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闘う純米酒 神亀ひこ孫物語
著者 上野敏彦 (著)
埼玉県は蓮田の小さな蔵、神亀酒造七代目蔵元、小川原良征が造りの全量を純米酒に切り替えてから二十年。小川原を支えたのは戦中、蔵を守った祖母くらへの愛情と蔵再建への情熱だった...
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闘う純米酒 神亀ひこ孫物語
商品説明
埼玉県は蓮田の小さな蔵、神亀酒造七代目蔵元、小川原良征が造りの全量を純米酒に切り替えてから二十年。小川原を支えたのは戦中、蔵を守った祖母くらへの愛情と蔵再建への情熱だった。それは同時に業界からの批判や税務署からの圧力との闘いでもあった。今その名は広く知られる。しかし、闘いはつづく。「日本酒は稲作文化の生んだ偉大な華」の信念をたぎらせながら、これからも…。
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目次
- 第1章 白ワインに負けぬ酒
- 第2章 女の細腕で守った蔵
- 第3章 トトロの森で醸す
- 第4章 農への心意気
- 第5章 万華鏡の酒
- 第6章 酒蔵再生
著者紹介
上野敏彦 (著)
- 略歴
- 1955年神奈川県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。記録作家、ジャーナリスト。共同通信社編集委員兼論説委員。著書に「木村英造淡水魚にかける夢」「辛基秀と朝鮮通信使の時代」など。
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紙の本
とんでもない頑固者がいたおかげで味わえる幸せ
2007/01/21 13:39
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ビールは水の如く、ウィスキーはロック、飲んで騒げばいいという年齢も過ぎ去り、肉体の衰えに応じて肴を選び、季節の肴に応じた酒を合わせ、酒や肴が映える器を見るようになってきた。
当然、日本酒も純米にこだわり吟醸だの辛口だと選ぶようになってきた。
『闘う純米酒』という物騒なタイトルに惹かれて手にしたが、まっとうな日本酒作りをしている蔵元がホンモノを求めて障害となる組織や人と闘うその半生を記したものである。
今から半世紀以上も前の戦争中、モノが無い時代に酒も代用品で量を賄い、それでいて税金はまともに徴収するという時代があった。
それが、なんと戦後の米余り、減反政策を実施するに至ってもアルコール、調味料など、添加物たっぷりの三倍増譲の日本酒を売ることを国家が奨励し、大手企業は安い原価の模造品を広告宣伝費で誤魔化していた。そんななか、本来の日本酒を残さなければ、作らなければと闘志を燃やした人がいたのである。
埼玉県の「神亀」酒造の小川原良征専務である。
日本酒離れと言われて久しいが、舌が肥えたいまどき、誰もまずい日本酒もどきを高い金を出して買う奴はいない。べたべた甘く、悪酔いするような似非日本酒を飲まずとも、風味があって良質の焼酎がある。酒税を上げても焼酎の需要が落ちないのは市場原理というものだろう。いまだに偽りの日本酒メーカーが横行する中、税務署の圧力にも屈せずにうまい日本酒作りをしたのだから国民栄誉賞ものだが、誰も評価しない。おかしな話である。
しかし、読み進むうちにまっとうな日本酒造りなど酔狂にしかできないことがわかる。
有機栽培の酒米を求め、過酷な肉体労働、目に見えない麹の動きを経験と勘とコツを頼りに長い長い年数をかけて醸し出していくのである。
マニュアルで作業が標準化され、基準内の質、早くて便利、生産性と効率が上がり利益が確保されれば評価されるという時代の趨勢に逆行しているのである。
すでに図体が大きくなりすぎた大手の日本酒メーカーにはどれだけ資金を投入しても、市場が求める日本酒は作れないだろう。数値に表れるものだけが評価の対象で、人と手間と年月という把握できないものは評価しない日本の世相がかぶさってくる。
頑固一徹の小川原専務を評価したいのは、自身の蔵だけにとどまらず日本全国の小さな蔵から求められれば、人、モノ、技術の支援をしていることである。自分だけがよければという狭い了見はない。
反面、その頑固者はかずかずの揉め事を起こしているが、仲裁に入られた家族の方々も大変な苦労をされたことと思う。しかしながら、その小川原良征氏がいたから今でもうまい日本酒にありつける。
本書は単なるうまい純米酒のことだけが語られているのではなく、環境問題も含めて、今の日本が抱える社会問題を提起している。
タイトルに「闘う」という文字が使われたのもなるほどと納得できる。「勝ち組」に与し、易きに流れることを潔しとしないことは多くの人々と未来に安全と安心を与える縁になることを証明してくれたのである。