- 販売開始日: 2013/05/15
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-101601-6
にごりえ・たけくらべ
著者 樋口一葉 (著)
落ちぶれた愛人の源七とも自由に逢えず、自暴自棄の日を送る銘酒屋のお力を通して、社会の底辺で悶える女を描いた『にごりえ』。今を盛りの遊女を姉に持つ14歳の美登利と、ゆくゆく...
にごりえ・たけくらべ
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商品説明
落ちぶれた愛人の源七とも自由に逢えず、自暴自棄の日を送る銘酒屋のお力を通して、社会の底辺で悶える女を描いた『にごりえ』。今を盛りの遊女を姉に持つ14歳の美登利と、ゆくゆくは僧侶になる定めの信如との思春期の淡く密かな恋を描いた『たけくらべ』。他に『十三夜』『大つごもり』等、明治文壇を彩る天才女流作家一葉の、人生への哀歓と美しい夢を織り込んだ短編全8編を収録する。
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ふたりの女、ふたつの闇
2011/06/20 00:51
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:辰巳屋カルダモン - この投稿者のレビュー一覧を見る
予備知識なく本を開いて驚いた。ページが文字でびっしりだ。読点「、」のみでつらつらと続く文語体である。一瞬たじろいだが、大丈夫、心配ない。慣れれば独特のテンポが心地よくなる。
銘酒屋の酌婦お力と、彼女に入れあげて身代を潰した源七の妻、お初。ふたりの女性の心の闇を丹念に掘り出した『にごりえ』について書く。
若く美しいお力は店のナンバーワンで、表向きは明るく屈託なく振る舞っている。だが内心では、不幸な生い立ちを悲嘆し、前途なき現状に絶望が渦巻いていた。それでも胸の内を話せる相手も現れ、将来へのかすかな希望が芽生えて心は揺れる。悩みまどう女性の心情は今と変わらない。
一方、お初の闇は現実そのものだ。貧乏のどん底に落ち込み、髪を振り乱して内職に励む毎日。夫に恨み言をあびせ、お力を憎む。彼岸に長屋中で餅や団子をやり取りするなか、貧しいため仲間外れにされるエピソードが印象的だ。やはり、このころ貧しかった一葉の体験からきたのだろうか。
対照的なふたりの闇、その強大な負のパワーに突き動かされ物語は破滅へと進む。
ある夜、強い絶望感に襲われたお力は、店を飛び出し街をさまよう。そのシーンは3D&サラウンド映画を観るようで圧巻だ。
「行きかよう人の顔小さく小さく擦れ違ふ人の顔さへも遥とほくに見るやうに思われて、我が踏む土のみ一丈も上にあがり居る如く、がやがやといふ声は聞ゆれど井の底に物を落したる如き響きに聞なされて」(103頁)
なんと巧みな、そして凄みのある描写だろう!お力の孤独の深さがひりひりとした実感をもって迫りくる。一葉の魂そのものが投げかけられたような、渾身の表現が熱い。受けとめきれず、壁の一点を見つめて、しばし、ぼう然となった。
運命に従うしかなかった女性たちの心の闇は底知れない。それは自らをお力やお初に重ね合わせた、一葉の心の叫びなのか。
女にしか書けない両片思い
2015/10/10 21:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ティアマト - この投稿者のレビュー一覧を見る
雅文で綴られているため語られすぎることがなく、文中に描かれることのなかった余情が全編をとおしてたちのぼり、そのまま描いたら生臭さくなってしまいそうな花柳界の内側が、その外面と同じようにきれいなまま映し出されている。
女の権利云々が言われるようになってから名ばかりが大きくなって、女は弱くなったように思う。樋口一葉の描く女は幸せを掴むことが許されないうえに待つことしかできない。それなのに、本質的に現代の女よりも芯がある。でもやはりそこには弱さもり、それをさらけ出すことができずに苦しむが、「にごりえ」の結城にしろ「十三夜」の録之助にしろ、どこかでその弱さを認めてくれる男も描かれていて、読んでいて救われた。「たけくらべ」の藤本と美登利の両片思いも、女にしか描けない切なさと救われなさで、現代の恋愛小説以上に胸が締め付けられた。
弱いからこそイニシアチブを握ろうとして、強いふりをする女たち。そしてそこにプライドを持っているから、一葉の描く女はどうしようもなく哀しくてうつくしい。
入り口色々
2015/08/28 18:11
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夜メガネ - この投稿者のレビュー一覧を見る
紙幣に印刷されるようになって、以前にもまして色んな方面からたどり着いて読まれている作家だと思う。
「ガラスの仮面」で主人公とライバルが演じる場面があり、
舞台のシナリオ以外の形で読みたくなって手に取った。
(さすがは美内先生、原作にノータッチでも全く問題ないほどの予備知識を授けて下さった!)
ラストの美登利に対する解釈は男女でパキっと割れる。
解説している人数もものすごいのだが、ここは男性側の見解の多くがおめでたく思えてならない。
(そうあってほしいのかもしれないが、それはそれでちょっと…。)
美登利はどこに住んでいるのか、彼女の家の大黒柱は誰なのか、…読んだのかどうか疑わしいものまであった。
一葉が新吉原付近に住んでいたときに見聞きした事が題材と言われてる。
ならば、姉さんと同じ道に進み、生計を立てる一員になったと考えるほうに一票。
美登利は姉を尊敬している。 ごくごく自然な流れだ。
読みにくい文体、でも美しい
2002/05/08 17:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:麒麟 - この投稿者のレビュー一覧を見る
樋口一葉は、貧困の中に暮らし、若くして世を去った女流作家です。
実際に身を売ることはなかったようですが、身を売る寸前まで追い詰められていたからか、身を売るよりほかはない女性の悲劇を描いた作品が多くあり、またすばらしいとされています。
表題の二作もそうです(「たけくらべ」の方は、遊女になるより未来のない少女の話ですが)。
樋口一葉の文体は、最近の、やさしく読みやすい文章を基本とする読み物になれている人たちには、非常に読みづらいものかもしれませんが、とても美しく、静かで、淡々としていて、私はすきです。
静かゆえに、その物語の哀しさも、心の奥にしんしんと積もるように感じます。
と偉そうにいえるほど、実は、私もこの文体を読むのは得意ではなく、本棚からすっと取り出して、普通の小説のようにすらすら読めるものではないのですが、それでもときに思い出し、ふっと読みたくなる一冊なのです。
普通の小説を読むより大変かもしれませんが、一度は読んでみてほしいです。
魔法使いサリー第93話 「消えたサリー」
2014/01/06 14:45
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:月 光 - この投稿者のレビュー一覧を見る
先生の勧めで、名作の本を読むようになったサリー達。よし子は寝る間も惜しんで読書に熱中する。一方、サリーも興味を持つが、魔法使いは名作を読むとその世界に入り込んでしまう性質があるため、パパに止められる。だが、サリーはついに『たけくらべ』を読んでしまい…
良かったよこの回のサリー