地層捜査
著者 佐々木譲 (著)
1995年に東京・荒木町で起きた老女殺人。確たる手がかりもなく、未解決のままだったこの事件が、2010年の公訴時効撤廃を受けて再捜査の対象となる。捜査一課の水戸部と、以前...
地層捜査

商品説明
1995年に東京・荒木町で起きた老女殺人。確たる手がかりもなく、未解決のままだったこの事件が、2010年の公訴時効撤廃を受けて再捜査の対象となる。捜査一課の水戸部と、以前この事件を担当していた地域指導員加納は、当時の捜査本部が着目した土地トラブルを追いながら、かつては芸妓、後に置屋の女将として生きた老女とこの街の記憶に目を向けていく。そう、事件の「地層」を掘り起こすのだ--。『廃墟に乞う』で直木賞を受賞した警察小説の名手が放つ待望の新シリーズ、いよいよ開幕!
著者紹介
佐々木譲 (著)
- 略歴
- 1950年北海道生まれ。「エトロフ発緊急電」で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞、「武揚伝」で新田次郎文学賞、「廃墟に乞う」で直木賞を受賞。
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東京の古い街の古い事件
2021/04/24 09:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
佐々木譲の警察小説である。東京の代官山を舞台にした『代官山コールドケース』で登場した水戸部警部補が再登場である。今回はOBの相談員との共同作業である。とはいえ、当時の捜査に加わっていたという経歴がある。時間軸でいえば、こちらが先で、代官山はその続編ということのようだ。
今回の舞台は四谷荒木町である。東京に住んでいても行ったことのある人は少ないかも知れない。昔は芸子が街を歩く夜の街だった。ここで元芸子で芸者置屋の女将が殺害された。代官山同様、地域の詳細な描写が巧である。しかも実名をうまく隠している。実際に地図を広げていくと、それらしい地名が確かに存在している。
地図好きにはたまらない小説である。ストーリーもなかなか凝っており、怨恨がこの街には隠されていたということである。この水戸部警部補シリーズは代官山とこの四谷荒木町の2本だけのようだが、是非続編を読んでみたい。それだけ他者の作品とは趣が異なっている印象を受ける。
相棒が前作は勘が鋭く、頭の回転の速い女性巡査部長であったが、本作ではOBの相談員であった。その違いは大きそうに見えるが、どちらもプロの警察官として、読者としても安心感がある。単なるアシスタントではなかったようだ。