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角田覚治(かくたかくじ)
著者 松田十刻
昭和の日本海軍で、山口多聞と並び称される闘将・角田覚治。その「見敵必戦」の信念が遺憾なく発揮されたのは、ミッドウェーの敗北から四カ月後に起こった南太平洋海戦である。機動部...
角田覚治(かくたかくじ)
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角田覚治 「見敵必戦」を貫いた闘将 (PHP文庫)
商品説明
昭和の日本海軍で、山口多聞と並び称される闘将・角田覚治。その「見敵必戦」の信念が遺憾なく発揮されたのは、ミッドウェーの敗北から四カ月後に起こった南太平洋海戦である。機動部隊がぶつかり合う決戦の最中、第二航空戦隊司令官の角田は一時的に指揮権を譲られると、果敢に反復攻撃を試みて勝利をつかみとった。責務を誠実に担い、部下思いでも知られた提督の生涯を描いた力作。
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紙の本
第一線機動部隊指揮官にしたかった男
2009/07/21 14:49
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:としりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
1941年12月、日本海軍航空部隊がハワイ真珠湾を奇襲攻撃し、日米戦が始まった。南雲忠一司令長官率いる正規空母6隻を基幹とした機動部隊によるものだった。
しかし、司令長官の慎重すぎる性格を反映してか、せっかく第一撃に成功しながら反復攻撃することなく引き返してしまい、中途半端な戦果で終わったのは残念だった。
一方、東南アジア方面を担当する南遣艦隊の支隊である第四航空戦隊は、開戦劈頭、フィリピン、マレー、インド洋で活躍する。軽空母「龍醸」と駆逐艦1隻のみという極めて貧弱な攻撃力ながら、積極果敢な反復攻撃で英国艦隊などに打撃を与えた。この第四航空戦隊司令官が角田覚治である。
その後、特設空母「隼鷹」が加わり、アリューシャン作戦に従事する。
「龍醸」喪失後の南太平洋海戦では、南雲機動部隊の「翔鶴」「瑞鳳」戦線離脱後、角田が航空戦の指揮を執り、「隼鷹」を駆使して敵艦隊に反復攻撃、米空母「ホーネット」を葬った。非常に限られた航空戦力を最大限に生かす積極果敢な作戦であった。
開戦前、海軍兵学校教頭兼監事長時代の角田覚治のエピソードには興味深いものがある。
生徒たちに航空の重要性を力説する源田実の講話のあと、バランス感覚あるコメントをする角田覚治。決して航空を軽視するわけでない、角田のバランス感覚を示すものだろう。
こうしたバランス感覚は、上に立つ者にとって極めて重要な要素である。
また、本書には随所に兵器・装備について細部に渡る解説がされている。
例えば、雷撃と水平爆撃を兼ねる九七艦攻について、魚雷発射は操縦士が行うが、爆撃は偵察員が行う。これなどは、映画「トラトラトラ!」などを注意深く観ていれば判ることだが、親切に説明してくれていると有難いところである。
さらに、日本軍の急降下爆撃(九九艦爆)では250キロ爆弾を使用するのに対して、米軍の急降下爆撃は544キロ爆弾だという。当然、米軍の方が命中時の破壊力が大きいわけだ。
評者が子どもの頃、太平洋戦史を扱ったテレビ・アニメ「決断」が民放で放送されていた。
アニメの中で、米軍の雷撃機は機体の内部にすっぽりと魚雷を格納して飛行し、機体下部を開いて魚雷を発射していた。見るからにスマートであり、大きな魚雷を機体の下に吊したまま飛行する日本軍の雷撃機(九七艦攻)が不格好に思えたものだった。
このスマートな米軍雷撃機(グラマンTBFアベンジャー)は南太平洋海戦の頃から旧型に替わり本格運用されたという。
確かに、それより前のミッドウェー海戦での米軍雷撃機は、飛行速度が遅くことごとく零戦や対空砲の餌食になっていたのだから、納得である。
さて、本題に戻って、あらためて旧日本軍の硬直した人事が残念である。頑なな年功序列式とでも言おうか。
慎重すぎる性格から積極果敢な攻撃に向かない南雲忠一を、最も攻撃力を有する第一線機動部隊の指揮官として使い続けた。結果、攻撃精神旺盛な角田覚治や山口多聞を、その能力を十分生かし切らないままで終わらせたのである。
ただ、決して南雲忠一が指揮官として失格だというのではない。人は誰でも適性があり、南雲は南雲でもっと適した働き場があったはずである。