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投稿者:たんちょれ - この投稿者のレビュー一覧を見る
当時、不凍港を求めて南下政策を進めていたロシアは、日本語話者の養成を急務としていた。その目的の達成のために、日本からの漂流民を強制的に日本語教師とした。数々の悲劇が生まれたが、日本語教育を目指す者にとっても、その歴史を知ることは有意義であろう。
日本人にとっての「秘境探検記」。偉大で素朴なロシアの人々に感謝。楽しめた
2020/06/21 16:51
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投稿者:大阪の北国ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
読了後、解説を読んで「なるほど」と目から鱗の落ちる思いがした。
井上靖版に比して登場人物の生き生きとした描写具合が数段違う。「北槎聞略」だけではなかったんだという驚き。そしてその新たな原典を求めた吉村先生の真実を追求する鋭い眼差し。 これは読む価値のある本だと痛感した。
読み進めていくうちに、ロシアの街々で「扶養」を受けていながら支給される金額が少ないとか生活が不便だとかいう場面が出てくるので、いくら小説とはいえ身の程知らずも甚だしいと腹も立ち、「吉村先生 ちょっと光太夫に要求させすぎじゃないんですか」と思ったが、船頭として水主たちを守ろうとした行為と理解した。
終盤では、光太夫は幕府から厚遇されることで団円を迎える。江戸時代の前例でいうと帰国者は幽閉されて寂しい結末と成る想定だが、光太夫の処遇は違った。時代の要請でもあったし、光太夫自身の人品卑しからずという人物像が伺える。充実した一作だった。
異文化と接することをあらゆる視点から描いた名著
2019/08/23 00:48
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投稿者:ニック - この投稿者のレビュー一覧を見る
(上巻のレビューからつづく)ロシア道中の出来事や人間関係のあまりに詳しすぎる描写は、光太夫だけでなく磯吉の聞取書も題材にしていることをあとがきと解説で知り納得。異文化と接することをあらゆる視点から描いた名著。
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漂流物は心を打つ。是非裏表紙を見ないで読んでもらいたい。
命をかけたドラマチックな人生は壮絶で、到底自分は生き抜くことはできないと
思うけど、現代は生ぬるく生きているような気がして少しうらやましい。
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江戸時代末期、ロシアに漂流した商船に乗った大黒屋光太夫ほか船員15人の物語。
ロシアの文化になじみ、その風土に生きることを決意する者。
それでも日本の土地に望郷の想いを馳せて、いつか帰ることを胸に生きる者。
病に倒れる者。
そんな日本人たちに魂で対応し、人間として繋がっていくロシア人たちのお話。
この時代は、「日本人としていきること」がアイデンティティーの第一に考えられていたんだと思う。
今の時代において「自分の生まれてきた使命」を考えるときに、「日本国に利益をもたらすため」とは、まず浮かばない。
バカじゃないの? 自分はどこの国にいても、自分なのに。なんて思ってしまうのは、現代人の悲しい習慣。
こうしてグローバルに世界は広がり、単一国家の誇りは失われてゆくのですね。
■同じテーマなら『オロシヤ国酔夢譚』の方が面白いし、人物描写が上手い。
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井上靖「おろしや・・・」を読んだ事がないので、初めて主人公を知ったので、想像を絶する帰国までの道のりのゴールをハラハラしながら、読了。
一部の洋学派の人達の興味の対象では、あったようであるが、本格的に幕府主催の欧米対策のプロジェクト参加等はしていない。まだまだ危機感は持っていなかった時代であったのであろう。
解説にある様に、主人公の欧米での体験・知識がもっと広がっていれば、徳川幕府の柔軟性も上がり、幕末が少し遅れていたであろうと確信する。
感動的なシーン:
女王との謁見
仲間との別離
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下巻では帰国がなかなか叶わぬロシアでの苦難な生活から女帝エカテリナへの謁見、また、その後の帰国・日本での余生まで、まさに波乱万丈の一生に心を動かされた。
ロシアで光太夫等の帰国に労を惜しまないキリロの子息がラクスマンであることは歴史の繋がりも実感できるところ。
厳冬の中、死に至るメンバー、改宗せざるを得ずロシアに残るメンバー等々、心の描写を巧く捉えており、読みながら胸を締め付けられる思いを何度も抱く。
光太夫が日本に戻ってから行ったロシアに関する情報提供、語学指導等は、当時の日露の外交政策に大きく影響を与えているはずであり、単なる漂流者ではなく、知識人・政府役人等へ啓蒙にも多大な影響を与えているのだろう。
大黒屋光太夫は、確かに歴史の一ページを担っている。
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帰国後の光太夫は幽閉されたわけではないし、幕府の対応もおおむね合理的。ただただ大変なのだと思う。
ただ、そこまでして帰国したいものなのかは、分からない。
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【本の内容】
<上>
若き水主・磯吉の人間臭さのにじみ出た生々しい陳述記録をもとに紡ぎだされた、まったく新しい光太夫たちの漂流譚。
絶望的な状況下にも希望を捨てず、ひたむきに戦いつづけた男の感動の物語。
<下>
十年に及ぶ異国での過酷な日々。
ロシア政府の方針を変更させ、日本への帰国をなし遂げた光太夫の不屈の意志。
吉村歴史文学、不滅の金字塔。
著者渾身の漂流記小説の集大成。
[ 目次 ]
<上>
<下>
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ 文章
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☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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教科書では簡単な説明で済まされる大黒屋光太夫だが、その裏には当然、並々ならぬ意志と数奇な運命が練り込まれている。吉村昭の骨太な文章に、光太夫の濃密な生き様がきれいに重なる。
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上巻が過酷な環境に対する肉体的苦痛が詳細に描かれていたのに対し、下巻は帰れるのか帰れないのか期待と失望を繰り返す日々、宗旨替えした仲間を置いて帰国する喜びと苦しみ、死んでしまった仲間の家族に対する負い目など、精神的な苦悶が巧みに描かれていた。特に、帰国が叶わない身となった庄蔵、新蔵との別れの場面が印象的だった。帰国後、光太夫と新吉が不自由無い暮らしができていたということが救いだった。
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皇帝(エカテリーナ)に帰国許可の勅諭をもらおうと,首都宛に願いを数度出すも,音沙汰なし.イルクーツクで知己となったキリロの提案で,直訴のためにペテルブルグまで真冬に数千キロの旅に出る.遂にお許しが出て帰国資金まで頂き,船を仕立ててオホーツクから根室まで.打ち払いの憂き目を見るかと思いきや,貴重なロシア情報源との扱いで,幕府から住まいと給金をあてがわれ,余生を過ごす.
出来事が比較的淡々と書かれているのだが,出来事が相当ドラマチックなので,何度も読み返してしまい,同じ場所で感動する.
結局17人中無事に帰国できたのは3名のみで(1名は帰途に蝦夷で亡くなったので実質2人),運命を決したのは,帰国しようという強い意志,か(病死した人はやむを得ないんだけど).そう思えば,もしかして漂着したのがロシアでなく温暖な国であったならば,もっと違う結果になったかもしれない,と想像される.ここだけはどうしても勘弁,っていう.
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井上靖のおろしや国酔夢譚では、帰国後の光太夫と磯吉は良い扱いがされていないように書かれていた。しかし、新史料をもとに書かれた本書は全く違う。とても恵まれた余生を送っていたらしい。少しほっとした。それよりも気になるのがイルクーツクに残された庄蔵と新蔵だ。どんな思いで極寒の異国で生きていたのだろう。
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天明2年暴風でロシアのアリューシャン列島に漂着した漁師の大黒屋光太夫と17人の仲間たちが帰国を夢見てシベリアからペテルブルクまで赴き帰国するまでを描いた歴史小説の傑作。いや、冒険小説の傑作。女帝エカテリナに請願する不屈の光太夫の行動力、船主として乗組員を励まし、また苦悩する姿。キリスト教の洗礼を受けて帰国をあきらめる者、凍傷で命を落とす者、それぞれの者たちの苦しみや悲しみ、そして帰国への情熱が痛いほど身に刺さる。かなり燃えます。
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面白かったー。読後、まずはどれだけが事実かが非常に気にになったが、どうもかなりが史実に基づいていると知り尚更に読んで良かったと思った。
あの時代に、言葉が一言も通じない外国に流れ着き、長い年月を過ごさなくてはいけないというのはどれだけの事だったか想像を絶する。仲間が一人ずつ亡くなっていったり、絶望していったりするのも胸が締め付けられた。
そして、過酷な状況においては賢くないと生き残れない、という事も改めて気づく。
光太夫に諦めてほしくない、と強く思いながら読み進め、一緒に悲しみ、苦しみ、焦れて、歓喜する。とても良い読書ができた。いつの時代も、異国の人であっても心を通じ合える人はいる、という事も再認識。
帰国して、最後は心穏やかに光太夫が過ごせた事に、とても安堵した。