蒼龍
著者 山本一力 (著)
大人気時代小説家・山本一力の傑作中篇集。途方もない借金を背負う若夫婦が、起死回生を狙って茶碗の新柄の公募に挑む。その顛末は――。貧しい暮らしの中で追いかける大きな夢。武家...
蒼龍
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
商品説明
大人気時代小説家・山本一力の傑作中篇集。途方もない借金を背負う若夫婦が、起死回生を狙って茶碗の新柄の公募に挑む。その顛末は――。貧しい暮らしの中で追いかける大きな夢。武家社会の心意気、商人の気概。誠を尽くせば、身分の差を越えて人は分かりあうことができる。生きる力と明日への希望を与えてくれる感動作。「オール讀物」新人賞を受賞しデビューのきっかけとなった表題作は、著者自身の新人賞に応募していた当時の心情が色濃く反映され、胸に迫る。その他、『あかね空』以降に執筆した四作品を併録。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
天晴れ。
2005/09/08 10:55
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
天が晴れる、と書いてあっぱれ。日本語っていいなぁ、といつも思わされる山本作品。5作の短編からなる本作中の一作「長い串」の中で使われる「天晴れ」。これこそ山本作品を一言で表した言葉かもしれない。
「のぼりうなぎ」と「節別れ」は簡単に言うと商いの話。これは現代の社長達にぜひ読んでもらいたい。商売に必要な物、それは工夫であって安易な値下げではない。業界の隆盛を考えるが故の行動は時に他の人間には奇異に映るかもしれない。でもいつか、人の心には響く物だと思うのである。客を選んで「売ってやる」といった大店の態度。これではろくな商売にはならない。
そんな大店呉服店に、指物職人弥助が雇われる。勝手の全く違う業界に、弥助は戸惑い、不当な嫌がらせにも会う。が、弥助はいつも客を思い仕事をしてきた。客が満足し、心から喜んでもらえる事を一番に指物を誂えてきた。仕事が変わってもその心意気を変える事はしない。自分に何が出来るのか悩んだ末に、弥助が取った行動とは・・・・?
「菜の花かんざし」はせつない。武家に生まれたが故に、命を捨てて雪がなければならない汚名。しかしそれが我が子の命まで奪ってしまうとなった時、父親はどう思い、母親はどう思うのか。家名を取るか、子供の命を取るか・・・悩んだ末のあまりに切ない決断。
「蒼龍」は山本作品には珍しい一人称の語り口で物語が進む。不当な借金を抱えてしまった大工夫婦弥太郎とおしの。何年かかっても、返せる見通しがつかない。そこで応募した大店の「茶碗の新柄募集」最終選考まで残るものの、残念ながらもれてしまう。翌年、さらに翌年と挑戦していく中で弥太郎とおしのが気が付く事、見つける物。本当の幸せ、
その意味。どの作品も奥深く、しんみりと心に染み込んでくる。山本一力の原点とも言える本作、粗い所も見えるし、作者の思考錯誤も感じられる。でも確かに、作者の一本筋の通った魂が感じられるし、これから後生み出される名作たちの息吹を感じる事が出来る一作だった。