商品説明
もうどこにも、逃れる場所はない。2002年版「このミステリーがすごい!」第2位、第4回大藪春彦賞受賞。九野薫、36歳。本庁勤務を経て、現在警部補として所轄勤務。7年前に最愛の妻を事故でなくして以来、義母を心の支えとしている。不眠。同僚花村の素行調査を担当し、逆恨みされる。放火事件では、経理課長及川に疑念を抱く。わずかな契機で変貌していく人間たちを絶妙の筆致で描きあげる犯罪小説の白眉。(講談社文庫)
著者紹介
奥田英朗 (著)
- 略歴
- 1959年岐阜県生まれ。作家。「空中ブランコ」で直木賞、「家日和」で柴田錬三郎賞、「オリンピックの身代金」で吉川英治文学賞を受賞。
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紙の本
九野の心が、あまりにも切ない
2018/05/29 22:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
奥田英朗の『邪魔』(上・下) を、ほぼ一気に読みました。
楽しくもないし、ためにもならないのだけど、面白くてやめられなくなる、そういう本です。さすが奥田英朗。
結末は、やっぱり、どうしようもない終わり方になってしまうのですが、この話は主人公のひとり九野の心が、あまりにも切ないのです。ネタバレになるので、説明はあまりできないのですが。
紙の本
入り乱れる人々の想い、痛快なストーリー展開がとても面白い!!
2007/07/27 05:40
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけくん - この投稿者のレビュー一覧を見る
様々な人物が登場し、各章毎にそれぞれの登場人物の視点からの切り口であり、前回読んだ「真夜中のマーチ」と同じ手法やな、と思いました。恐らくこちらの「邪魔」の方が先なんだろうね。そして「邪魔」の方は計44章と、壮大なストーリー展開であって、章毎の時間経過がラップしている章もあり、実に面白い展開であった。
登場する人物達にはそれぞれの環境があり、そろぞれに共感しうる点や以外な点がある。それぞれに人間くさくていい!長編であったが、飽きるどころかどんどん引き込まれていくのが判った。
ストーリーの展開も意外性があり、及川恭子の変貌には目を見張るものがある。主婦には命懸けで守るものがあり、そのためならこの様な変貌をするかもしれない、と妙に納得してしまった。
本書を読んで小説デビュー作「ウランバーナ森」なども読みたくなりました!!!
電子書籍
現実から目を背け続けた結果
2015/12/13 11:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぐぐぅ - この投稿者のレビュー一覧を見る
何とも言えない読了感。誰も死ななかった点は救いがあるのかもしれないが。「無理」と同様、数多くの追い込まれた人びとが終盤に絡み合って行くところ、何とかそれを収束させて行く展開は奥田英朗らしくてうまい。見たくない現実から目を背ける人の性、組織の醜さが満載。もう少しどこかに明るい要素も欲しいところだけど。
紙の本
平凡な日常生活を守るために戦ったある主婦の物語(というと変かな?)
2004/04/27 23:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぶんこ虫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
平凡な日常生活が、あるとき突然あっさりと崩れていく。その渦の中で、平凡な主婦が、平凡な日常をつなぎとめようとして必死に戦いはじめる。
ある放火事件が夫の仕業なのではないか、という疑惑。警察の監視、マスコミの取材、報道。次第に追い詰められていく中、夫への疑惑を忘れようとのめりこんだ市民運動にも裏切られ、自分の居場所までも失い…。
困惑と怒りの中で、滑稽なほど見事に階段を踏み外していく主婦の姿が、奇妙に可笑しくて生々しい。この主婦の支離滅裂ともいえる奮闘をひとつの軸に、もうひとつは警察内部の不正や争いを描いて、どこか壊れている二人の刑事の行動を追っていく。
上巻は、人物や事件が雑然と入り乱れて疾走している感があり、いくぶん不安定な読み心地だったが、下巻に仕掛けられた隠し玉でいっぺんに目が覚めた。
どこでどう間違ったのか、刑事も放火犯も主婦も、あれよあれよという間に「こんなはずじゃなかった」道へ踏み込んでいく。その過程が、過激なくせにリアルで、滑稽ですらある。
結局、破滅への道をひた走ってしまった主婦が、最後に選んだ逃走手段が自転車だった、なんて、もう笑うしかないくらい切なくて痛々しい。彼女は結局、逃げきったんだろうか。そんなことはありえないと思いつつ、描かれなかった彼女のその後をあれこれ想像してしまう。
紙の本
一体これは何を書きたかったのかな?
2004/09/30 05:31
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なかちん - この投稿者のレビュー一覧を見る
書評タイトルにも書いたのですが、「一体これは何を書きたかったのか?」というのが、この本を読んだ最初の感想でした。
「イン・ザ・プール」、「空中ブランコ」がとても面白かったので、
その路線を突っ走ってくれることを期待していたのですが、
ちょっとずれちゃったかな。
わざわざ上下巻にして長編小説に仕上げることもないのでは?と
思ってしまいました。
普通の家庭が、事件をきっかけにガタガタと崩れていく様子は
2時間ドラマ的だなぁと思ってしまいました。
紙の本
平凡に生きることのむずかしさを痛感。
2005/10/08 14:17
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作は奥田氏の初期の代表作と言える作品で大藪春彦賞を受賞、2002年度このミスの年間ベスト2にもランクインされている。
奥田氏の第2作かつ出世作である『最悪』と同様の犯罪小説であるが、本作には『最悪』のようなコミカルさや展開のスピード感はない。
どちらかと言えばシリアスかつ重厚な社会派要素的な作品に仕上がっていて、本作以降に奥田氏が進んだ一連の多彩な作品群とは一線を画するのである。
奥田氏の人物描写の的確さ(巧みさと言ったほうがいいのかもしれない)は定評のあるところであるが、本作における及川夫婦の描写は特に秀でている。
誰しもが持っているいる<弱さ>を見事に描写。
夫である及川茂則。
本作においては“だらしない人間”の象徴として描かれている。
もちろん犯罪に弁解の余地はないのであるが、共感とまでは言わないが少なくとも同情された方も多いのかもしれない。
彼が本作において重要な役割を演じていることは自明の理である。
彼の終始一貫した“寡黙さ”により、読者が身につまされて本を閉じるのである。
一方の妻である恭子、彼女の変貌振りは凄まじい。
彼女が茂則と結婚したことは不運だったのであろうか?
大半の読者はそう感じたことであろう。
本作において彼女の心の中が暴走し脱落していく姿は他人事ではないのである。
たとえば市民運動に必死に活動しているシーン、ラストの自転車での逃走など。
読者の脳裏に焼き付くのである。
まさに“追いつめられる”とは彼女のような人物を言うのだなと実感。
とりわけ子供のいる主婦の方が読まれたらその切なさに共感できることであろう。
残された彼女の子供達、不運かもしれないが決して不幸にはなってもらいたくないと切望する。
本作の少し難点をあげれば、もう一方の主人公である九野刑事の心の動きが及川恭子ほど巧みに描けてなかったような気がする。
犯人を“追いつめている”サイドの人間である九野刑事が実は“追いつめられている”という設定は面白いのであるが・・・
奥田氏に対する期待の大きさの表れだと思って斟酌してほしい。
“人生はもはや綺麗事では済まされない”
本書を読んで得た大きな教訓である。
活字中毒日記
紙の本
切ない・・・
2018/07/18 22:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ROVA - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻を読んだ時は気に入らなかった九野ですが、
下巻を読んだ今ではもう抱き締めたいくらいです・・・
恭子の心情描写ももう切なくて切なくて・・・
最後もうちょっと、もうちょっとお願いします、って気分になります。
救いようは、あまり無いです。