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投稿者:Carmilla - この投稿者のレビュー一覧を見る
1820年代のフランスを舞台に、立身出世を目指す貧しい木こりの子(この文庫本では、彼はそれなりに裕福な木材商の子弟とされている)・ジュリアンの野望と転落を描いた、スタンダールの小説。世界史の歴史に載るほど有名なのに、今まで読む機会がなかった。安倍政権発足以来、日ごとに高まる「反知性主義」に対抗するためには古典を読むのが一番だと思いながら書店内を散策していて、たまたま目に入ったのがこの本である。
主人公ジュリアンは実家を出て、地元有力者・レナール家の家庭教師になる。ほどなくして主人の妻・ルイーズと恋愛関係になり一線を越えた関係になるが、主人は二人の関係に疑念を持ち、レナール家に気まずい空気が流れてしまう。主人公の立場をおもんぱかったルイーズは、彼を神学校に入学させることにする。ジュリアンはレナール家の一員になって以降、上流階級の持つ欺瞞性を嫌悪していたが、神学校入学後はその思いを強めていく。彼は自らの知性と美貌を武器に「上流階級」に一泡吹かせようという野心を抱くようになる。
階級間の格差が広がりつつある現在、ジュリアンと同じ野望を抱く人間は増えていることだろう。問題はその野望が「世間をよくしよう」という方向ではなく、自己顕示欲に向かう人が多くなるのでは?ということである。1820年代のフランスに流れる空気が、現代日本にも漂っているのだろうか?
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読んだ理由:レビュー一覧に文学作品を載せたかったw
感想:階級社会における抑圧と葛藤、許されぬ恋を圧倒的な内面描写で表現している。プロット自体はよくできた昼メロのような感じ。「情熱の文学」という表現が見事に当てはまる一冊。
野崎氏の新訳は難解なところもなくすらすら読めた。「文学を読む!」というふううに肩肘を張らなくても、エンターテイメントとして楽しめるものに仕上がっていると思う。
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1830年の七月革命の勃発を予感させる時代。その時代背景としての身分・階級や党派の確執や思想を色濃く受けるなかで、人間関係と恋愛の策略とスリルを克明に描いた小説。
私は、小説を、いかに共感できるか、という視点で読み、評価することが多いが、この作品はそうした普段の視点とは別に物語の筋自体を楽しめた。ジュリアンの持つ、強烈な自尊心と偽善と情熱と崇高な精神は、時代中でかなり個性が強く共感しがたいが、そのこころの動きを一貫して丁寧に克明に描いている、その作者の抜かりのなさが素晴らしい。そして一瞬で移ろう人間の普遍的な心理を細かに、そしてリアルに描けている。上巻の野崎氏の解説で、歴史的背景への理解が深まり、また「この小説は『史上初の、サラリーマンを主人公とする小説』だと述べる研究者(Yves Ansel)もいる」との話と、その解説に納得し、最近流行りのビジネス小説(ハゲタカとか?)のさきがけなのかもしれない、とも思い興味深かった。恋愛という観点から言うと、手練手管の要素が多い中で、男女の心の微妙な変化、機微の中の表層的な部分をよく描いていると思う。
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ロシア文学に負けないくらい登場人物が多い。
神父に教えてもらったラテン語を武器に上流階級の家で家庭教師をする農民の子ジュリヤン・ソレル。
私が読んだ(そんなに読んでない)フランス文学の中では1,2を争うくらい面白いです♪
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Amourの国、フランスの古典に初挑戦。
きっかけは、映画の予告編。
昼ドラっぽい雰囲気+
早世されたなんとかフェリペとかいう
主人公の麗しい俳優に誘われて
いつもと違う分野に手を出してみた。
が、結果は、あえなく惨敗。
自尊心の高さ故に人妻にちょっかい出したり
情緒が全然安定しない主人公が理解できず
そこから燃えてしなだれる恋の駆け引きに
発展するのもよくわからなかった。
そう、私には気持ちと言葉が濃すぎました。
下巻も借りてますが、読まずに返却します。
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やべー。どんな内容だったかすっかり忘れた=3
「まぁまぁ面白かった」気が...。
ラスト、どんなんだったっけ??
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あらすじを読むと青年ジュリアンの恋愛と出世の話のように思われるが、読んでみると副題の十九世紀年代記にふさわしく当時のフランスの社会情勢をよく反映していることに気づかされた。要所要所に派閥の対立やもっと漠然とした体制的な臨場感がかかれており、ジュリアンを通してその時代を感じるようであった。
恋愛小説としては私たちの感覚とはすこし違うものを感じるのが正直なところだが、ジュリアンが恋愛によって支配しようとして逆にに翻弄される様はおもしろく、また悲劇的であった。
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歴史を全く勉強していなくても「とりあえず王党派と自由主義者が対立していてなかなか本音が言えない時代なのね」と納得して読めば大まかな図式はつかめるはず
どうしても心配なら先に解説を読んでしまうのをオススメします
政治の話やら時代を中心にした描写の部分では?となるけれど、おもしろい
普段私小説とか日常を元にした本ばかり読んでいるから、歴史を基にした話は新鮮
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「罪と罰」とは対照的に、主人公が出世欲や感情の激しさ、思考と行動を一致させようとしている点など、自分に投影できる部分が多く、面白い。こんな風に生きたいものだ。
「罪と罰」ではラスコーリニコフは「一人を殺すことで多くの命が救われるならば殺してもよい」と考え高利貸しの老婆をころしたが、結局は罪悪感にとらわれる。一方「赤と黒」のジュリアン・ソレルは、「多くの人間を救うためならば2・3人殺したってかまいやしない」と述べ、最後まで英雄的。非常に対照的な2作品である。
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■学び(見たもの・感じたもの/テーマ)
七転八倒しながらも自尊心を持って精一杯生きること、自らの意志で自己実現のために運命を切り開くこと、そして自分の気持ちを偽らず正直であること。これがインチキまみれの世の中で得ることができる精神の幸福であり、幸せな生き方である。
■感想
何度も読み返したくなるぐらいすごく面白かったです。ぐいぐい引き込まれました。ジュリアンの凛として力強く生きる姿はぜひお手本としたいものです。下巻でのジュリアンとマチルドの恋の駆け引きは、まるでシェークスピアの劇のようで笑えました。また今度は別の訳者の本も読んでみたいです。
満足度を★4つとしたのは、接続詞が明確でないために前後の内容が混乱する個所が何度もあったからです。これは訳が悪いというより、おそらく原文でも同じなのだろうと思います。
とはいえ、内容は素晴らしかったです。ちょうど今年は古典を多く読もうと思っていたところだたので、一気に古典に対する興味が強くなりました。
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恋愛小説の傑作でしょう。
現代日本では見られないような野心満々・肉食男子のジュリアンもその恋人たちも、なぜか芝居がかって冷静に考えるとおかしいのですが、やっぱり読んでいて引き込まれてしまう駆け引きの様子とドキドキの心理状態。
少女マンガのようなフランス文学です。
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浦野所有。
これは理屈抜きに楽しめる小説ですね。恋愛小説というより、痛快な冒険小説の色が濃くないともいえない内容です。時代背景がわからなくても、ストーリーだけで十分、読み進められると思います。
『赤と黒』は『モンテ・クリスト伯』とならび、「これぞ小説のなかの小説」といわれることも多い作品。この世界を触れるためだけにパラッと読むのも悪くないです。
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ジュリアンという若く聡明な主人公の野望と挫折の本である。
野望とは出世と恋愛であり、恋愛のつけにより頓挫する。
フランスでは婚外子が約50%となり、結婚そのものの意味が変貌している。今日であれば死刑にはならない。
この本は実際におきた事件をもととしているので、安定した地位を得ている貴族がなぜそんなことを・・・。という多くの当時の人が思った疑問に応えたのではないだろうか。
また そういうことも起こり始めたんだという、19世紀の時代を表しているのではないだろうか。
様々な事件が今も昔も起きてはいるが、どういう事件に注目が集まるかはその時代精神が反映されるのである。
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『赤と黒』はナポレオン失脚後のフランスで片田舎の職人の息子ジュリアンが、立身出世を目論み上流階級の間隙を渡り歩くサクセス(?)ストーリーです。
この時代で出世をするに当たってなによりも必要なものはお金、高い身分、そして縁故でした。その中でジュリアンに備わっていたものは縁故のみ。それも司祭様の教え子であった程度。彼はその一本の蜘蛛の糸から己の才能と美貌で、新たな糸に繋いで登っていくのです。
上巻においてジュリアンを導いてくれた新たな糸はレナール夫人。
司祭様つてでジュリアンの優秀さを知った町長に子供たちの家庭教師にと雇われて、出向いた家の奥様です。金や身分のことしか頭にない夫と対称的に、人としての尊厳をなによりも重んじるジュリアンの純粋さに夫人は惹かれたのでした。
このレナール夫人は上巻におけるもう一人の主人公といっていい存在です。
夫人がジュリアンを導いた理由は恋心(もちろん不倫)にあり、その熱意は並々ならぬものがありました。
なにより私が感じ入ったのは国王様が町を訪問されるという大イベントに、ジュリアンを無理矢理に親衛隊の一人としてねじ込んだことです。親衛隊とは国王様の身辺を警護するもの。本来ならそれ相応の身分のある者しかなれません。かなりの難事だったはずです。
しかし、それを成し遂げた時の夫人の喜びは想像するに余りあります。普段のジュリアンは(夫人と比べれば)あまり良い服を着たりはしません。お金や身分に関係ない部分に惹かれたといっても、ふとした拍子に恋相手の頼りなさを感じてしまうのでした。もしジュリアンが自分に釣り合うくらいの身分だったなら……。そんな悩みを抱える夫人は一時でもジュリアンが国王様の親衛隊の一人として、立派な衣装を着て馬に跨がって颯爽と町の貴族や金持ち達に並び立つ姿に、どれほどの歓喜があったでしょうか。
その後も夫人はかなり賢く立ち回り、ジュリアンを様々な局面から救い導きます。そんな夫人はとても優秀な人物であるように見えますが、物語開始当初つまりジュリアンに恋をする前は全く違っていました。貞淑で従順ではあるものの、不器用で鈍重なただのお嬢様。
夫人の変化や成長が上巻の見所の一つです。
下巻でレナール夫人はどうなるのか、はたまた新たな女性が登場するのか楽しみです。
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上下巻で1000ページというページ数だけで泣きそうですが、軽快なペースでサクサク読めます。ラストにびっくり。