本気で言いたいことがある(新潮新書)
著者 さだまさし (著)
僕はこの国を心から愛している。でも、自分が好きな「日本」という国は、もしかしたら存在しない幻の国なのかもしれない――。家族、子育て、礼儀作法、コミュニケーション、戦争、平...
本気で言いたいことがある(新潮新書)
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商品説明
僕はこの国を心から愛している。でも、自分が好きな「日本」という国は、もしかしたら存在しない幻の国なのかもしれない――。家族、子育て、礼儀作法、コミュニケーション、戦争、平和、義、人情……。三十年以上にわたり、全国を隈無く旅して来た著者だからこそ見える、どこかおかしいこの国の今。時に辛辣に、時にユーモアを交えつつ、しかしあくまで真摯に語り尽くした、日本と日本人への処方箋。
著者紹介
さだまさし (著)
- 略歴
- 1952年長崎市生まれ。歌手。73年フォークデュオ・グレープとしてデビュー。76年にソロとなり、数々のヒット曲を生み出す。近年は小説家としても活躍中。
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さだまさし版『バカの壁』
2006/08/20 22:00
11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある回転寿司店の待合室でのこと、幼い孫を含めた三代が座席が空くのを待っていたが、初老のばあさんがひょいと小さな孫を抱きかかえたかと思うと土足のままベンチに立たせてずり落ちたズボンを引き上げたのである。
その側ではその小さな子の母親と思しき女性も何も気にとめずにおしゃべりしながら、服の乱れを手伝っていた。
親も親なら子も子、と言われるが、これではこの幼い子供はロクでもない餓鬼に育つぞと確信した。
公共におけるマナーを教える立場の年長者が平気でマナー違反を侵して悪気のない顔をしている。金さえ払えば客として何をしても許されるという甘えがそこには見えるが、金を払う側、場を提供する側という需要と供給の原理原則が分からないじじい、ばばあが多すぎる。
平気で歩道をママチャリが走り、歩道を塞ぐなと歩行者にせわしげにベルを鳴らす。
青信号で横断歩道を歩行中の列に突っ込んでくる車の運転席を見ると、助手席に子供を乗せた若い母親が多い。そういう母親に限って、締め切った車内で煙草を吸っているのである。自身の健康管理と美容には人一倍神経質になるのに、守らなければならない子供には配慮がないというか無頓着というか鈍感というか。
著者のさだ まさし氏は今から30年ほど前に歌手デビューをして一躍有名になった人であるが、創る作品の数々は進歩的女性から、市民団体と称する人々からと様々な批判を受けてきた。
その氏が切々と語る内容は多岐にわたっているが、今、社会にかかわって生きている私たちが直面している問題でもある。誰かが口を開くと逃げ場もないほどに叩きつけるのが現代日本の風潮であるが、批判の矢面に立たされるとたちまちに開き直るのが多いのも確かである。
それは犯罪の場面でも、企業不祥事においてもそうである。事なかれ主義というか、なんというか。
そして、追い詰める側もまるで生まれてこの方、聖人君子として生誕したかの如く、他人を批判する。
さだ まさし氏も言及されているが、日本国憲法における自衛隊の対応ひとつをみてもそうである。解釈という言葉で憲法という建前までをも侵してしまうのである。
すでに、海外の大使館に駐在する自衛官の名刺にはアーミー、ネイビー、エアフォースと刷り込んである。これは、海外の諸国に対して軍隊であることを示しているのだが、その実、国内ではセルフ・ディフェンス自衛隊である。こんな本音と建前の国を信用しろと叫んでもどこの国も信用はしないだろう。
そして、現代日本においてもっとも嘆かわしく思うのは、他人の失敗を許さないことである。
それも悪意ではない失敗を許さないのである。
決まりは決まりと、何が何でもマニュアルに添った対応を求めたがるのである。
反面、そういう決まりを求める人間に限って応用力がない、機転が効かない、先が読めずにおたおたするのである。
国政における真の野党が無くなり、与党に対して警告を発する役割が無くなった今、庶民の生活から国政に至るまでうるさいと言われても、意見を述べる人がいなければならない、嫌われてもきつい事を言わなければとさだ まさし氏は意見を述べている。
毎日毎日、殺人事件が報道されない日はなく、これを日常のように思える感覚になったならば、本当にこの日本は終わってしまう。批判されようが、何をしようが、腹をくくったさだ まさし氏の言い分は傾聴に値すると思います。