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ハヤカワミステリ創刊60周年記念作品!
2016/10/09 05:23
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ハヤカワミステリ創刊60周年記念作品」、と銘打たれて刊行されて以来、ずっと気になっていたのだけれど・・・三部作だというのに1しか出ていない(どのくらい待たされるのか不明)、しかもうちの本棚に並べにくいポケミスサイズでの刊行ということで、文庫化を待っていましたが・・・しばらく前に2が出たので、手を出してみました。
幾何学性を持ちつつ、なんとなくおどろおどろしさもある表紙。
ちなみに、新刊情報で書名だけ見たとき、『カルヴィニア』と読んでしまった私は、しばらく間違えて覚えてました。
舞台はイタリア・ヴェネツィア。 ある教会の石段で女性射殺体が発見された。
しかしその遺体は女性には許されない司祭の祭服を着ていて、腕には奇妙な模様のタトゥーが。 イタリア憲兵隊の大尉カテリーナは初めて携わる殺人事件として捜査に参加する。 一方、イタリア内の米軍基地に赴任した少尉のホリーは、旧ユーゴ内戦時の記録の公開を求める女性と面会。 しかし、資料を探している間にその女性が死んだと知って、ホリーは・・・。 特殊なソーシャル・ネットワーク・サービス“カルニヴィア”の創設者ダニエーレは、事件の鍵が“カルニヴィア”内にあると知り、カテリーナとホリーに協力しながら真実に迫る・・・という話。
まったくタイプの違うカテリーナ(典型的イタリア女性。 グラマー&セクシーで自己主張が激しい)とホリー(米軍内の女性軍人らしく自己抑制をしすぎるほどしてしまう)が初対面で相手にいい感情を持たなかったこと、しかし調査の過程で互いの知っていることをさらけ出して事件解決に臨もう、となったときに、自分にない面を相手が持っていることが尊敬の念に変わっていく感じが、すごく面白い。 男性と違って、大人の女は相手のいいところをすんなり認めて態度にも出すからね!
あとがきによれば本作は『ミレニアム』三部作に影響を受けているとのこと。 確かにリスベットのような強烈すぎるキャラクターはいないですが、<虐げられた女性たちの物語>を女性たちが解決に導く、という構図は確かに同じかも。
“内的狂乱”というのがひとつのキーワードで、ボスニア問題だけでなくルワンダ問題にも説明がつきそう。 とはいえ、キリスト教徒とイスラム教徒のようにまったく文化・慣習が違うからという理解不足による闘争ならまだ理解できなくもないが、同じ土地で隣人として生活していた相手に対して“民族浄化”という刀を何故振るえるのか、理解できない。 差異がないからこそ優越感を持つためか? 学校のいじめと同じ?
・・・むなしすぎる。
だけど、イタリアにもいくつもの米軍基地があると知って驚く(日本同様、国連規定の敵国だから?)。 イタリアには警察機構がいくつかあるということは知っていたけども(憲兵隊はそのひとつ)。
知らないことはいっぱいあるなぁ、と愕然とするのであった(2015年2月読了)。
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著者はロンドン在住で本作はデビュー作になります。
ポケミスは文庫本より少し背が高く本棚での納まりが悪いので購入は敬遠しがちだったのですが小説の舞台がヴェネチアとの事でなかなかこの地を描いた小説が少ない事とつい最近出張で現地を訪れて事もあって衝動買いしました。
物語は運河で流されたと思われる女性司祭の死体をきっかけに殺人が次々と発生し現地の憲兵と駐アメリカ軍少尉が事件の真相を明らかにするという単純なストーリーですが、舞台のヴェネチアの静かで優雅な雰囲気や事件の背景には国際的な紛争やネット上のバーチャル世界が絡んでおり主人公である二人の女性が陰謀に迫る様は欧州を舞台とした”ダビンチコード”や”ミレニアム”を彷彿とさせ大変に面白い出来で処女作とは思えない仕上がりです。
尚、本作は3部作シーリズとの事で既に後続2作品の英文での題名も発表されて居り早く2作目の刊行が待たれる所です。
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「ヴェネチアを舞台にした壮大な三部作」というコピーにひかれ購入。
イタリア憲兵隊の女性大尉と在イタリアの米陸軍少尉が活躍。組織のなかで女性が働くうえでの難しさや、カトリック教会の女性蔑視、ユーゴ内戦における集団レイプなど、様々な女性関連の社会的な課題が盛り込まれ、面白く読んだ。
謎解きという意味では、勝手に解けていく部分があり、物足りない面はあるが、活劇的な面白さはある。
「ミレニアム」を彷彿させるミステリー(まだそこまでには至っていないけど)。今後刊行予定の2作で、3人の関係の深化とイタリアが抱える社会的な問題についてのさらなる解説を期待したい。
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面白かった。一気に読めた。これは良シリーズの予感。個人的偏見だが、ポケミスってもっと個性的な作品が多くなかったかな? 普通に人気の出そうな三部作をポケミスから出すって違和感ありあり。…てなことも考えながらの読書でした。
『ミレニアム』+『ダ・ヴィンチ・コード』という単純な発想ではあるが、前者ほどヴァイオレンス色はなく、後者ほど宗教色も強くない。事実に基づく歴史的背景に支えられた、完成度の高いサスペンス。
この歴史的背景がかなり堪える。北欧の社会問題にも通ずるので、作中では幾度と目にしてきたつもりだが、やり方が卑劣で冷酷。何でもありの内戦のどさくさに乗じて、アイデンティティーの確立に躍起になる権力者たちの醜さが尾を引いて残る。ここの部分だけは何年経ってもどうやっても進歩しないよね。
「カルニヴィア」は斬新で興味深いアイテム。IT系をこうやって取り入れるのは面白い。手書きのメモを探す展開は古くなりそう。キャラクターは様子見かな。敵味方の判断は保留ってことで。基本サスペンスなのだが、重めの背景できちっと締めて、でもエンタメ性もあるからスピードに乗って一気に読ませる。全体のバランスがいいので細かいアラは気にならない。
“次作に続く!”のようなラストではないので、第二部の展開が全く予想できない。続編の刊行時期は不明だが、これは期待できるシリーズ。楽しみがひとつ増えてご機嫌な読後感でした。
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舞台設定、登場人物の配置、いずれも良好。夢中になって読んだ。カルニヴィアがヴェネツィアを舞台にしたSNSでなかったらもっとつまらない作品に堕していたのでは。
個人的には、色恋要素は不要だったかも。ただ、全体的にそれが人間を描く一つの通奏低音として要素化されているのは事実。
続編に期待!!
追記
本作を機に、海外ミステリにはまり、かなり色々読んでみたが、振り返ると本作の平板さが目立つ。夢中にさせる本であったことは事実だが、薄っぺらく、やはり色恋沙汰はもっと別の書き方があったように思う。
売れる本であることは事実だろうが、深みがないのもまた事実。
そういう意味でも次作に期待したい。
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本書はベネチアを舞台に、ベネチア貴族の引きこもり天才ハッカーとアメリカ軍の新人女性士官、情熱的なイタリア人女性警官の1男2女が、国際的な謀略に巻き込まれていくミステリー小説です。
カトリックが禁忌とする女性司祭の死体発見から始まるストーリーは、コソボ紛争をめぐる謀略、戦争犯罪、天才ハッカーが作ったバーチャル・ベネチア・サイト、カルニヴィアへの攻撃といった様々な要素が織り込まれ、これにアクションシーンやら上司との不倫やらが彩りを添えていると言う、
「ネタになるもの、突っ込めるだけ突っ込みました」的な"てんこ盛り"ストーリーでした。
これは本業が広告会社のクリエイティブ・ディレクターである著者が「売れる小説とは何か?」と言う事を考えた結果なのでしょうか?
仮にそうであれば、二転三転するストーリーや誰が敵か味方か確信が抱けない様など、ストーリーがよく練られているにも関わらずどことなくチープな印象をぬぐえないのは、この所為なのかも知れません。
正にエンターテイメントを追求した大衆小説と言った所です。
とは言え、あまりに俗すぎてうんざりしてしまうのかと言えば差にあらず。
十分楽しめますので、”歯ごたえ”のある娯楽小説をお求めの際にはお勧めです。
ちなみに本書は著者のデビュー作にして「カルニヴィア」3部作の第一作目。
まだまだストーリーは続き、第一作目で出会った3人の関係が今後どうなるのか等、読者の想像力を刺激する終わり方をしています。
尚、後書きによれば、まだ原著の方ですら次巻が出版されていないとか。
次巻が読めるのはいつになるのでしょうか・・・
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新しい海外ミステリーシリーズが出た。舞台はヴェネチア。多分イタリアものは初めて読んだと思う。水の都市ならではエピソードもたくさんあって面白い。主要人物のダニエーレ・バルボのトラウマ度や、物語の主幹になる旧ユーゴスラビアでの残酷さは読んでてつらくなったけど、丁度いい具合にミステリーとスリラーの間の作品でした。
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ヴェネツィアを舞台に憲兵隊と米軍の女たちが禁忌にからむ謎に迫り、自分たちの立ち位置を再認識することになる。このテーマ、やりすぎると引いてしまうこともあるが、この女たちについては三部作だという続きがどう展開するのか興味あり。そしてSNSカルニヴィア創設者のダニエーレ、きみのキャラならまだそれじゃ済まないでしょ、派手にやらかすのを期待。
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ハヤカワ・ミステリ創刊 60 周年記念作品ということで、
大いに期待して読み始めた。
実際、途中まではいい感じだったのだが、
ラブロマンスな展開を挟んでこられたあたりから、
ハリウッド映画みたいだなあと感じだし、
全体的に人物の描写が浅く薄っぺらな印象持った。
ドラゴンクエストで村人を片っ端からクリックすると、
皆なんでもしゃべってくれるみたいに、
捜査の過程で皆さん聞かれると簡単にしゃべりすぎ。
ストーリー展開にハリウッド映画的安心感はあるのだろうが、
続きのプロットは気になるが、3 部作の次を読むかどうかは微妙な感じ。
それと巻末解説(?)で、ネタバレ詳細あらすじ必要なのでしょうか?
読後に読んでも、「いや、今読んだところだから知ってます。」だし、
読前に読んだら興ざめだし。
どうして小学生の読書感想文みたいな文章を偉い先生方は書くのかなあ。
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面白いのに中途半端なところで終わってしまった!1作目の内容を忘れないうちに早く2作目出版されて欲しい。
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新聞の書評欄で見かけてから、読みたかった一冊。『ミレニアム』『ボーンアイディンティティー』シリーズ三部作と同様に、現実社会の事件、政治を丹念にリサーチし、1人はイタリアの女子憲兵、一人はイタリアに駐軍する幼少期をイタリアで育った女子少尉、そしてもう一人は、裕福な財閥に生まれながら、幼少期に誘拐事件に巻き込まれ耳と鼻を犯人に削がれるという大きなトラウマを持ちながら抜きん出た数学的才能で本物と寸分違わぬベネツィアという都市をネットの世界で構築し、誰もが仮面をかぶり決して履歴が表に出ない世界を構築した天才!。カトリックではあり得ない司祭の服を着て殺された女性の遺体を皮切りに、アンジェリーナジョリーが最近映画化した、コソボ紛争の中で市民達、とりわけ女性達がどのように扱われていたか、そしてその戦争に巻き込んだ物は、民族闘争を隠れ蓑にしたある民間傭兵部隊(アメリカ)、NATO軍が関わった
非人道的な殺戮の歴史を闇に葬り去ろうとする団体との戦いになってゆく。作家ジョナサン.ホルトはこれが処女作!三部作の次回作が今から楽しみでたまらない!
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ベネツィアを舞台にした華麗なミステリー。重厚なテーマで、独創的なキャラクターは登場するし、サスペンスたっぷりの展開だし、言うことなし!のはずなんだけど…。
私はやっぱりミステリーは「娯楽」として読みたい。「ああ面白かった!」と言って本を閉じたいのだ。本書では、内戦下での女性への組織的で大規模な性的暴行が物語の中心となっていて、読んでいて辛い。
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カルニヴィアとは小説の舞台であるヴェネツィアを忠実に再現したミラー・ワールドであり、あらゆる噂と情報が行き交う匿名性を保った3Dソーシャル・ネットワークだ。この仕掛けを行き来することで主人公たちは謎の手がかりを得たり、敵の手から逃れたりする。現実にもこんな空間があったら便利そうだなあ。今のところは、本書をミラー・ワールドとして意識することで現実の歪みや問題、または希望について気づくことでも十分、意義がありました。お話はミステリ、サスペンス、歴史、エロ、グロ、旅情、グルメ、スパイ、政治、軍事、警察他てんこ盛りなので様々な観点から楽しく読めますよ。
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んーー。私の好みではなかったというだけ。ただイタリアの警察の仕組み、アメリカ軍との関わり、辺りはとても興味深く読んだ。ミステリというものは、社会や風俗を切り取ってこそ、と思う。良作ではあるとは思うが、私には合わない。
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「ミレニアム」のイタリア版みたいな紹介のされかたしてたけど、三部作の第2巻まででてるシリーズの第1作。憲兵隊のの女性士官と駐イタリアのアメリカ軍基地の女性将校、2人の立場の違う女性が物語を動かしていく。カトリックのしきたりとかイタリアの警察の二重構造とか、国家警察と憲兵隊とふたつの警察があったり、マフィアとか目新しい話がたくさん出てくる。