と蔵人と清厳の、友情、愛情関係を描くのに、なぜ忠臣蔵が必要になってくるのか、最後までわからなかった。作品が、二つに割れた印象さえある。」と記した北方謙三氏の評価に与する。
この作品は『いのちなりけり』に続く雨宮蔵人もの三部作の二作めで(三作めは『影ぞ恋しき』)、その舞台は赤穂浪士の討ち入りがあった元禄時代となっている。
北方氏の評価は実に素直で、あまりにも物語設定が出来過ぎていて、蔵人と咲弥の子ども香也があの吉良上野介の隠された孫娘となると、さすがに物語に都合がよすぎる感はある。
それでも、これだけの長編を読ませる力量はさすがだ。
宮部みゆき氏は「史実を能動的に自在に操ることで生まれる〈作り話の妙味〉」を高く評価しているが、それが『蜩ノ記』で開花するまで、まだもう少し時間がある。
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投稿者:雨読 - この投稿者のレビュー一覧を見る
忠臣蔵を題材にして、フィクションで雨宮蔵人と妻の咲弥とその周りに架空の人物や出来事を登場させている。
大石内蔵助と雨宮蔵人はどこか似たところがあるが、義の為か、最愛の者を守る為かの違いが見えてきます。
現代社会では、死より大切な義を貫く、忠臣蔵をどの様に捉えるのか、
人それぞれだとは思いますが日本の武士道の鏡だと思いました。
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全一巻。
「いのちなりけり」の続編。
そして忠臣蔵。
http://booklog.jp/users/bullman/archives/1/4167781026
「いのちなりけり」の続編が、
何故に忠臣蔵になるんじゃろって前作読み返したら、
忠臣蔵の直前の話だった。
そういや。
忠臣蔵の解釈としては新しく、
個人的には読んだことない説。
桂昌院の昇位問題が絡むって説は何作か読んだけど、
今作はそこから一歩進んで、
浅野内匠頭が切りかかった理由に落ちてる。
結構おおって感じ。
大奥の勢力争いが絡んで来るのも説得力ある。
が。
堀部安兵衛と内匠頭の関係とか、
咲弥の大奥内での関係とか、
身分的なとこが結構気になった。
そんな簡単に口聞けるの?この時代って。
そういうの気になり出すと、
斬新な説が急に無理矢理にみえてくる。
今作はそういった無理矢理がちょいちょい目につく。
前作でキーとなっていた「古今伝授」を
前作で潰そうとしていたはずの柳沢吉保が
何故かしれっと授かろうとしてたり、
咲弥がもう四十くらいの年齢のはずなのに
将軍に夜伽命じられたり
(当時の感覚だと婆さんのはずでは?)、
前作の特徴である和歌と余談を積み重ねるスタイルが
変に強調されていたり。
なんにせよ、
前作の続編にしないで欲しかった。
忠臣蔵として別の作品に。
主人公達の物語となじんでなく、浅く、切れが悪い
中途半端な物語になっちゃった印象。
やっぱり主人公は
前作のクライマックスで死んでおくべきだったと思う。
表紙は好き。
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京の郊外に居を構え静かに暮らしていた雨宮蔵人と咲弥だったが、将軍綱吉の生母桂昌院の叙任のため、上京してきた吉良上野介と関わり、幕府と朝廷の暗闘に巻き込まれてしまう。そして二人は良き相棒である片腕の僧、清厳とともに江戸におもむき、赤穂・浅野家の吉良邸討ち入りを目の当たりにする事となるのだが。
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「いのちなりけり」の続編。前作で「天地に仕え、命に仕える」侍が、自分の心の歌を探し求め「春ごとに花のさかりはありなめどあひ見むことはいのちなりけり」と16年かかって本当の夫婦になった蔵人と咲弥。
静かな暮らしが、また幕府と朝廷のせめぎあいに巻き込まれていく。とても真っ直ぐで美しい夫婦。「朝廷と幕府」「雅と武」を対比させながら、赤穂浪士の討ち入りに新たな見方を綴る。
今回は「いかにせん都の春も惜しけれど馴れし東の花や散るらん」という歌を二つの意味に使う。咲弥が京から大奥へ来た女たちの朝廷を思う気持ちは分かるけれど、危ういことをすれば東国になじんだ女たちが散ることになると大奥に釘を刺す。後では夫・蔵人に京が懐かしいが江戸で散ることになるかもしれないとこの歌で助けを求める。
ただ、葉室麟の小説は史実にこだわると今一つ伸びやかさや滔々とした世界感が失われるような気がする。
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『いのちなりけり』の続編~鞍馬で暮らす蔵人に咲弥を通じて吉良上野介の家臣・神尾与衛門を斬るように中院通茂から要請があったが,咲弥は断る。義が存在していないからだと云う。吉良は桂昌院に従一位の官位を贈るように,公家に金を貸し,取り立てているのだ。禁裏は八百屋の娘に高位を贈る気はないし,将軍御台所である信子は高司家の娘で大奥取締の右右衛門佐が阻止に乗り出す。蔵人が動き出さず,京を出る神尾を討とうとした浪人も返り討ちに遭う。綱吉の側近・柳沢保明が黒幕で,京の正親町は異母妹の町子を柳沢の側女として送り出している。町子は好きな羽倉斎と分かれさせられて兄に反発を覚え,柳沢の計略も阻もうと動く。尾形光琳が銀座を運営する中村内蔵助を銀主に借金を返そうと動き出すが,正月に吉良が上洛して釘を刺されてしまった。大奥は高田馬場の仇討ちで名高い堀部安兵衛に神尾を討ち果たせようとして,勅使饗応役に浅野内匠頭を就けるが,堀部と今一人にも断られてしまう。山鹿素行の尊皇の意を継ぐ浅野は,吉良を討とうと松の廊下で小さ刀で斬りつけるが,敢えなく切腹を命じられる。一年後,桂昌院に従一位が贈られるが,額に傷を負った吉良は隠居させられ,手柄は柳沢が独り占めにする。赤穂浪士に吉良を討たせようと云う大奥の暴挙を食い止めるために潜入した咲弥が綱吉の目に留まり,柳沢邸に提げ下された。歌に託して蔵人に救援を求める咲弥を羨ましく感じた町子は,夫が手記や手紙を目の前で焼いたことに腹を立て,神田橋の屋敷に火を放つ。神尾から屋敷の図面を渡された蔵人は火事に乗じて咲弥を救出したが,討ち入りが近づいた堀部に技を伝授する留守に香也を攫われてしまう。香也は吉良が庄に隠しておいたかほるという側女の娘の娘,すなわち孫であったのだ。かほるという側女は米沢上杉家から来た吉良の正室が神尾に命じて殺害したのであった。吉良邸で茶会が催された夜,討ち入り前に香也を救出に蔵人は吉良邸に乗り込むが~鞍馬山で柔術の道場を開いている雨宮蔵人と赤穂の討ち入り。蔵人が出奔した肥前小城藩の内紛がちょっと知りたくなったけど,人物相関図が複雑で面倒くさい小説。悩むなあ。善玉・悪玉をはっきりさせてくれると有り難いのだが,だれもが事情を抱えているので白黒つけがたい。単行本は2009年に刊行されている
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赤穂浪士の討ち入りにこんな背景もあったかもしれない。
将軍の、取り巻きたちの、大奥の、人を操ろうとするその陰謀に嫌気がさす。咲弥と香也と蔵人と幸せに暮らしていけるといいなぁ
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水戸光圀の隠居と赤穂浪士事件の裏側に潜む一つの思惑。朝廷、幕府の暗闘に絡む大奥の権力闘争。「いのちなりけり」よりミステリー要素が強めの作品。
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前作「いのちなりけり」を読んで、ふたたびこのふたりに会いたくなって買った本。
いろいろあってやっと本当の夫婦になれた雨宮蔵人と咲弥。ふたりのあいだに娘もいるようで、無骨な蔵人の子煩悩振りも微笑ましい。と思っていたところが、事件に巻き込まれ、この娘に物語の鍵があり……。
このシリーズの好きなところは、愛情を軸に物語が動いていくところだ。それは男の女への情であり、友情であり、主君への忠誠である。
雨宮蔵人の咲弥への溺愛っぷり。そして右京(清巌)がいまだ咲弥への想いを秘めながら身を挺して守る姿。悪役であったはずの神尾与右衛門や吉良上野介でさえ、その最後の散りざまに泣けてくる。自らの信念を貫けない立場の女性たちも、その矜持を失わず懸命に生きる。それぞれの生き方、散りかたに胸を打たれる。
定説である忠臣蔵に、雨宮蔵人や咲弥、娘の香也、そして尾形光琳、荷田春満、柳沢吉保の側室町子などがを絡めた手法が鮮やか。単なる仇討ちとはせず、命の尊さを説く。「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」といった時代小説の常識とは、まったく違った切り口だからこそ、現代人の私たちが心情を沿わせることができる。
それでいてエンターテインメント性もあり、柳沢邸の家事、咲弥の奪還劇や討ち入り場面など、スピード感のある読み応え。
確かに出てくる人数が多く、初め把握は難しいが、読み終われば「いのちなりけり」と同等の満足感がある。とてもいい読後感だった。
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「いのちなりけり」の続編。前作で水戸黄門と揉めた主人公が、今度は吉良上野介とやりあう。なんだかもう有名時代劇の舞台に次々とチャチャ入れてるような感じである。そのうち大岡越前とか遠山の金さんとか井伊直助とか仕事人とか八重の桜とかあらゆるもんに絡んできそうな勢いである…ないだろうけど。
実は俺、所謂世間に知られている筋書きの忠臣蔵って好きじゃない。時代がそうだろうし設定がそうだろうからしゃーないのだけど、吉良も浅野も大石も「陰険な事で争って爽快だ痛快だお涙ちょうだいだってのはないやろ」って醒めてみてしまうのである。
忠臣蔵を題材に取った名作時代小説があまたあるにも関わらずどうにも苦手意識が先に立ち食わず嫌いしてしまっているのもそのせいで、今回は葉室作品だからと手に取った珍しいケース
知らない作家さんだったら、良くできた小説だなと讃賞するんだろうけど、葉室さんだと分かって読むとちょっとアラも目立ってしまう。日本史に疎いと人物関係が複雑すぎてその説明がダルかったり、剣劇シーンが意外とあっさりでモノ足りなかったり、赤穂浪士たちの影の薄さが気になったり…
それでも思ったのは、人間やっぱり単純に生きるのがエエわ。しがらみにまとわれたらまとわれるほど、本人がなんぼ頑張って工夫して上手い事やったつもりでも、傍から見ると実にくだらない生き方になるって事。
吉良が最後に笑顔を見せるのだけど、その笑顔がそれを表してると思う。
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『虚構と真実もまた不二である』と解説にある通り、史実とオリジナルを上手く織り交ぜ、忠臣蔵好きでもそうでなくても楽しめる。吉良と柳沢の野心や大奥の女達の妬み、蔵人達の情愛、武士の義など様々な角度から人間の心を描いた作品。一番好きな忠臣蔵、『元禄繚乱』と通ずるところがある。
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「いのちなりけり」の主人公、蔵人と咲哉が、忠臣蔵に関わっていく物語。一般の忠臣蔵とは一味違った物語で面白かった。
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多くのキャストが多彩な色を放ちながら、奥深き"忠臣蔵"ストーリーを見事なラストへ向かわせる。主人公夫婦もさながら、展開を引き締める香也ちゃんが天晴れ!。解説も素晴らしい♪。
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期待してたのに。。。
結局、引き込まれることなく読了しました。
まず第一に私はどうもこの人の文章は苦手なようです。
そしてストーリーも受け入れ難く。
今回は赤穂浪士事件を舞台にした『いのちなりけり』の続編です。
有名な浅野長矩の殿中刃傷事件の背景を新解釈で描いて行きます。しかし、こうした新解釈は、非常に強い説得力を持つ(なるほどと思わせる)か、説得する事さえ不要なほど(嘘でもいいやと思わせるほど)物語を面白くするものである必要があると思うのです。しかし、この作品の新解釈はどちらでも無い。ですから、頭の隅で「違うだろう」と思いながら読んでしまうのです。
歴史の新解釈、夫婦の情愛、男の生き様、友情、なんか色々なものが入っているのですが、どれも中途半端、そんな気がします。多分、主人公の雨宮像に納得できないせいでしょう。
かなり辛口の評価になりましたが、これも葉室さんへの期待が高いせいなのです。
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8月-4。3.5点。
忠臣蔵のストーリーに絡め、ある武士の家族を
描いた物語。
ラストは感涙。