電子書籍
猫のゆりかご
著者 カート・ヴォネガット・ジュニア (著) , 伊藤典夫 (訳)
わたしの名はジョーナ。いまプエルト・リコ沖のサン・ロレンゾ島にいる。"パパ" モンザーノの専制政治に支配されるこの島で、『世界が終末をむかえた日』の著者となるべきわたしは...
猫のゆりかご
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猫のゆりかご (ハヤカワ文庫 SF)
商品説明
わたしの名はジョーナ。いまプエルト・リコ沖のサン・ロレンゾ島にいる。"パパ" モンザーノの専制政治に支配されるこの島で、『世界が終末をむかえた日』の著者となるべきわたしは、禁断のボコノン教徒となったのだ。 "目がまわる、目がまわる" 世の中は複雑すぎる。愛するサン・ロレンゾ一の美女モナが、世界中のありとあらゆる水を氷に変えてしまう〈アイス・ナイン〉が、柔和な黒人教祖ボコノンが、カリプソを口ずさむわたしのまわりをめぐりはじめる――独自のシニカルなユーモアにみちた文章で定評のある著者が、奇妙な登場人物たちを操り、不思議な世界の終末を描いた長篇。
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紙の本
おかしくて悲しい、人間的な絶望の物語。この本が読み継がれていくとしたら、それこそ「どうしようもない絶望」を笑うしかないのかもしれない。
2008/01/09 15:12
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヴォネガットの作品の中でも好きな一冊である。著者が昨年なくなったことで懐かしく思い出し、読み直してみた。おかしくて悲しい、人間的な絶望の物語である。今回も一気に読んでしまった。
短い章を重ね、格言のような言葉を織り交ぜてストーリーを展開していく、著者の作風がよく現れた作品である。最後の著作となった「国のない男」にも、この作品からの引用が結構ある。作者も好きだったに違いない。
語り手が「ヒロシマへの原爆投下の日、アメリカの重要人物は何をしていたかの話を書こうとしていた」ところから始まる、仮想の物質が世界を破滅させるというSFじたての物語である。複雑に絡む人間関係、どこかに第二次大戦のなごりを引きずった人々。「猫のゆりかご」は、「ある、と思わされているものがほんとはどこにもないんだ」ということを表した、著者の強烈なメッセージである。登場人物がみな風変わりで可笑しく、その人間的などうしようもなさが絶望的に悲しくもあるが、それを「ボコノン教」と名付けられた宗教の名の下に語られる格言や警句が笑い飛ばしていく。これらの言葉はときに馬鹿馬鹿しくときに鋭く、翻弄させられ、迷走(瞑想?)させられてしまう。設定は書かれた年代を反映しているが、描かれている人間の姿は現在でも活き活きと真実味を帯びている。人間のどうしようもなさはいまだに変わらない、とこの本が読み継がれていくとしたら、それこそ「どうしようもない絶望」を笑うしかないのかもしれない。それでも読み継がれて欲しいし、きっとそうなる本だと思う。
まだの人は是非読んでみて欲しい著者の代表作の一つ。伊藤典夫さんの訳も結構いい。「国のない男」に英文が一部引用されているので、翻訳をちょっと比較してみるのも面白いだろう。
紙の本
私の大好きな好きな作家、久しぶりにこの作品を読んでみた
2021/07/19 21:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヴォネガットという作家は自分がSF作家と呼ばれることをひどく嫌っていたという。私が読んだことのある作品の中では確かに「タイタンの妖女」や「ガラパゴスの箱舟」などは小説の範疇でいえば、SFなのであろうが、そうゆうくくり方をヴォネガットは嫌っていたのだと思う。これは日本の小説でも言えることで、たまに「筒井康隆氏はもともとSFを書いていた人だが、純文学に舞台を移したようだ」という評論を見かけることがあるが、筒井氏ファンである私に言わせると「彼は何も変わっていない、世間がようやく筒井氏に追いついただけなのだ」。ヴォネガット氏に話を戻すと、この作品の主人公は原爆が投下された日にあなたは何をしていたかを作品として仕上げようとしていたが、どういうわけか全く違った方向に話は進んでいく、確かにSFらしい話だけど、そういう括りは無意味だ
紙の本
世界の終わり
2019/07/23 16:12
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ペンギン - この投稿者のレビュー一覧を見る
危機的状況でも理不尽な行動に走る人間の描写に妙にリアリティがあってすごく怖い。ヒーローがいない。普通の人の活躍もない。淡々とした「わたし」語り口が社会に存在するもの全てに意義を見いだせてない感じが出てて、読んでて正直ツラかった。でもこれが、カート・ヴォネガット流の優しさなんだよなぁ。
作者が苦しんでいたことが私にも少しだけ分かると思う。私自身も苦しんでいたこと、今なら分かると思う。
電子書籍
世界は滅ぶのに、妙な安堵感
2022/11/11 21:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しゅんじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「実は読んでいなかった本」読破計画第一弾。そういえばヴォネガットは長編は『スローターハウス』しか読んでなかった。若い頃の作品だと思うが、このシニカルなテイストは変わんないのかな。今、読んでもほとんど古びてない、トランプが出てきても違和感ないくらい。ボコノン教は知っていたけど、いいねえ。タイトルがあやとりのことだとは知らなかった。まあ、表紙に書いてあるんだけどね。良かった。
紙の本
私のカラース
2005/04/15 15:37
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なふん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ボコノン教の教えは示唆に富んでます。私の運命を決定付ける人は誰なのかな…と、誰もが読後考えてしまうと思いますよ。
紙の本
必然的破滅
2001/11/29 23:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:marilyn_hanson.com - この投稿者のレビュー一覧を見る
いくつかのフラグメンツから全編が構成され、世界滅亡にいたるというヴォネガットにはありがちなパターンだが(のような気がするが、)この作品が初めてこの形で書かれたもののようです。
架空の宗教、ボコノン教の儀式「ボコマル」は山本直樹「ビリーバーズ」で引用された。(豆知識)
ネタばらしをまずしてしまうんですけど、周りの水分すべてを同じ結晶状態にしてしまう「アイス・ナイン」がばら撒かれることで世界は滅亡します。
このアイスナインを作ったのが人畜無害な博士で何ら破滅的意図もなしに(学術的興味のみで)作られたものであるのに、その後の博士の子孫やその他の人間の様々な思惑によって上記のような結果になってしまうところに、ヴォネガットの皮肉とストーリー作りのすごさを感じますね。
「ガラバゴスの箱舟」も(ネタばらしになりますが)人類が退化し海獣のように這いずり回りながら、暮らす、というなんとも言えない結末で終わるのですが、「ガラパゴス〜」の破滅も、この作品の破滅も、まるで非現実的なのに「でも、あるかも」という妙なリアリティを抱かせるところがあって、そういうところは楳図かずおの『漂流教室』に通じるものがあるとも思います。
結末がさらっと滅亡で終わるのですが、そのほかの断片も特に感情も交えず登場人物の言動の描写だけで進んで行きます。ただ、その言動によりその時々の登場人物の感情が読み取れるだけ。
結局、世界のどんな事柄も一つとしてドラマになどなりえず、また、すべてがドラマなのだとヴォネガットは言いたいのかもしれない。世界の終わりでさえも。
紙の本
猫、いますか?ゆりかご、ありますか?
2000/12/19 07:25
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:子房 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヴォネガットの出世作にして最高傑作(と思う)。これを読めば、あなたも今日からボコノン教の信者になれる! さあいますぐボコノンを称えるのだ——
はじめから説明すると、主人公の作家はある事情で故人の科学者について調べはじめて、あるきっかけで科学者の子供たちと知合い、ある事情で南の島国にでかけ、ある要因で世界の荒廃が起こる。というとても分かりやすいお話。
とにかく愉しい小説だ。細かい章立てによる皮肉と諷刺の数々。小話の羅列でありながら立派なひとつの物語が構成されている素晴らしさ。この手法を彼が本格的に使用しはじめたのはこの作品が最初だそうだが、最初でこれだけの上手さをみせているのだから凄い。
さらには登場人物の俗っぽく、だからこそ共感してしまう悲哀。アイス・ナインを利用して、自分たちの求めるものを得ようとする三人の兄弟。素朴な苦悩と、素朴で当たり前なことを語るボコノン教。ふたつの重なりは、いつしかしだいに厳粛な気持ちを読む者に及ぼす。最後まで笑いながらも、終わったあとしばし呆然としてしまう。宙空に猫を、ゆりかごを探してしまう……
紙の本
こんなにも
2020/01/04 17:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんなにも「この本の中に真実は一つもない」という注意をされると、フィクションを読み慣れている身としてはかえって警戒してしまいましたが・・・。
あとは読んでのお楽しみ。