路傍の石(新潮文庫)
著者 山本有三
極貧の家に生れた愛川吾一は、貧しさゆえに幼くして奉公に出される。やがて母親の死を期に、ただ一人上京した彼は、苦労の末、見習いを経て文選工となってゆく。厳しい境遇におかれな...
路傍の石(新潮文庫)
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商品説明
極貧の家に生れた愛川吾一は、貧しさゆえに幼くして奉公に出される。やがて母親の死を期に、ただ一人上京した彼は、苦労の末、見習いを経て文選工となってゆく。厳しい境遇におかれながらも純真さを失わず、経済的にも精神的にも自立した人間になろうと努力する吾一少年のひたむきな姿。本書には、主人公吾一の青年期を躍動的に描いた六章を“路傍の石・付録”として併せ収める。
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タイムカプセル
2018/11/28 18:58
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:親譲りの無鉄砲 - この投稿者のレビュー一覧を見る
子供だった頃読んだ「名作」。少年向けの単行本の体裁だったと思う。
よくいえば頑張り屋、否定的なニュアンスを込めれば依怙地、という主人公・吾一少年の性格は母親譲りだった、という点を初読の時には読み落としていたことを、今回思い知った。しかし、当時もなぜか吾一少年の母おれんさん若かりし頃の「赤い糸」のエピソードがずっと心に引っかかっていた。このもやもやした読後感は、母の性格が子に伝染している事実を、子供だった当時の自分が結像させることができなかったことに起因しているのかもしれない。子供が大人の心情に感情移入できないのはある意味当たり前のことかもしれないが。おれんさんは自分の性格にそっくりな息子の将来に暗い悲観的な見通しをもっていたのだ。子供の読者からすれば、非常につらいシチュエーションである。
「次野先生」の章で完結したと勝手に思い込んでいたが、実は著者がその次の展開で悪戦苦闘していたことを今回新潮文庫版で初めて知るに至った。しかし50年近く後に読み継いでわかったのは、やはり、子供向けの質の高いビルドゥングスロマンとしてのまとまりは、「次野先生」をもって掉尾とするのが良いということだ。世間の冷たい風に当たって苦労が身に染みた吾一少年は、彼のためにと篤志家・稲葉屋の主人から預かった金を私的に流用してしまった恩師・次野を何の屈託もなく許す。その大人の分別を見せた主人公の精神的成長ぶりをひとつの到達点とみることもできるからだ。
一方著者には往時の「個人主義」と「社会主義」の相克という重要なテーマをその後の主人公に背負わせる意図を持っていたことが、今回初めて読んだ「お月さまはなぜ落ちないのか」の章からも窺い知れることは明らかである。それ故に、官憲の検閲が入り著者は断筆を選択せざるを得なくなる。現代に生きる我々にはこの小説への官憲の干渉の理由・根拠を理解するのが少々難しかろう。しかし、一方で戦前回帰的なきな臭さもあたりに漂い始めている昨今である。78年の時を超えてその轍を踏まぬよう警鐘を鳴らしているように評者には感じられるのである。
蛇足だが、子供同士で武勇伝的はったりをかまして引っ込みがつかなくなるシチュエーションから鉄橋ぶら下がり事件が起こるわけだが、この部分ヘッセの「デミアン」からの影響があるように評者には感じられる。また往時の少国民の思想形成という観点からは、吉野源三郎「君たちはどう生きるべきか」を併読し、資質の異なる二人の当時の大人が、子供に何を言いまた問いかけたかを比較してみるのも一興かと思われる。
名作
2024/05/31 19:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
子どもの頃に読んだときも、吾一の姿が印象的だったが、当時は単なる少年の立志伝のような感じで読んでいた。
しかし大人になって読み直すと、山本有三がこの小説を書いた時代がどんな時代だったか、山本有三がどのような人物だったかなど、当時は考えてもいなかったバックグラウンドも見え、より深い小説だと思えた。
少年が主人公で児童文庫にもなっているような話だが、大人にも再読をお勧めしたい。
「たったひとりしかない自分を、たった一度しかない一生を、ほんとうに生かさなかったら、人間、生まれてきたかいがないじゃないか」
この言葉を、当時山本有三がどんな思いで、つづったのだろうかと、思いを巡らせている。
昔話として読むのもいいが
2023/11/01 09:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
素直に読めば「ひたむきに努力すればいつかは報われる というサクセスストーリー 立志伝として読める。中途パンパな終わり方になってしまっているのは、軍からの圧力とのこと。軍にとって都合悪い話がどこにあるのだろうか?吾一少年がそのまま成人したら出征したのだろうか.などど色々考えさせられる作品である。