商品説明
幼馴染が殺された。伊賀を知らぬ伊賀者だった。大金を手に死んだ友に何があったのか。探るほどに見えてくる裏の隠密御用、伊賀衆再興の企て、危険な火縄の匂い。そしてまた一人旧友が斬殺された。サツキ栽培で活計(たつき)を立てながらも、一刀流「浮き木」の極意を身に秘めた老練の武士が、友の無念をはらすべく、江戸の闇に鯉口を切る!
著者紹介
青山文平 (著)
- 略歴
- 1948年神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。出版社勤務を経てフリーライター。2011年「白樫の樹の下で」で松本清張賞を受賞し作家デビュー。他の作品に「かけおちる」がある。
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紙の本
読み応えがずっしりとして、味わい深い。
2015/08/21 17:51
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近軽く楽しく読める時代小説が数多く出る中で、この作品は一線を画している。軽く読める時代小説の中にも無論いいものはあるけれど、本格時代小説が少なくなっていくのは淋しい。この作品は、紛れもなく本格時代小説だと思う。
江戸開幕から170年経ち、隠密の意義を失っている伊賀の者たちの割り切れない気持ちや実際のお役目、更にはそこから影の動きに至るまで、じっくり書かれている。時にややこしく感じるところもあるほど緻密な描かれ方が、しっかりとした土台となっている。
主人公の晋平がとても恬淡として欲がないのが、読んでいて清々しくていい。極力人を斬ろうとしていなかった彼が、結果的に巻き込まれてついに人を斬ることになるのだが、斬った後の煩悶の描き方が巧い。人を斬ったということで「腹の中に何かが生まれ、そいつが自分を見ているような気がする」と感じる晋平は、それを「鏡餅」と名づけて生涯つきあっていこうとする。この晋平の思考や心理の描き方が、深い。単に斬り合いの場面を書くのではなく、本当に人間というものを見つめて描いていて、心にぐっと迫ってくる。
終盤、サツキを育てる手練れでもある主人公が、山に分け入ってある特別なサツキを見つけるシーンがとてもよかった。それまでのストーリーに関わるので何がいいかは書かないが、清々しさと温かさが胸を満たした。読み終わった時に深い満足感を覚える作品だった。