紙の本
物語はつづく
2011/04/21 08:14
26人中、24人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
小川洋子さんの『人質の朗読会』は海外でテロ事件に巻き込まれた人たちがそれぞれの人生の風景を語り合うという構成になっています。そのテーマなり場面はまったく違うのですが、人にはそれぞれ語るべき物語があるのだと深く心に沁みこんでいく一冊でした。
特に東日本大震災で犠牲となったたくさんの人々のことを思うと、高齢者も若い人もあるいは子供たちでさえ、それぞれ彼らの物語があっただろうと思います。
それは多分年齢に関係なく、物語はあったはずです。犠牲になられたたくさんの命と同じ数だけの物語。
それを私たちは想像するしかないのが悔しく、そして悲しい。
本書は、小川洋子さんと臨床心理学者の河合隼雄さんとの対談集ですが、そのテーマが書名にあるように「生きるとは、自分の物語をつくること」です。
ちょうど小川さんのベストセラー『博士の愛した数式』が映画化された後の対談ということで、小川さんの作品をベースに話が進められていきます。
その対談のなかで小川さんはこんなことを話しています。「あなたも死ぬ、私も死ぬ、ということを日々共有していられれば、お互いが尊重しあえる」と。
死ぬということは物語の終わりでもあります。それがどれほど短いものであっても、あるいは未完であっても、絶対に物語があります。
小川さんの発言は、人にはそれぞれに物語があるということを共有していられたら、互いに尊重しあえると読み替えてもいいのではないでしょうか。
対談の相手でもあった河合隼雄さんが亡くなられたので、この文庫版には小川さんの「少し長すぎるあとがき」が書き下ろしで収録されています。
その中で小川さんは「生きるとは、自分にふさわしい、自分の物語を作り上げてゆくことに他ならない」と書いています。
自分の物語を作り上げてゆくことは、亡くなった人たちの物語を読むということにもつながってゆく。
物語は物語へと続くのです。
◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でお読みいただけます。
紙の本
大事にしたい一冊
2015/12/28 00:30
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けy - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は小川洋子も、河合隼雄の名前を聞いたことすらなかった。
しかし、読み始めてすぐにこの二人の頭の良さに唸った。
そして、対談の中でどんな考え方を持つ人達なのかが分かってくると、両者の著書に触れたいと思わせられた。
紙の本
まさにタイトル通りの内容です
2016/12/21 10:53
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投稿者:ヴィクトリア - この投稿者のレビュー一覧を見る
小川さんと河合さんの共著だけに、飛び付きました。この書のタイトル「生きるとは、自分の物語をつくること」の意味に深く感銘を受けました。どんな時代においても、自分が生きている世界(小さな社会)で生きづらいと直面する事は必ずあります。他の人に相談できないこともあり、結局は自分自身で解決してゆかなくてはいけない。そんな時、この本を手にしていれば心が軽くなると思います。悩み多き若い人にはもちろん、中高年の方にもお薦めの一冊です。お二人の洞察力にはいつも驚きます。
紙の本
いまを生きる
2016/01/23 07:40
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投稿者:ながつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんなに短い本なのに、大切な気づきがたくさん詰まっています。
腹の立つことがあっても、明日には会えなくなる可能性があることを思えば
相手を許して会っている時間を大切にできる…といった具合です。
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良いにつけ悪いにつけ、必然になる偶然を呼び寄せられていく。
意図をしないと何もかわらないが、意図をして何かしても、思ったようには進まない。しかし、考え尽くした挙句に直感で選んだものには、選んだ当人が気づこうと気づかまいと、思いがけないつながりや次への道しるべとなるヒントがたくさん詰まっている。
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「物語に託せば、言葉にできない混沌を言葉にする、という不条理が可能になる。生きるとは、自分にふさわしい、自分の物語を作りあげてゆくことに他ならない。」
物凄く良かったなぁ。
前、よしもとさんと河合さんの対談は、ダメだったのだけれど、
今回のこの対談は非常に有意義のものに感じた。
人生とは、物語であるという考え方は、
私も持っていたのもので、その点でもとても共感させられたし、
どうしてそう思うのか、という点についてまでは、
私自身まだ考えていた部分もあったからとても有益だった。
そして、もう河合先生がこの世界にいないというのも、
とても残念な気にさせてくれる内容だった。
小川さんの河合先生に対する文章が、とても良かった。
どうしても、対談では、話がそれて行ってしまうものの、
最後の、小川さんのパートは物凄く読み応えがあり、
小川さんの重いがダイレクトに伝わってきて胸がいっぱいになったのだった。
いい本でした。
【4/5読了・初読・私の本】
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「なぜ死んだか」と問われ、「出血多量です」と答えても無意味なのである。その恐怖や悲しみを受け入れるために、物語が必要になってくる。死に続く生、無の中の有を思い描くこと、つまり物語ことによってようやく、死の存在と折り合いをつけられる。物語を持つことによって初めて人間は、身体と精神、下界と内界、意識と無意識とを結びつけ、自分を一つに統合できる。人間は表層の悩みによって、深層世界に落ち込んでいる悩みを感じないようにして生きている。表面的な部分は理性によって強化できるが、内面の深いところにある混沌は論理的な言葉では表現できない。それを表出させ、表層の意識とつなげて心を一つの全体とし、更に他人ともつながっていく、そのために必要なのが物語である。物語に託せば、言葉にできない混沌を言葉にする、という不条理が可能になる。生きるとは、自分にふさわしい、自分の物語を作り上げていくことに他ならない
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生きるとは、自分の物語をつくること。
はっとさせられるタイトルに導かれて読んでみた河合隼雄さんと小川洋子さんの対談集。
一人ひとりが自分の物語を紡いでいく。それは小説家が小説を書くことに似ている。
たったひとつの自分の物語。
ころころと上手い方向に転がってハッピーエンドになればいいけれど、そんなわけにはいかないわけで。
どうしても先に進めないことや、まずい展開に陥ることも数知れず。
河合さんは、臨床心理士の仕事はそういう人に、自分なりの物語を作れるように手助けをすることだといい、カウンセリングの秘密を教えてくる。
その道の第一人者の秘伝の技。。。なるほどなあ、すごい、とうならされる。
でも、これはすごい、もっと、もっと、と読み進めていたのだけど、対談は突然に終わってしまった。河合さんの死によって。
もっと、もっと秘密を教えてほしかった。
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小川洋子・河合隼雄対談集。
言葉の端々から、河合さんの人柄が伝わってきます。
お二人の対談、もっともっと読みたかったです。
「道に物なんか落ちていないと思ってる人は、前ばっかり見て歩いているから、いい物がいっぱい落ちとっても拾えないわけでしょ。ところが、落ちてるかもわからんと思って歩いてる人は、見つけるわけですね」
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河合隼雄先生を舐めてましたすみません。
何このお方、素晴らしすぎる。
なんでもっと早くに読まなかったんだろう。
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2014年52冊目。
『博士の愛した数式』著者の小川洋子さんと、ユング派心理学や箱庭療法の日本での第一人者・故河合隼雄さんの対談。
人間の深層に降りていくことの意味を分かっている人同士で、絡み合いが絶妙。
「人は生きていくうえで難しい現実をどうやって受け入れていくかということに直面した時に、それをありのままの形では到底受け入れがたいので、自分の心の形に合うように、その人なりに現実を物語化して記憶にしていくという作業を、必ずやっていると思うんです。」
物語は過去に対してだけ効果のあるものではないと思う。
人間誰しもにある暴力性を、物語を書く・読む中で実現させることで、現実世界をやり過ごすことができる、そういう未来性もあるのだと。
「物語」、この言葉をまだまだ追求していきたい。
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臨床心理学者の河合隼雄と作家の小川洋子の対談集。生きるということは自分の物語を作ること。物語が持つ力。読んでいて思うことは多く溢れそうなんだけれど、言葉に言い表すのが難しい。もっと何度も読んで、自分の中できちんと咀嚼したい。そう思わされました。
作家として物語を紡ぐことに、どういう意味があるのか。それを問われていましたが、それは読み手としてどう物語に向かうのかという問題でもあるでしょう。物語というものが必要とされる意味、それに向かい合いたい。
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やわらかくて温かい対談集。のぞみとひかりの小話がすき。お二人とも、本当に魅力的です。生きるためには物語が必要なんだよ。
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小川洋子、村上春樹といってること一緒すぎるけども大丈夫?って思っちゃった。コピーとは言わないけれども、それに準ずるような、なんか聞き覚えのあるかんじで、でも一段低くて、なんだか心配になってしまった。心の底からそう思っているのだとは思うけれども、本当にそのスタンスで大丈夫?無理してない?ってかんじ。特に人間にとっての物語の存在についての意見が。なんだか読むにつけ、本当に村上春樹のオリジナリティーみたいなものをひしひしと感じてしまう。対談自体はとても魅力的で、最近わたしが忘れ去っていたあらゆる物事、要素を思い起こさせてゆさぶられる、ああ忘れていた、こういうかんじだったと懐かしませる、そんな感じだった。
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河合隼雄と小川洋子の対談。
ブクログで「生きざまが描かれている本でのお勧め」を質問して教えてもらった中の一冊です。
夫も昔読んだことがあるらしい。
中でも箱庭療法の話が印象的でした。
箱庭の底に砂が敷き詰めてあるとは知らなかったんですが、それでぴんときたことがありました。
大学時代の心理学の授業で箱庭のビデオを見たんです。
そのときに虐待を受けた子のカウンセリング前と後の箱庭が紹介されてました。
その子がカウンセリング前に作った箱庭は、動物たちを戦わせていたんです。
そのときカサカサ言ってたのが砂だったのか、と10年以上前の授業のことを思い出しました。
ちなみにカウンセリングを受けた後は、箱庭の中で動物を遊ばせていました。
そんなことを思い出した本でした。
河合さんのカウンセリングをするときの姿勢、小川さんの小説が書けなくなった時の話。
共通する思いが繋がっていて深かったです。
箱庭の本、読んでみようかな。