TPP亡国論
著者 中野剛志 (著)
TPP(環太平洋経済連携協定)参加の方針を突如打ち出し、「平成の開国を!」と喧伝した民主党政権。そして賛成一色に染まったマス・メディア。しかし、TPPの実態は日本の市場を...
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商品説明
TPP(環太平洋経済連携協定)参加の方針を突如打ち出し、「平成の開国を!」と喧伝した民主党政権。そして賛成一色に染まったマス・メディア。しかし、TPPの実態は日本の市場を米国に差し出すだけのもの。自由貿易で輸出が増えるどころか、デフレの深刻化を招き、雇用の悪化など日本経済の根幹を揺るがしかねない危険性のほうが大きいのだ。いち早くTPP反対論を展開してきた経済思想家がロジカルに国益を考え、真に戦略的な経済外交を提唱する。【目次】はじめに
著者紹介
中野剛志 (著)
- 略歴
- 1971年神奈川県生まれ。エディンバラ大学より博士号取得(社会科学)。京都大学大学院工学研究科助教。専門は経済ナショナリズム。著書に「国力論」など。
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流されずに、しっかり本質を視る眼を
2011/09/22 04:13
26人中、20人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
トロイの木馬。
著者はTPPのことをこう呼ぶ。
『オバマ大統領が「環太平洋で連携しましょうよ、カモーン」と言って、差し出してきたTPPという贈り物は、実は、日本の農業市場の防壁を中から打ち破るための「トロイの木馬」なのです。』
保護主義貿易などというと非常に悪いものという印象が植え付けられている。これを必要と考える者にとってでさえも、せいぜい必要悪とくらいにしかとらえられていないのではないか。
しかし、自国の産業を守る、もしくは自国の労働者を守る。さらに言えば、国家が自国の国民の生活を守る。これを否定してしまえば、では、国家なんてなんのためにある?ってことになる。国家が一部の層にだけ手厚い保護をし、多くの国民を路頭に迷わせた、そんな時代の国家が国家の正しいあり方だったなんて、誰も思わないはず。
国をあげて、世界の中でも貿易戦略を構想し、必要に応じて自国産業を保護する政策をとることは正しい。事実、多くの国でそうしている。
著者は言う。
『戦略的に考えようとする思考回路に、サーキット・ブレーカーが付いていて、あるコードが出ると、それに反応してブレーカーが自動的に落ちて、思考回路を遮断してしまう』
著者は、これらのコードを例示する。
「開国/鎖国」「自由貿易」「農業保護」「日本は遅れている/乗り遅れるな」「内向き」
多くの方に身に覚えのある感覚であろう。開国か鎖国かと問われれば、今の世界情勢の中で鎖国なんてありえない。遅れていると言われていれば、何とか変えていかねばと思うし、乗り遅れるなと言われれば、いまあわてて動こうとする。そうなると、自由貿易の害悪などというところにまで頭が回らない。一斉にTPP擁護に向かう。その中身の詳細な吟味もできないままに。
そして、そこに、つけ込んでくる者たちがいる。
アメリカでは農地価格が高騰しているという。新興国の成長に伴う食糧需要の増大やバイオエネルギーへの注目で、冷え込んだまま停滞している住宅地需要と対照的に大規模農地が投機の対象となってきている。
そして、それにつれて、当然、アメリカの、ひいては世界の穀物物価は高騰することになる。
こんなことは、これからいくらでもあることだろう。急な天候不純や国家間抗争に起因する輸出制限。そんなたびに農産物輸入価格が高騰することになろうとも、食糧自給率の極端に低い我が国では、有り金はたいても、どんなに頭を下げてでも、他国から食料を輸入せざるを得ない。
TPPは、これを加速する。
再度、本書からの引用。
『TPPの交渉に参加したとたん、日本は、アメリカが主導する外需依存国・一次産品輸出国の連合軍に、完全に包囲されるでしょう。』
TPPに賛同しているのは農産物輸出国の集まりである。そんな中に農産物輸入国日本がたった一人で乗り込んでいく。どうぞ、骨の髄まで食い尽くして下さいと言わんばかりに。
日本国民必読の書
2012/03/11 21:36
12人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:CAM - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は、「おわりに」の冒頭で、「TPPへの参加など、論外です」とし、この本で言いたかったことは、結局のところ、その一言に尽きるとする。そして、著者は、TPP参加という愚行は、国難を呼び込むものでしかなく、「できるだけ多くの日本人が、歴史に想いをはせつつ、TPPへの参加の愚かさを論理的に理解し、その危うさを明確に自覚した上で、きっぱりと拒否するところまでいかなければ、日本は、この先、この厳しい世界情勢を生き抜いていくことができないのです」と主張する。
TPPの是非について、評者は、本書に接するまでは、必ずしも明確な認識を有していなかったが、本書を読んでまさに目から鱗が落ちるような感じで著者の主張に納得した。
著者の主張をまとめると、
第一に、TPP賛成論には、基本的事実認識の誤りがあまりにも多すぎる。日本の平均関税率はアメリカよりも低く、農産物に限っても、決して高いとは言えないレベルであり、穀物自給率はわずかであって、すでに開国している。日本の実質的輸出先はアメリカしかなく、アメリカの実質的輸出先は日本しかない。日本がアジアの成長を取り込むなどというのは不可能である。
第二に、需要不足と供給過剰が持続するデフレ下では、さらなる実質賃金の低下や失業増大を招くような貿易自由化政策を講じるべきではない。デフレこそが、日本経済の長期停滞の最大の原因なのであり、日本にとってはデフレ脱却が最優先課題である。貿易自由化と輸出拡大の推進は、そのデフレをさらに悪化させるものである。
TPP参加によるアメリカからの安価な農産物の流入によって、打撃をこうむるのは農家だけではない。食料品価格が下落することによってデフレが進み、日本経済全体が打撃をこうむることになる。
構造改革は生産性向上を目指すものであるが、生産性向上は物価下落をもたらすので、インフレ時はよいが、デフレ時に行うものではない。要は「政策の順番」であり、まずはデフレ脱却が先決であって、農業の生産性向上はその後に行うべきである。
第三に、アメリカは、国際競争力をもち、今後、高騰すると予想される農産品を武器に、TPPによる輸出拡大を仕掛けてきている。大不況に苦しむアメリカには、アジア太平洋の新たな貿易の枠組みを構築しようなどというつもりはなく、その余裕すらない。
TPP参加というのは、世界の構造変化もアメリカの戦略的意図も読まず、経済運営の基本から逸脱し、その上、経済をめぐる基本的事実関係すらも無視しない限り、とうてい、成り立ち得ない議論である。
農業(食料)問題については、「食料自給率の問題」(184頁以下)、「食料の戦略性」(186頁以下)、「石油より政治的パワーの強い穀物」(189頁以下)なども必読である。
「第6章 真の開国を願う」も示唆に富むもので、必読。
三橋貴明氏は、同氏に対して、元財務官僚が「デフレ、デフレ、うるせいよっ!」と言い放ったこと、元経産官僚が「TPPで物価が下がる(から推進するべきである)」というような発言を行ったことを述べているが(『売国奴に告ぐ!』)、我が国のエリート、マスコミの近年における知的劣化はかなりひどいと言わざるを得ない。
その中で、中野氏のような強力な論客が登場したことを喜びたい。
反グローバリズムの論客、「反TPP芸人」中野剛志氏の2011年の著作
2020/07/28 14:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:歯職人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
動画サイトなどに登場する中野剛志氏は、あえて世間と不調和を招く「おやじギャグ」や「失言」を織り交ぜながら、民主党政権、復帰した自民党政権と常に反グローバリズム、当たり前に考えた独立国としての日本を保つ立場から、学識と論理に裏打ちされた言説を展開している。
本書は、トランプ米大統領の登場によって急激に報道されなくなっている「TPP」を、2011年時点で解明し、警告を発した書です。2020年米大統領選挙の結果によっては、「TPP」が頻発する事態も考えられる。
中野剛志氏の著作としては、手に取りやすい一冊と思います。
TPP 賛成派は思考停止している?!
2011/03/27 00:43
14人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
TPP 賛成派にもっとも系統的に反論している. 賛成派は思考停止しているのではないかということまで書いている. たしかに,いま入手できる情報から客観的に判断するかぎりは,TPP に賛成するべき明確な理由はないように感じられる.
反TPP論者の筆頭かも
2021/08/20 19:43
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:絶望詩人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
TPPに反対することは、なかなかできないことである。
だが、中野氏は表立って反対する。
この本を読むと、中野氏の勇気と論理的な主張に敬意を示すようになろう。