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投稿者:Living Yellow - この投稿者のレビュー一覧を見る
小森陽一氏の「漱石を読み直す」(ちくま新書)に代表される、近代文学作品を当時の政治・経済・社会・国際関係など、その作品と不可分な現実的な時代状況の中に置きなおして、再解釈するという営みがさかんだった時期がある。刊行時点からしても、本書はもしかすると、創作の形をとりつつ、その流れで「吾輩は猫である」を再解釈する試みだったのかもしれない。
「吾輩は猫である」本体では登場人物たちの話題に上ることなどはあっても、彼ら自身が直面することのなかった要素がことごとく登場するのだ。上海という異国。中国、そして英仏独の列強の人々(猫々?)、日露戦争、殺人、ドラッグ、実験科学。「猫」本体がその背後に抱えていた諸問題を娯楽小説の形に乗せてずんずん差し出してくる。
その試みが成功したか、どうか。それは皆さんの判断におまかせしたい。
しかし普通のミステリ、あるいはSFとして読むには、長い割に少し後半尻つぼみ気味になっているのは否めない。
私はこの作品に持ち込まれている「評論・思想」そのものに賛同するわけではないが、ただ、こうした試み(評論・思想と一般小説を統合するという試み)は、もっと広くなされてもよいのではないだろうか。
「我輩は猫である。」の謎
2001/07/16 04:14
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投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏目漱石の『我輩は猫である』に登場する名前のない猫「我輩」、実は最後に溺れ死んでいなくて、どういうわけか船に紛れこみ上海へ。そこで巻き起こる壮大な陰謀とは…、ってお話し。
漱石「我輩は…」を読んでなくても充分楽しめますが、苦沙弥先生はじめその友人たちも登場するので、読んでからだと十倍楽しめます。
事件の謎もおもしろく、猫の目からみた上海の描写なども興味深く読め、娯楽作品として最高です。漱石のファンの人に、ぜひ読んでもらいたいな。
面白い。けど、トリックがね・・・
2002/07/28 02:33
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投稿者:nescio - この投稿者のレビュー一覧を見る
ご存知夏目漱石の「我輩は猫である」のパロディーは、
その本がブレイクした当時から多数出たと言う。
私は、漱石の「我輩は猫である」の気取った明治の文体が好きだったのと、推理小説が好きだったのとで、この本を読もうとした。このような動機をもたれた人は、楽しめる小説だと思う。
ただ・・・、トリックは、もっと現実的なものであってほしかった。それ以外のところは全部現実的なのだから。だから、トリックを解こうとして読むのは勧められない。
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どっこい生きてた猫の『吾輩』がなぜか上海に渡り、中国猫の寅君やらドイツ猫の将軍、フランス猫の伯爵、ロシア猫のマダム、イギリス猫のホームズとワトソンらと共に謎を追え!てな感じ。猫たちの掛け合いがムチャクチャ面白い。文体も漱石をちゃんと模倣。ニヤニヤしちゃいます。…がSFファンタジーならそう言ってくれ。なんかなあ。前半は面白かったのに。
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まず、見るべきはタイトルでも粗筋紹介でもなく、著者の略歴だったと言うべきだろうか。
タイトルと粗筋を読んでは、私のように間違った印象を受ける可能性があるからだ。
略歴を先に見れば私のような間違った判断をする可能性はだいぶ減るのではなかろうか。
先に言っておくがこれは推理小説ではない。
これだけで気付かれた方も多いと思うが、あえて言っておくと私はこれを推理小説だと思って読んだのだ。
この勘違いは、多くの作品をつまらなくする思い込みである。
後日、書評を書くこともあると思うが岡嶋二人のクリスマス・イヴという作品でも私は同じ様なミスを犯した。
なので言っておく。これはSFに分類されるのではないだろうか?
この小説のタイトルにも出ている『吾輩は猫である』は夏目漱石の著作である。
今回紹介したこの本は、この小説を下敷きとした二次創作である。
日本に置いて、日本の中等教育高等教育を受けたものならば誰もが知っているであろう。私はこの原作である漱石の著作に特別の思い入れは無い。
私には推理小説として読んでしまった期待感からか、拍子抜けした感もあり、残念に思うところが多々ある。気の抜けた感じだ。
原作を愛する人が読んだならばどのような反応をするのか大変興味深い。
しかし、後書きによって知ったこの二つの著作については興味を持ったので後日機会があれば是非読んでみたい。
贋作吾輩は猫である 内田 百聞
続吾輩は猫である(旧題・それからの漱石の猫) 三四郎
推理小説ではないというのは充分に解っているのでそのような期待はもちろんしていないので安心なされると良いだろう。
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あの「吾輩は猫である」後日談。
わしがたいへん感心したのは、あの漱石独特の、「饒舌文体」を、ほぼそっくりにコピーしてくれていた、という点じゃな。
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吾輩は猫である。
この作品をベースに、猫たちの側に起きた事件を示す魅惑のミステリー。
猫好きにはさらに堪らんwww
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ご存知漱石の「我輩は猫である」を下敷きに模倣文体でもってパロディSFミステリー小説にしてしまった奥泉先生に脱帽。
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面白かった、んですけどおおお
またそのネタかああ・・・orzと思ってしまった。
奥泉さんはどうやら文体やらなんやらは大変好みなようだが、肝心のストーリーの中核となる部分?が好きじゃないっぽいなあ。う~ん・・・
そんな感じで、読んでてちょうおもしろかった!です。それ以降の部分についてはネタバレになるから書けない・・・。
そして実は猫そのものを読んだことがない私・・・。ちゃんとまたブンガク読もーという気になりました。ハイ。
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「我輩は猫である」の続編的位置づけで、かの猫のその後の冒険(?)が描かれます。「我輩は猫である」の文体を模倣した文章はちょっと読みにくかったかな。どうにも慣れない…。猫が主人公で謎解きにチャレンジしてたりするので、その光景を想像するだけでも、猫好きにはたまりません。猫サロンとか遭遇したいぞ。
とはいえ、謎解きも各種妄想が入り乱れてるだけな印象もあり、ミステリーとして楽しいかというと、やや疑問。ラストの展開も、それこそが奥泉さんの持ち味なのだろうけれど、個人的にはきっちりミステリーで完結して欲しかったかなー。
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夏目漱石の「吾輩は猫である」のその後。
パスティーシュ、ミステリー、SFとてんこもりです。
夢十夜もホームズもどんとこい。
終わり方がまた含みを持たせていて秀逸。
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まさかのSF。
夏目漱石の名著、「吾輩は猫である」の後日談。どういうわけか水甕から生還し、上海に渡った「吾輩」は各国の名士(猫)が集まるセントラルパークを根城に国際派な生活を満喫していた。ある日、日本人租界の古新聞に「吾輩」は驚愕の記事を発見する。かつて食客として起居していたボロ屋敷の主・苦沙弥先生が何物かに殺害されたらしいのだ。
俺大喜びの「美文である」という要素を加味すれば。ジャンル的にはミステリじゃなくて純文な気がする。というか、この本はミステリとして見るのは勿体ない。猫視点の推理物という珍しいジャンル、セントラルパークに集まる各国の名士(猫)達と日本代表を自任する「吾輩」の会話の妙、1920年代上海という舞台と諮問探偵&医者コンビのクロスオーバー、そして常に予想の1歩先を行く展開と買うとっかかりになる要素が山ほど。動物視点好き且つ明治・大正好きなんてフリークスには力いっぱいオススメしたい。
ミステリと見せかけてミステリじゃない系の本は割と美文だったり雰囲気が素敵だったりする率が高い気がする。探しにくいジャンルだなぁ
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漱石の「吾が輩は猫である」の続編として書かれた小説です。
かなり面白かったです。事細かな部分も漱石の「吾が輩は猫である」とリンクしていて、読んでるうちに、こういうシーンあったなあ、と思い出したりしました。
吾が輩は猫であるを引き継ぎつつも、推理小説として成立していて、かなりビビっときました。
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諧謔と文体模写の超絶技巧にとにかく笑える。そして、なんと○○SFで、しかもリドルストーリーだったりする。なんて贅沢。
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あの有名な作品のその後の話。
くしゃみ先生と先生宅があまりにも楽しすぎて、それを取り除いてしまったこの作品は少々はじけっぷりが足りないように思った。面白いは面白いけど、ばかになってぎゃはははと笑う感じではない。
でも登場するねこたちは楽しそうだった。個人的には虎くんが良かったと思う。