バイブルにしてます
2022/02/10 12:32
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投稿者:あごおやじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
副題に「リベラリズムの冒険」とあるとおり、リベラリズムの変遷を軸にアメリカの現代思想を俯瞰します。自由主義が建国の基底にあるアメリカで、なぜわざわざ「リベラリズム」と冠した思想が生まれたのか、という起源に始まり、ロールズの「正義論」、リバタリアニズムとコミュニタリアニズム、左派・右派双方からの揺さぶり、ポストモダンとの化学反応…等々、幅広い論点を丁寧に解説した、大変内容の濃い一冊だと思います。
「アメリカ現代思想」と題していますが、前置きとしてフロム、ハイエク、アーレントなどを取り上げ、ポストモダンとの関係ではフーコーやデリダにも言及しているなど、広く現代思想全体の理解にとても役立つのではないかと思います。
索引もあり、年表や相関図が付されていることから、私にとっては、他の本を読む際に頭の整理をするバイブル・辞典的存在で、何度も読み返しています。
なお、本書の姉妹書ともいえる「日本の現代思想」(こちらもお勧め)には、「ポストモダンとは何だったのか」との副題が付されています。アメリカの思想の歴史は「冒険」と称するほどのバイタルな営みであるのに対し、日本の場合は「何だったのか」と疑問符が付される、というのが対照的で面白いと思います。
リベラリズムの変遷
2022/10/22 23:23
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカ現代思想を外観するというより、リベラリズムを切り口に戦後のアメリカの政治、政治哲学を振り返った書籍。ロールズとかローティとかトゥオーキンとか目にする名前の人たちの思想をほどよく切り取って紹介している。
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広範囲をきれいにまとめているため、あまり説明されていないけれど、9.11前後で思想があわてて混迷したり変容したり転向したりする必要ってそんなにあるのかなあ、そういう臨機応変に立ち回るのは政治家とかに任せておけばいいことじゃないかなあという点がよく分からなかった。
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これは読みやすい。ハイエクのような古典的な自由主義にはじまり、価値中立に立つリベラリズムを前提としつつ秩序の根拠を説明しようとするロールズ・ドゥウォーキンを押さえ、そうした意味でのリベラリズムに反対するラディカルな(古典的な方向へのゆり戻しというか)ノージックや、価値中立に対する限界から価値や文化を政治思想に取り込もうとする理論、もはや国家のあり方を説明する政治思想ではなくその枠を超えたまとまりを説明しようとする「帝国」の議論まで。これらの見取り図をこの薄い本で整理してくれて、さて、では、それぞれに取り掛かってみよう!と思わせてくれる。
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リベラリズム、ポピュリズム、リバタニアンなどなど、やや後半になって頭の中で人物名が混乱してしまったが、久々に哲学思想関係で面白く読めた本だった。
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これまで漠然とイメージしていたことが、本書を読むことでかなりクリアーになりました。例えば、「保守」や「リベラル」という言葉のアメリカでの使用法についてです(ちなみに、日本については、高原基彰『現代日本の転機:「自由」と「安定」のジレンマ』(NHK出版・2009)の整理が参考になると思います)。また本書では、思想の変遷を現実の政治・社会情勢の変化と関係づけながら辿るということを試みているのですが、そうした試みがアメリカ現代思想を理解するうえで多いに役に立ったと思います。
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ロールズを中心に、大戦後のアメリカ政治思想が俯瞰できる本。
当時の社会問題など時代背景とリンクさせることで、一見抽象的な議論が実感を伴って伝わるような構成になっている。
アメリカに対して大味なイメージを持つ人にとっては、この本によって「アメリカの底力」を知ることになるだろう。
リバタリアニズム-リベラリズム-コミュニタリアニズムという中心軸と、その周辺を回るポストモダニズム&プレモダニズムが複雑に入り組み、お互いを切磋琢磨している。
アメリカが熱狂的に一方向に振れつつも、時間とともに冷静に回帰していくプロセスを我々は目にすることが多いわけだが、それはこうした「知的な厚み」に支えられているわけである。
ローティの書名ではないが、アメリカそのものが未完のプロジェクトなのだ。
政治思想というと、「現実政治に一体なんの役に立ってるの?意味ないんじゃん」というのが日本人の多数の正直な感想と思う。
しかしながら、そうした日本人の知的な怠惰が現状を生んでいるとも言えるように思う。国の政策が変わるか否かではなくて、自分がどう考えどう行動するかが、結果国を変えていくのではないだろうか。
そうした意味では、現代日本で求められている教育の問題(『“何が道徳か”を教えるか否か』から、『”何を道徳とするのか”考えることを教えるか否か』への昇華)、資源配分の問題(『世代による資源の取り合い』から『不公平間のない資源配分』への昇華)も、これらの思想を導入することでレベルアップが図れるのではないかと思う。
そんなアメリカだが、ゼロ年代に入ってロールズもノージックもローティも死んでしまった。また、影響力の強かったサイードやデリダ、ブルデューも鬼籍に入っている。
911~イラク戦争~リーマンショック~黒人大統領誕生という、アメリカ史に残るだろう事件が相次いだ時期に、思想界がちょっと低迷してるのが残念ではある。
本書で「マンネリだ」と評されているサンデル教授の本が売れているのも、ちょっと皮肉な感じがする。
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現代リベラリズムの良質なブックガイド。ロールズの「正義論」におけるリベラリズムを軸として、リベラリズムvsリバタリアニズム、リベラリズムvsコミュニタリアリズムの歴史を、簡便にまとめている。リベラリズムをめぐる議論の概観がわかるし、索引や巻末の年表なども充実しているので、リベラリズムについての資料として有益だと思う。
個人的には、ノージック「アナーキー・国家・ユートピア」やロールズ「万民の法」、ローティ「哲学に対する民主主義の優位」、テイラー「<ほんもの>という倫理」あたりを読んでみたいなと思った。特に「万民の法」におけるロールズの「リベラルな社会がリベラルではない社会をどこまで許容すべきか」という問題意識には、とても関心がある(渡辺一夫の「寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容であるべきか」に通じるものがある)。9.11以後の社会において、こういう視点はとても重要だと思う。
良い本だと思うけど、この本一冊であれこれを理解するというのは無理。読者がそれぞれの関心から自分の読みたい本を見つけるために使うべき本かな。
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ポストモダンの残滓の中で大学生活をおくり、思想や哲学も一通り出尽くした後で、もはや「倫理学」しか残されていないのかな~と妙に達観してた(させられた)往時だったけど、
ほぼ眼中になかったアメリカに、新しい思想潮流が生じていて、それが今やメインストリームにまでなっているとは・・・まったくもって知りませんでした。
当時このことを知っていたなら、だいぶ読む本や研究テーマが違ったのにな~、残念。
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[ 内容 ]
格差社会から地域紛争まで、喫緊の課題をどう読み解くか。
現実的な社会変革をめざす思想として、近年注目されるアメリカ発のリベラリズム。
社会全体の「平等」と個人の「自由」の両立を構想することで、自由をめぐる現代的課題を考察したロールズの正義論からリバタリアニズムにコミュニタリアニズム、ネオコン思想まで。
リベラリズムを中心とするアメリカ現代思想のあらましを、時代背景とともに明快に解説し、日本をはじめ現代の思想状況にリベラリズムが与えた影響を探る。
[ 目次 ]
アメリカ発、思想のグローバリゼーション
1 リベラルの危機とロールズ(「自由の敵」を許容できるか-戦後アメリカのジレンマ
自由と平等を両立せよ!-「正義論」の衝撃)
2 リベラリズムの現代的展開(リバタリアニズムとコミュニタリアニズム-リベラルをめぐる三つ巴 共同体かアイデンティティか-文化をめぐる左右の戦争 ポストモダンとの遭遇-リベラルは価値中立から脱却できるか)
3 ポスト冷戦期のリベラリズム(政治的リベラリズムへの戦略転換-流動化する「自由」 “帝国”の自由-「歴史の終焉」と「九・一一」 リベラリズムから何を汲み取るべきか)
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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ポストモダン思想を整理した上で、じゃあ今主流となるアメリカの思想はどうなの、ということで急遽衝動買いした一冊。まぁ著者も同じだし。しかし、忘れていたけどアメリカって日本以上の哲学後進国だったんだよね。
簡単に整理。アメリカでは功利主義や実証主義といった側物的な価値観が長らく主流で、それ故資本主義的な価値観と相性が良かったんだけど、そんな中で大きな転換点がロールズが1971年に発表した『正義論』。ここでは、「正義」という概念を「公正さ」と捉えなおし、その基準として「社会のどこに生まれ変わっても耐えられるか」 という立場可換性を置く事によって「自由」と「平等」を両立させる事に一貫性を見い出そうとする提言を行っている。これがアメリカにおける典型的なリベラリズムの機軸となり、これに対してより個人の自由に対する制約を取り除こうとするリバタニアニズム、逆に個人の自由というものは共同体の価値観に規定されるのを認めるべきというコミュタリアニズムという、「自由」に対する3つの立場が形成される。(ちなみに、最近『これからの正義の?』で有名になったマイケル・サンデラはコミュタリアニズムの立場)
しかし、こうしたリベラルに対する反発として、新保守主義や服音主義といった伝統規範的な価値観を重視する流れも強まり、「内面の自由」を前提とするリベラルの立場からは批判しずらいという問題に直面する。そしてこの保守的な流れに対して、逆に黒人や女性といった弱者/マイノリティの問題も俎上に上る事となり、「公/私」二分論に対する問題が明らかとなっていく。
そしてこの問題は90年代に入りソ連が崩壊し、資本主義のグローバル化が進む事でより決定的となる。これによって「自由主義」と「民主主義」が共通の敵を失う事で互いの対立点が顕在化すると共に、他国との文化的アイデンティティを巡る対立というのも争点となっていく。このような政治?経済?文化という3つの要素に対する「共通基盤」というものはどこまで設定できるのか、これが現在のアメリカにおける思想的課題と言っていいだろう。
ふう、全然簡単じゃないですね。それにしても、日本は戦後アメリカ的な価値観に近い所にいたと思っていたけど、こうして見ると「自由」や「正義」といったアメリカの根幹を成す部分については全く気が付いていなかったという事を思い知らされるし、この思想が政治?経済?文化という現実という強固な存在を前提としているが故に、概念の問い直しをしていた西洋のポストモダンな思想に対して優位に立っているというのも理解できる。やっかいな時代になったものだと痛感させられながらも、まぁ、こうして自分らが置かれている状況を整理していくのも悪くはないと思うんだ。
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現在の宗教を考える上で、特にアメリカにおいては政治を考えなければならなくなっている(そしてその逆も然りである)。ということで何か政治哲学に関する入門書をと思い、手を出したのがこの本である。
僕の政治哲学に関する知識はほんのりハーバーマスやテイラーについて知っている程度であった。その程度の知識しかない者にとっても、本著は非常にわかりやすいと思う。特に、現在どのような思想があって、それはどういう経緯で生まれてきて、どういうところで対立しているかという全体像が見事に整理されている。また、日本の政治哲学思想についても少し言及してくれているのも嬉しい。
アメリカの事例なので、必ずしもこの本を読むことで日本の政治哲学を解き明かすことにはならないのだが(次回は筆者の日本の現代思想に関する本を読もうと思う)、少なからずアメリカ的なもの(≒グローバリズム)と(追随するにしろ迎合するにしろ)向き合わなければならない日本にとっては、充分にアメリカの現代思想は追っていく価値がある。これが本著の最後に述べられたところであり、僕も深く同意する。
個人的には今のところ、日本はアメリカやヨーロッパ諸国のようなグローバリズムにいくというよりも、国民国家的な性格が強いしむしろそれを活かすべきだと考えているが、このあたりの思想も今後様々な議論を追っていくことでどう変化していくことだろうか。また、宗教学徒として、マスレベルでの「宗教」についても、グローバルな流れの「宗教」からどの程度日本の「宗教」が特質性を持っているかを絡めて考えていきたい次第。
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リベラリズムを取り巻く哲学の議論について広く知ることができるが,門外漢の自分としてはかなり難しく,なかなか読み進められなかった.
試金石となる何か一つ詳しい思想・哲学があれば,より鮮やかに全体像の把握もできたかもしれない.
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一時期流行した、サンデルの正義について等を、アメリカの現代思想の流れの中で追いたかったので読んでみた。
序章によると、思想のアメリカ化の流れは、①ポストモダンの流れ、②分析哲学の流れ、③リベラリズムの流れがあるそうだが、本書は③のみを扱っている。
内容としては、保守主義とリベラルの対立軸の中で、元々リベラルがもっていた「自由主義」的な考えを保守主義がもつことによって、リベラルとしても新たに自由と平等を両立する必要性に迫られて、ロールズの「正義論」が生まれた。正議論を受けての、リベラリズム、リバタニアズム、コミュニタリズムなどの思想が生まれ、ポストモダンの哲学、冷戦後の哲学、文明の衝突などの帝国論を含めて、9.11まで議論が盛り上がっていく。
9.11以降は、実際の政策が主になってしまい、議論ができていない(2008年発刊当時)と書かれているが、今後ともアメリカがメインの現代思想は伸びていくと思われる。
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命題1、
近代以降の伝統に従って、まず主体を概念的に基礎づけてからはじめるのか、それとも、偶然をプラグマティックに処理してゆく中から思想を紡いでゆくのか。
命題2、
そもそも異質な(というよりもほとんど相反する)ものである自由主義と民主主義をどう解決するか。
世界的現前としてのマルキシズムを失ったリベラルは自己のアイデンティティ拡散に直面している。
白熱授業でブーム的人気者になったサンデル先生の位置づけもよくわかります。