柴崎友香氏の大学を出て新社会人となった主人公の10カ月をみずみずしく描いた作品です。
2020/07/01 10:22
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『きょうのできごと』でデビューされて以来、『青空感傷ツアー』や『ショートカット』、『その街の今は』などの話題作を次々に発表されている柴崎友香氏の作品です。 同書は、春子という新社会人として働くようになった一人の新入社員の10カ月を追った傑作です。この春、美大を出てOLになった喜多川春子は、慣れない仕事に奮闘しながらも、会社が終わると相変わらず大学の友人とデザインを続けたり、男友達にふられたりの日々を過ごしています。しかし、ようやく仕事にもなれた頃、社内にリストラの噂がでて、周囲の雰囲気が急に変わり始めます。さらに、昼休みに時々会う正吉が気になり出したこともあり、心に変化が目覚めてきます。乙女の複雑な気持ちを描いた作品です!
社会人として働き始めたころのことを思い出す
2019/08/02 21:00
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投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
社会人として働き始めたころのことを思い出す。確かにこんな感じだったような気がする。私生活と職場での話が程よく混ざっていて面白い。
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新入社員の女の子の視点で描かれる話。
何でもない日常の描写に共感を覚える。何より大阪が舞台だし。若干境遇が今の自分とカブってるので余計に楽しめた。何でもないけど、忘れたくない感覚がいっぱい詰まってる。
解説でもあったけど、主人公の春子は世界を否定しない。愚痴ったりもするけど、そこまで切実じゃない。ありのままの現実に素直に感動し、受け入れるのは、新人ならではだなと。
ずっとこうありたいと思うけど、できないのが大人なんだよね。
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こんなOLの話を、笑いながら必死になって読んでる俺っていったいなんだろう?
と、ふと思う。
そんなこと思いながらも、楽しいからしょうがないかと読み続ける。客観的に見ると結構おかしな光景だよな。
今の自分はこれでいいのだろうか?ってきっと誰もがそう思ってる。
その問いに、ひたむきに向き合おうとしてる姿が、最近の柴崎さんの作品からはすごくする。
考えたからって答えがでるわけでもないけど、考えればなんか前に進んでいく気がする。
新入社員の1年をたった200ページで描いてるんだけど、その季節季節の雰囲気と、仕事への姿勢の変化をしっかりと描いていて、やっぱりすごいなぁと思う。
読んでいて安心できる作品はやっぱりいい。
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芸大を出た新入社員OLの10か月を描いた作品。友達やその会社にいる人たちもなごやか。ふんわり感がいい。
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「めっちゃわかるわ。」
ただ・・・
”外”よりも爽やかだ。
「なんでやろ。」
これがわかれば、
”外”が少し楽しくなると思った。
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主人公の世界がゆっくりだけど確かに
流れていって、変わっていっているのがわかる
ほっこりした小説です。舞台は大阪。
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内容もさることながら今日マチ子の表紙が気になった
すごく身に覚えがある感じ 就職したばかりの頃や学生時代に読んでたらまた違ったんだろうなーと思う
そして普通のOLさんって仕事中にお茶したりそんなに早く帰れるのかーと思ってみたり
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ひとつひとつの言葉が寄り添ってくるような感じでした。
「必要なのは、なにかするべきことがあるときに、それをすることができる自分になることだと思う。」
本文より引用。
ハッとさせられました。
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OL1日体験をしたい人におすすめです。
芸大を卒業してOLになった新入社員春子の物語。
昔気質の会社で平凡な毎日を送る日々に、「本当にこれでよかったのか」と戸惑いながらも、淡々と毎日は過ぎていく。
夢を仕事にできれば一番いいかもしれない。でも、何事も前向きに楽しめたら幸せだ、と思わせてくれる本です。
あまりにも淡々としているので、本当に春子になってOL1日体験した気分になりました。
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昼はOL、夜はアート
なんだこの世渡り上手は
一気に読もうとするとかったるい
アソート菓子みたく、暇を見つけては
ちょいちょいツマミ食いするように読むのが
乙というもの
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柴田元幸のカズオ・イシグロへのインタビューの中で、イシグロがこういう不思議なコメントをしていた。
「ええ、ちょっと聞くと侮辱に聞こえるかもしれませんね。我々はみな執事だなんていう言い方は。私が言おうとしていたのは、ある種の倫理的な、さらには政治的な次元では、それが我々の大半にとって人生の現実ではないかということです。
(中略)
でも大半の人間は、これは私自身も含めて言っているのですが、要するに何をしているかというと、自分の仕事をきちんと果たすよう学んでいくのだと思います。それが自分の人生に望める最大のことだいう場合も多いんじゃないでしょうか。なんらかの技術を身につけ、マスターする。そのささやかな貢献を、もっと何か大きな存在にー会社とか、あるいは一人の人物、上司に、または政治上の主義に、国家にー捧げるわけです。
そして個人としてはあくまで、めいめいささやかな仕事に専念し、精一杯きちんとやろうと努める。そのささやかな仕事をきちんとできるんだということから、プライド、尊厳といった思いを得るのです。そしてそれを、上にいる人に捧げて、上にいるその誰かが良い形で利用してくれることを願う。でも多くの場合、自分の貢献がどのように利用されるかについては、責任を放棄するわけです。」
執事が主人公のRemain of the dayについてのコメントだった。
でも、なぜか、読後に、身体の隅に残っている。どんなに自由そうに見えても、皆、誰かの執事なのだ。社員は上司の、上司はそのまた上司や顧客の、社長は株主の、株主の機関投資家はそのまた先の個人と、執事のチェーンはぐるぐると廻っている。そして、ぼくたちが感じる疲労感の原因のかなりの部分が、誰かのための人生ということから生じている。しかし、そこから、完全に逃れたところに完全な人生が見つかるわけでもない。
誰かのために、働きはじめることを、明確に意識するのが、新入社員になった時だ。もう自分が新入社員だった時のことなど忘れてしまっていた。
保坂和志がどこかで褒めていたので、思わず買った、柴崎友香の「フルタイムライフ」(マガジンハウス)が面白かった。
忘れていた新入社員時代の気分や雰囲気のようなものを思い出させてくれる。
主人公は22歳。美術大学のデザイン科を卒業し、食品の包装をする機械を製造している大阪の会社に入社した。彼女の10ヶ月をたんたんと描いている。
絵を描いたり洋服とか小物を作るのが好きだったので、単純に好きなことをずっとやれたら楽しいだろうと思って美術系の大学のデザイン科に入った。だけど、実際にそこで勉強するうちに、自分にはこういう仕事はできないと思うようになった。デザイナーとか絵を書いてやっていける人と、自分は違う。才能っていうことも大きかったけれど、それよりもまず行動力というか、実際に卒業して創作をするような仕事ができる人は、大学にいるあいだからどんどん個展やイベントをやったりコンテストで賞を取ったり雑貨屋で作品を売ったりしていて、わたしはそんな人の活動を見るたびにすごいなあと感心する側で、ぼ���やりしているうちに気がついたら置いていかれることが多かった。」
社内報制作担当などといっているうちに、当然ながら、多くの雑用や日常業務が押し寄せていく。主人公は、その状況を否定するわけではなく、若干の好奇心と諦念のようなものでゆるやかに受け入れていく。友達と共同で、デザインのバイトをやったり、好きな男の子にさらさらと振られたりと穏やかに日常が流れていく。そして仕事上でつきあう、ウェブデザイナーの友人にちょっとした恥ずかしさを感じたりする。
「印刷機の都合で、縮小コピーしたイラストを鋏で切って糊で貼って作っているような社内報は、きっとかおりちゃんが想像しているのとは違っている。そういう作業も嫌いではくてどっちかというと楽しいのだけど、今、実際にデザインの勉強を生かした仕事をしているかおりちゃんには見せたくないと思っている自分に気がついていた。」
ゆっくり、ゆっくりと日常に馴染んでいく中で、彼女が見せるこういう視線が魅力的だ。これは新入社員だった頃の僕が見た風景を思い出させてくれるような気がした。社内報の慶弔欄の情報がファックスで送られてくるこんなシーン。
「そこには画数の多い名字の人のお母さんが先週98歳で亡くなった、その葬儀の場所や日時のお知らせが書いてあった。長生きやったんやなと思って窓の外を見上げると、八月の午前中のとても深い青色の空があって、外はほんの何分かでも出たくない暑さななのに、カーディガンを羽織っても寒いときもある事務所の中にいると、それは冷たい水を思い出すようなほんとうに深くて涼しい色だった。」
リストラ、営業会議、そういった日常が淡々と流れていく。そういった男の社会である企業の中で、一定の諦念を持ちながら、たんたんとまじめに生きていくOLたちのフルタイムライフが、リアルで、とてもいとおしい。そして、皆が誰かのために働いている企業というものが切なく、苦しく、しかし、かけがえのないものに思えた。
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新人OLの毎日が描かれていて、働きだした頃が懐かしくなった。
淡々と毎日が描かれているように思うが、だんだんと周りの人物の人柄がわかってきたり、恋につながりそうでそうならなくてあーあ、という気持ちなど細かい描写で読者の共感や感心を得て、つなぎ止めてる気がする。
軽い気持ちで読みたい時にオススメの著者。
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社会人1年目の女の子が主人公の物語。
仕事のこととか自分の人生のこととか考えながら生活している主人公を見てると、きっとみんなこうなんだろうなと思ってしまう。
みんないろいろ考えながら生きていて、前向きになったり悲しくなったりするのだと思う。
単行本で1度読んで文庫本で2回目だけど、1回目以上にすっと入ってきた。
1回目に読んだとき自分自身社会人1年目の5月、今は2年目の6月。気持ちの変化があったってことなんだと思う。
P200の文がとても前向きで好きだ。あと解説が明快で共感できた。
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仕事の種類はいろいろあるけれど、きっと普通ってこんなかんじなんだろうな。桜井さんが辞めるって言ったとき、残念だなって悲しくなったよ。