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電子書籍
魔都 恐怖仮面之巻
著者 栗本薫 (著)
今夜もまた、深い霧―。ぼくは霧が好きだ。とくに、あのことがあってからは・・・。そう、ぼく武智小五郎が迷いこんだ明治47年の幻想の魔都・東京。そこでぼくは乱歩の世界さながら...
魔都 恐怖仮面之巻
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魔都 恐怖仮面之巻 (講談社文庫)
商品説明
今夜もまた、深い霧―。ぼくは霧が好きだ。とくに、あのことがあってからは・・・。そう、ぼく武智小五郎が迷いこんだ明治47年の幻想の魔都・東京。そこでぼくは乱歩の世界さながらに連続殺人鬼・恐怖仮面との華麗な対決をくりひろげるんだ。そして素敵な恋にもめぐりあう不思議な霧の夜のこと・・・。(講談社文庫)
目次
- プロローグ
- 第一章
- 第二章
- 第三章
- 第四章
- 第五章
- 第六章
- 第七章
- 第八章
- 第九章
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紙の本
話自体はまあまあだけれど、栗本薫作品の中では重要な1冊だと思う
2012/02/11 19:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
栗本薫の膨大な著作の中でも特異な位置づけをされるのが、この『魔都』ではないかと思う。それはこの文庫版の「あとがき」で著者自らが、
「この作品に対しては私は他のほとんどの作品に対するのと同じようにはクールになりえないようだ」
と、語っていることからもわかるだろう(作品自体が書かれたのが1989年頃で、この「あとがき」が書かれたのが1992年なので、それ以後にも栗本はたくさんの作品を書き続けてはいるので、晩年にもこの作品に対して同じような感情を持っていたかどうかはわからない。だが、たぶん同じだったのではないかと思われることが『グイン・サーガ・ワールド3』の今岡清氏のエッセイに書かれている)。この作品は栗本/中島の初めて本格的に取り組んだミュージカルのノベライズであり、これ以後栗本/中島の世界は小説や本の中だけでなくミュージカルという表現方法も加わることになるわけだ。
なので、読む側もどうしても他の作品とはちがった目で読んでしまいがちになる。
内容自体は、すごく大雑把に言えばパラレルワールドの、ありえなかった大正時代に起こる連続殺人事件の話であり、とりたてて推理もの仕立てになっているわけでなく、武智小五郎(これは、ペンネームなのだ!)と恐怖仮面の対決という筋立てになっているだけで、確かにこれはミュージカルなり舞台なりで見るとそこそこ見応えがあるのではないかと思わせるようなビジュアルを想像させる描写がそこかしこに読めるものだ。
だが、ここで描かれているのは、表向きのビジュアルさや名探偵と殺人鬼の対決というストーリーの面白さよりも、主人公・武智小五郎が抱える対人関係の問題の重さではないかと思えてくる。と言うより、ここでもまた栗本作品の多くに登場する、夢と現実のあいまいさや越境してくるキャラクターや、アイデンティティを揺さぶる現実やそれを確固として持つことができない人間のインナースペースといったものが描かれているように思う。
それは栗本/中島自身が抱えていた問題であったようで(このあたりも、『グイン・サーガ・ワールド』の一連の今岡清氏のエッセイなどを読むとわかるのだが)、その解決策として小説を選び、この作品からミュージカルも重ねて選ぶようになったということなのだろう。
そういった意味で、やはりこの『魔都』は、栗本作品の中でも、著者自らが言っているからというだけでなく、特異な位置づけをされるべき作品なのだと思う。