- 販売開始日: 2013/09/19
- 出版社: 秋田書店
- ISBN:978-4-253-09119-0
“古代幻想ロマン”シリーズ 2 夜の虹
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神話とロマンに満ちた日本古代の終焉を描く傑作
2024/01/17 12:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Solaris1 - この投稿者のレビュー一覧を見る
長岡良子の古代幻想ロマンシリーズは、大正時代シリーズと並んで長岡良子がもっとも油の乗り切った時期の傑作だと思う。中大兄皇子の時代から藤原仲麻呂までの時代を描くこの連作短編シリーズは、天智を理想とする藤原鎌足、田辺大隅らの流れが、天智天皇没後権力を握った大海人皇子(天武)の時代、裏面に追いやられ、天武‐大友皇子及び持統以外の側室の子が勢力を持った時代に、密かに暗躍し、陰謀を巡らし、ついには藤原不二等という傑物を得て、再び天智系が権力を掌握して模様を、個人の夢や希望を容赦なく叩き潰す政治の非常な救い様のない殺伐とした流れを、諦念と詩情とが混在する筆致で華麗に描いた歴史絵巻といえる。
この大河物語の主軸はそうした様々な登場人物達の運命を描いた傑作であることは勿論だが、当事の歴史のもう一つの流れ、集権的国家が誕生し、政府の統治から阻害されてゆく様々な異形の者たちの運命や桎梏についても描かれている。不二等らは律令の制定に伴い、人民を完全に国家の管理下に取り込む政策を推し進める。これに反抗するのは、異形の者達、山人、遊民、そして役の小角に代表される超常力者達である。彼らは国家と正面切って闘争をするような勢力は持たない。せいぜい陰謀に荷担し、歴史の表面に顔をだすことなく、流れの中に埋没し、不二等らの推し進める律令体制に収まりきらす、どこか遠くへひっそりと身を隠して行く。
本作「夜の虹」は、この大河物語の各テーマが集約された、連作物語のピークともいうべき場所を占める。若い時の希望や夢を押しつぶされ、骨の髄までマキャベリストとなって次々と策謀を巡らす不二等と、消え行く異形の民たちの対立。新しい時代の体制の元、締め出されたのは彼らだけではない。それは天智時代の再現を望みながら、実際には法と鉄と血で塗り固められた国家を作り上げる結果となってしまった彼ら自体の目指した天智時代というユートピアをも締め出すことになったのである。天智時代とは異形のものも含んだ、明暗併せ持つ一つのユートピアであった。作者はそれを「夜の虹」という現象に象徴させているかのようだ。ラスト不二等は語る。
「夜の虹か。私には見えん。見る必要もないものだ」
異形のもの、超常力とともにユートピアもまた現実の国家運営には必要が無い。こうして神話とロマンに満ちた日本の古代は終わる。
ロマンや悲劇という娯楽要素とともに、フーコーの「監獄の誕生」をも思わせる奥の深い作品「夜の虹」。歴史マンガの傑作である。
こちらはファンタジー色強め
2015/11/21 16:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pope - この投稿者のレビュー一覧を見る
首とまゆりの話はファンタジー色強め。
神と人間の間の子で、神に近い存在の二人に行基が絡んできます。
高市皇子と但馬皇女、穂積皇子などのエピソードもあります。
