齢八十近くになってもこれほどの作品を物せるとは
2021/11/09 23:59
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投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
新聞連載中、一日も欠かさずに読んだ
初めての小説が単行本化されたものです。
豊穣な、という言葉を冠してみたくなるような
語彙と文体とを縦横無尽に駆使して、
昭和後期から平成の時代を生きる
異能というか「異貌」の主人公の半生を
描いた作品です。
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
失われた言葉を使って、身体の一部を奪われた少年の成長を描くのが耽美的です。オイルショックから3・11までの、社会的な背景も巧みに織り込まれていました。
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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
去勢されてしまった男の子のその後。リアリティーはないが、性犯罪者を描くことで人間の愛憎が深くえぐられる。性器を切られてしまった子供も美しく育って、様々な問題につながる訳だが、筒井氏の文章もまた、美しい。さすがにプロ。
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最後の長編になってしまうのかぁ。先鋭と豊穣を併せ持つ、こんな作品を書いておいて、これで終わりとは切なすぎる。筒井さんの新作を読む歓びをもっと味わいたいのだ。
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古語や枕詞を現代文に上手くミックスさせて、面白い味わいは出てると思う。昔の日本語は美しかったんだなあ。こういう機会に文章にしておかないと、どんどん失われていくと思うので、実験としてはまあ良かったんじゃないですか。ただ、ストーリーがねえ・・・。新聞連載時に途中まで読んでたので、結末が知りたくて借りたけど、物語としてはどーでもいい感じ。そもそも一段しかない新聞小説の1/5が古語の注釈だったし、息子の挿絵もわけわかんないCT画像みたいな感じでひどかった。親子でそこそこ儲けましたねw
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読み進むにつれて次第に純化され、宗教的になっていく流れは『パプリカ』『旅のラゴス』と同様。
ただ、『聖痕』のタイトル通り、宗教的な雰囲気は以前の作品よりもさらに濃く感じられる。
物語の始め、主人公の少年は、性という原動力から文字通り切り離された存在となってしまう。彼の興味はもう一方の欲求「食」へと向かってゆく。
中盤まで付きまとう禍々しさが、少年の成長とともに浄められ最後には昇華されている、そんな物語。
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実験的な意味での作風だったようではあるが、注釈つきの古語、漢語の多用され、非常に読みにくい。
幼児期に変質者の手で性器を切り取られた美貌の男性が、その聡明さと類まれな味覚で、自身を取り巻く人々をも幸せにしていくというお話。
なんとなく読んだけど、特に感想はない。途中早く読み終わらないかなと思った。最後まで何の感動も面白味も無し。
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2013/06/26-2013/07/10
これほど緊張感を持って読み終えた本も少ない。会話文を、かぎかっこ 無しで書き表すという実験的な記述法が大成功している。
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新聞連載されていた、筒井康隆の最新長編小説。
古語辞典を片手に書かれたという文章は膨大な注釈が併記されており、意味の分からない言葉はその注釈を読んで本文に戻る…という行ったり来たりがうっとおしかったが、筒井康隆が元来持つポップネスが弾けており、非常に読みやすい。
一度注釈を無視して一気に読み込めたらさぞ気持ち良い読書体験になるのでは、と思うので再読予定。
肝心の物語は一人の受難を負った美しい男とその家族が織りなす一代記でバブル〜東北大震災までの後半のくだりが大変興味深く読めた。
ただ枕詞や古語を駆使した実験性が高い文章で、物語に重きを置かれていないため、好き嫌いは分かれるかもしれない。
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筒井康隆の作品を久しぶりに読んだ。学生時代には、むさぼるように読んだ記憶がある。そのときは、軽快で大笑いした印象だったが、この本は漢字や枕詞が難しく、読み始めは進まなかった。読み慣れるにつれ、面白くなってきたが、「あそこ」を切り取られると欲がなくなるのだろうかと思いながらも最後のシーンは何か期待して読み進んだ。
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改行がない小説。会話にカギカッコがない本。枕詞を多用してなんかいい日本語が続く。
食事、に対しての警告もあるし、やっぱり筒井さんは実験的なんですかねー。久々に俗物図鑑読みたくなってきた。
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読み始めは根競べだったが、三分の一程まで来ると文章にも慣れ、俄然面白くなってきた。たまには、筒井康隆もいいものだ。
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男性器の喪失→男性的欲望の喪失→食への求道という設定が面白かった。ただ暴力的、性描写の生々しく魅力な表現と比べる食の描写のそれはややあっさりしていたかと思う。主人公貴夫の食へのこだわりをもっと見たかった。最後の震災の涙を流す件は貴夫の感情がストレートに出てるのが意外で良かった。
少し長く冗長な気がした。もっとコンパクトでもいいと思った。
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古語を並べて小説表現に用いるというアイディアを思いつきはしても実際に実現できる作家はそうはいないだろう。最初は戸惑いがあったが読み進めるうちに古語の出現が楽しくなる、連続で現れると思わず拍手をしたくなる、JAZZのアドリブの難易度の高いフレーズを待ち望むのと同じような楽しみ方ができる。選りすぐった古語を集めて作った小説の題材の一つが選りすぐられた素材を集めて作られる料理であるのもむベなるかなといったところか。近年の日本社会を背景にした美と欠損を抱えた主人公の半生に島田雅彦の作品と似た印象を持った。
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筒井康隆はいつだってチャレンジング。古語散りばめの文体、聖俗混合、昇華、新しいキャラクターの造形。
狂気への傾斜もすんでのとこで今回は抑制され、それがまた寸止め的効果。
美味礼讃。何かを失えば何かを得る。
株の高値売り抜けがうらやましい、と俗なことに反応してしまう自分の俗性を自覚する。
反応する箇所によって、己の欲望や心の傾向が分かってしまう恐ろしさ。
参りました。