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投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『小さき者へ』と『生れ出づる悩み』とが収録されています。前者が20数ページ、後者も100ページ程です。
『小さき者へ』には共感を得ました。やはり自身も一介の父親である為、著者の子供への期待、また妻との関わりについて他人事には思えませんでした。
『生れ出づる悩み』は絵の世界をという中、漁船での様子が克明に描かれてあり、そこで主人公に対する著者からの視点を差し込んであった点で、読み手である私は種々感慨を覚えました。
人は決して常に気丈ではなく、様々に気持ちが揺れたり不安を抱えるものであり、順風に泰然自若とはならないという事を再認識出来ました。
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
読みつがれる不朽の名作であることは間違いない。
とりわけ「小さきものへ」の方は、語り手である父親の感情が、活字から伝わってくる。
ただ、若い時分に読み、今回改めて読んでみたのだが、今の時代の感覚で読むと、この時代の男性(作家)ならではのニオイが気になってしまった。
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小さき者よ。不幸なそして同時に幸福なお前たちの父と母との祝福を胸にしめて人の世の旅に登れ。前途は遠い。そして暗い。然し恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。 行け。勇んで。小さき者よ。
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病死した最愛の妻が残した小さき子らに、歴史の未来をたくそうとする慈愛に満ちた「小さき者へ」に「生れ出づる悩み」を併録する。
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特に「生れ出づる悩み」がよかった。
”君”という三人称文体が内容とマッチしていて、自然に読めた。
貧困ゆえの厳しい労働と芸術への欲の間で激しく生を削ってゆく主人公。
何事もなく大学にいって好きなことが出来ている自分は幸せ者だぁとつくづく感じました。
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この人の文体は馴染み易かった。
時々、思いもよらない表現があってさすが作家さんだな〜って感じ。
>>私は鋭敏に自分の魯鈍を見貫き、大胆に自分の小心を認め、労役して自分の無能力さを体験した
どちらもの作品も終わり方が好き☆”
<小さき者へ>
前途は遠い。そして暗い。
然し恐れてはならぬ。恐れないものの前に道は開ける。
行け。勇んで。小さき者よ。
<生まれ出づる悩み>
君よ、春が来るのだ。冬の後には春が来るのだ。
君の上にも確かに、正しく、力強く、永久の春が微笑めよかし…
僕はただそう心から祈る。
”君”がもってる才能は別として、自分が置かれてる状況と似てるから”君”の気持ちがよく分かる。
そんな”君”も得られなかったからこそ、得られたものがきっとあると思う。
人間そんな不平等ってわけでもない気がする。。。
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マイファースト有島武郎。
心の優しい人じゃないと書けない文章だなと思いました。
それも男の優しさですよ。
強さや押しのない、繊細な優しさなの。
「行け、勇んで。小さき者よ」
なんて、子どもに言い残す父に、私は強さや包容力を感じない。
なんだか敗北した人間の捨て台詞みたい。
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妻が11月に出産を控えています。
あまり実感はありませんが、最近名前を考えながら、いろいろ思慮を巡らせることたびたびです。
昔に読んだ、本作品をもう一度読み返してしまいました。
●「お前たちは遠慮なく私を踏台にして、高い遠い所に私を乗り越えて進まなければ間違っているのだ。然しながらお前たちをどんなに深く愛したものがこの世にいるか、或はいたかという事実は、永久にお前たちに必要なものだと私は思うのだ」
有島武郎には3人の子どもがいたそうです。
それは、3人の息子をもつ私の両親も同じことです。
最初に読んだ時は、真っ先に私の両親の気持ちを考え、感動したものですが、今読めば、これから子供ができる自分に投影してしまいます。
生まれてくる子どもには、目一杯愛情を捧げたいと思います。
そして最終部。
●「小さき者よ。不幸なそして同時に幸福なお前たちの父と母との祝福を胸にしめて人の世の旅に登れ。前途は遠い。そして暗い。然し怖れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。行け。勇んで。小さき者よ」
私も、子どもには色々なことを教えたいです。
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表題作:「愛」は与えること。見返りを求めない。無償の愛の素晴らしさ。
生まれ出づる悩み:モデルとなった木田金次郎は、同じ道産子。彼の葛藤・そして強さ。絵を一緒に見ると思いが尚更伝わる。
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『君よ、春が来るのだ。冬の後には春が来るのだ。君の上にも確かに、正しく、力強く、永久の春が微笑めよかし…僕はただそう心から祈る』
高校のときに授業で扱って、これがずっと頭の片隅においてあった。だから、読んでみようと決心して読んでみたけれど、薄い文庫本にもかかわらず、すごく読みづらかった。
有島本人ぽい「青年」と、絵の才能がありながらも、貧困というやむをえない事情で漁師として逞しくもときに悩ましげに生きていく「君」の話。
ただ、漁師の生活の場面が描かれているときに、これは、どのくらいリアリティがあるんだろう、とふと考えてしまった。というか、考えてしまうくらい、リアリティが若干欠けている気がした。
「小さきものへ」はすごく読みやすくて、愛情に溢れてる文章ですごく読んでいて、幸福な気分になれた。親から子へ受け継がれていく愛っていいなぁと、少し、胸にぐっときた。
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「小さき者へ」は、有島武郎の妻をなくした失望と母を亡くした子供たちへの哀れみから始まって、徐々にそれが、母を亡くした者だからこそわかる痛みについて、生きる希望について、と進んでいく。昔、冒頭だけ読んだときよりも明るい光のさす文章だった。それにしても、隔離されてから子供たちに会うことを必死に拒んだ母。すごい。
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原点。
触れる掌の優しさ、力強さ、無力、命、脈動、静かな覚悟、繋いでくもの、決意。
たくさんの人に対する感情が詰まってます。
もう読むたび泣いてしまうからそろそろ封印したい。
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生れ出づる悩みをAudio Bookで読みました。
本棚に10年くらいはいっていたとおもうけれど、読んでいなかったことにまず驚きました。
こんなに面白い内容だったんだーというのが素直な感想です。
絵の才能にあふれた青年との出会い、そして海の潮の匂いつつまれて送られてきた
スケッチブックから作者が「君へ」と語りながらつづっていく青年の日々の暮らし。
波があれくるう様子や、妹との互いを思いやるやりとり、夢をあきらめて家にもどってきてしまったことの
人知れない後悔。漁師でありながら、スケッチブックをかかえ絵をかく青年への冷やかし。
絵の具すら買えず、スケッチだけで描き出す山。切なくて、苦しくて、でも何かに必死にとりくむことの
美しさを思い出させる名作だとおもいます。
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妻を失い、新しく芸術に生きようとする作家の覚悟と、残された小さき者たちに歴史の未来をたくそうとする父性愛にあふれたある夜の感想を綴る「小さき者へ」。
”君”という語りかけで、すぐれた画才をもちながらも貧しさゆえに漁夫として生きなければならず、烈しい労働と不屈な芸術的意欲の相克の間で逞しく生きる若者によせた限りない人間愛の書「生まれ出ずる悩み」の二編を収める。
(裏表紙より引用)
なんとなく薄っぺらかったので手に取った一冊。初・有島武郎です。
解説によると、「有島の作品にはセンチメンタルなものと執拗残酷なものがある」そうで、これは前者のセンチメンタルな方らしいです。また、このように「人としての有島武郎を直接にあらわしている単純な作品」はそう多くないそうです。
作品の感想ですが、「小さき者へ」は、自分が小説家で同じ境遇にあったらこんな作品を書くのかな〜とか親が小説家だったらこんな作品を書くのかな〜と思いました。
あまりそれ以上の感銘は受けなかった・・かも
「生まれ出づる悩み」は、”君”という語りかけに違和感があるというか、新鮮というか・・・。しかしそこに人間愛を感じました。
ここまで自分の人生を気にかけてくれる人がいたらいいな、と思いました笑
”君”の悩みは、時代やその重要度の差異はあれ、私にとってもも人事じゃないです。
絵を描きたかったんだね。”君”ほど切羽詰ってはいないけれどしたいことが諸事情によって思うように出来ないというのは歯痒いです。
まぁそれなりには面白かったんだけどそこまで残らなかったなあー
「執拗残虐」な方の有島武郎を読んでみたいとは思います。
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このようなロマンチシズムを持ったナイーブな男は欲深く生ききれないのですね。
「君」へ向けた彼のまなざしは、あまりに感動的で、誰もが「君」に魅せられずにはいられないと思いました。
「君」が登場するシーンに、胸が高まります。