カクテルピアノって、なんぞや
2019/01/28 16:38
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
美しいピアノの演奏によって美味しいカクテルが出来上がるという「カクテルピアノ」やスケート靴の底が逃げ出したので、濃縮肥料を注いで靴底の皮を復元するとか最初から飛ばすヴィアンに初めは「何なんだこれは、どういう意味なのか、何かの暗喩なのか」と面を喰らって読み進めなくって立ち止まっていたのだが、途中から何の意味もないのだ、作者のおふざけを楽しめばいいだけなのだとわかってしますと、たちまちおもしろくなりサクサクと読み進むことができた。愛するクロエは体の中に蓮の花が咲く奇病でこの世を去る、友人シックも悲しい最後を遂げることになるのだが後味はさほど悪くない。作者のおふざけのおかげだ
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投稿者:ぽんぽこ仮面 - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画化された「ムード・インディゴ」もよかったけど原作のこちらもとてもよかったです。シュールな世界観の中に狂おしいまでのラヴストーリーがしっかりとあって、他に類を見ない独特の小説です。
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書ではコランとクロエ、シックとアリーゼ、ニコラとイジスの三者三様の恋愛が描かれていますが、華やかな享楽の日々から一転してクロエが肺を患った瞬間から世界が一変します。
結婚と経済力の関係や、趣味に打ち込むあまり妻を愛せない夫など、現代にも通ずることが強烈にファンタジックな世界観の中で表現されており、かなりパンチの強い作品でした。
ただの恋愛小説ではありません。栄枯盛衰を地で行く転落っぷりと、それをファンタジックにまとめあげる作者の力量に驚きました。
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僕たちの生きる世界とはちょっと違い、まるで夢の中での出来事のような非現実的な世界設定に最初はちょっと戸惑うが、物語全体に漂う、青春とその喪失感を描くのにはこれしかないという世界が素晴らしくも悲しい。物語は(お金とか仕事とか)どんどん現実の重みに潰されていくのだが、それでも非現実感は最後の最後まで強調される。そしてそれはあまりにリアルな現実の僕たちみたいだ。
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愛に全てを注ぎ込む二人の男のその行く末。
一人は一人の女を愛した。女が元気な時には彼女を楽しませる為に、病気を得てからは治療の為に持てるものを全てを注ぎ込んだ。
もう一人は思想を愛した。そしてその思想を生み出す思想家を絶対視するあまり、彼に関するもの全てを蒐集せずにいられなくなり、自分を愛してくれる女も捨て、破滅へと向かって一直線に進んでいく。
淡々と進行していく物語。美しい黄昏のような小説。
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表題どおり、この小説はなによりも美しく、なによりも儚いもの、つまり「きれいな女の子との恋愛」と「デューク・エリントンの音楽」に捧げられている。
ひさしぶりに読み直して感じたのは、精緻に描かれたコントラストの妙。物語は、街から色彩の消える冬に始まり生命が躍動する新緑の季節に終わるのだが、登場人物たちの世界はそれとは反対に、徐々に色を、そして音楽を失ってゆく。彼らはいってみれば、彼らの住む世界との「同期」に失敗したのだ。その残酷さと不条理さ……。
破天荒なファンタジーのような顔をもつこの小説をはたして「読める」かどうかは、ボリス・ヴィアンの「感性」にどこまで肉薄できるかにかかっているような気もするが、そのいちばんの方策はまず、解説で訳者が言うように「奇天烈さをごくりと飲み込」んで、そこに繰り広げられる「いっさいを受け入れる素直さ」をもつことだろう。
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日々の泡を高校生のときに読んで、いつかまた読み直したいと思っていた時にたまたま新訳を見つけて衝動買い。私の理解力が上がったこともあるかもしれないけど、日々の泡よりも読みやすかったし楽しかった。そしてやっぱりすごかった。ボリス・ヴィアンの才能を感じた。こんなに切なくて辛い話だったかと、読み直してみて驚きました。解説も訳者あとがきみたいなのも良かった。
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幻想的でありながらも淡々の物語が進んでいく。
お伽話のような感覚でありながら、音楽描写も表現豊かに描かれており、
すごく切ない大人の童話。
肺の中に睡蓮が育つ病気に侵されてしまうヒロイン。
それを献身的に見守る主人公。
にしても、悲しい物語であり、純愛。
そして、最初のまえがきから、印象的。
「大切なことは2つだけ。どんな流儀であれ、きれいな女の子相手の恋愛。そしてニューオーリンズの音楽、つまり、デューク・エリントンの音楽。ほかのものは消えていい。なぜなら醜いから。」
本当にそんなストーリー。こんな物語も憎いほど好きです。僕は。
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意味不明の描写の連続で、皆さんよくこれ平気で読めますね。これを美しいとか素敵とか思えるような感性は持ってません、私。
まあ、この訳で作品の芸術性の評価は出来ないと思うけどねー。原文で読まなきゃいけない系でしょ、これ。
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ヴィアンはルイス・キャロルを読んでいたのだろうか。
ふつうのラブストーリーを想像すると出鼻をくじかれる。
原語も流行ったころのフランスの世相もわからないから理解できない。という考え方もあるけど。夢のように突拍子なく展開する物語を楽しんでしまえばいいとも思う。子どもの時に不思議の国のアリスを読んでいるような心持ちで。
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「さあ行こう、猫ちゃん」
「これ、猫の毛皮じゃないわよ、オオヤマネコよ」
「オオヤマネコちゃんっていいにくいな」
ひたすらにハッピーで太陽の真下にいるような前半から物語が終わりに近づくにつれて状況がどんどん悪くなっていくのは読んでいて辛かった。儚い。ところどころに散りばめられているファンタジーも魅力的。
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不思議な作品に出会ったような気がします。
ほかの本の三行紹介文で、「肺の中に睡蓮が育つ病に侵され・・・」という文章を読んで、この本に出会ったわけです。
何と素敵な世界かしら!と思って読み始めたら。
うまく言えないのだけど、何もかもが動いている世界でした。
ただ動かないものは死だけ。
静かなものも、派手なものも、何かしら奇妙に動いている。
恋愛小説、という紹介が多いかと思いますが、シックとアリーズ、パルトルをめぐる話が面白かったです。
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絶妙なバランス。現実と虚構の渦が生み出す夢のような世界。
肺に睡蓮が咲く奇病に取り付かれたクロエとコランの儚く繊細な日々。
ピアノカクテル、小鳥のソーセージ、心臓抜き、、、、
愛をこめて現実を破壊するヴィアンの魅力が凝縮された一冊。
自分の選んだ職業のために、クロエの運命を知るコラン。そのシーンはとても印象的で好き。
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キッチュ!これに尽きる。読みやすくてサクサク読みすすめられる。
ガジェット満載の楽しいB級文学といったところ。
そんなジャンル存在するのかどうか分からないけど、大好きだ。
例えば映画『唇からナイフ』を観たときの感覚。ワクワクする。
いや待て、そういやこれの映画版観にいったわ。いまはなきシネセゾン渋谷かどっかでやってたような……?
映画もとことんキッチュだった、それだけ憶えている(笑)。
1968年製作だから30年近く経っての日本公開。そしてさらに20年が経過しようとしている今、新訳で原作を楽しむ——なかなか感慨深い。
この物語を完全視覚化するのは難しい。チャレンジングだったろうなー。
アニメと実写混ぜて現代風にアレンジしたら、面白い映像作品になるかもしれない。60年代風ファッションと相まって、これぞまさしくフランス流“kawaii”だ。
もちろんkawaiiだけじゃない。どころか、カラフルなイメージに突如ジャックインするグロテスクなシーン、言葉遊び、青春の儚さ、皮肉、喪失感、執着の成れの果て、斜陽、すべてが灰に帰す絶望などなど、よくよく考えたら全然明るくない。
この混沌とした物語世界に、シュルレアリスムの影響がないっぽいのも興味深い。
優れた作家かどうかはさておき、唯一無二な作品世界を構築した人だとは思う。
他の作品も新訳してくれないかなぁ。
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読む際、頭の切り替えに失敗したせいで幻惑と翻弄されてばかり。なかなか癖のある物語で私にはシュールな具合とアイロニカルな感じがややきつ過ぎた作品でした。イメージが弾ける世界にはドラッグでも軽くキメたか、とことん寝不足の頭で書いたのかな? という印象を持ち、奇妙な感触が残ります。結局、最初から最後までつかみきれないまま読み終えてしまったのですが、今はそれでよかったと思っています。だってこのお話、écume(泡ぶく)なのですから、つかめたところで消えるだけですもの。好き嫌いがはっきりと分かれる内容だと思います。