不知火海
著者 内田康夫 (著)
浅見光彦、謎の光芒と髑髏(どくろ)を追い九州へ。人目を避け暮らしていた男が消え、美人モデルが続いて消息を絶った。男が隣人に託した桐箱には、黒い石をかみしめた髑髏が。のこさ...
不知火海
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商品説明
浅見光彦、謎の光芒と髑髏(どくろ)を追い九州へ。人目を避け暮らしていた男が消え、美人モデルが続いて消息を絶った。男が隣人に託した桐箱には、黒い石をかみしめた髑髏が。のこされた言葉「不知火(しらぬい)」を追い、浅見光彦は九州・八代(やつしろ)に向かう。かつての炭坑町に秘められた、20数年前の血塗られた事件の真相とは。壮大に叙情豊かに描く文芸ミステリー。(講談社文庫)
目次
- プロローグ
- 第一章 代官山アパート
- 第二章 恨めしげな骸骨
- 第三章 美しい女と怪しい男と
- 第四章 ケネディ暗殺の年
- 第五章 八代海溢れる
- 第六章 廃坑の町
- 第七章 ドクロの記憶力
- 第八章 悪魔の砂
- 第九章 逃亡者
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数年前の事件をもう忘れている自分に驚く
2003/09/22 08:22
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
お馴染み浅見光彦の事件簿である。信濃のコロンボこと竹村警部が役者を替えてテレビに登場しているのだから、話題性から言っても久々に竹村警部や岡部警部の続編を書いてもよさそうなものだが、相変わらず名探偵浅見の登場である。
タイトルの通り九州の不知火をシンボルとした小説である。事件の主役である米村は代官山にあった同潤会アパートに住んでいるという設定である。今はもう取り壊されて再開発事業で高層ビルが建てられている地である。東横線からも見えたあの古めかしいアパートである。
同潤会アパート、今で言えば当時の「マンション」であるが、江東区にある大規模な清砂アパートも全て取り壊されてしまい、古き集合住宅がいよいよ寿命を迎えている。表参道の象徴であったアパートも取り壊されるそうで、現在のマンション・ブームの先駆けとなった東京の建築物が消えていく。
内田氏の小説はこのようなコンテンポラリな話題をうまく取り入れている点でユニークである。ストーリーは米村の生い立ちにまつわる密輸事件をベースにしている。昭和30年代に起こった三井三池の炭鉱事故や国鉄鶴見事件など今では考えられないほど多くの犠牲者をともなったが、そういう過去の事故を巧みに絡めている。
今までとは異なり、事件自体の解決編は米村の独白のような語りで終わっており、米村自身はヒロインと結婚でハッピー・エンドとなっている。これもシリーズの中では珍しい終わり方である。
東京にいた私には三井三池の炭鉱事故はピンとこないが、鶴見事件や三河島事件など当時は社会全体に安全や保安の仕組みが乏しく、その中で犠牲になった方々はさぞ無念の思いがあったとストーリーとは無関係の感想が先に立つ。
その後40年を経て、現在の日本の社会はその犠牲者の上に成り立っているとつくづく感じる次第である。読者にそんな感慨をもたらす小説はけっして多くはないであろう。