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歌麿殺贋事件
著者 高橋克彦
歌麿の「幻の傑作」が発見された? 美術界をゆるがすかもしれぬ事件に雑誌編集者の杉原は勇み立ち、研究家の塔馬双太郎の助手をたのむ。しかし、それは巧妙な贋作だった。そして思い...
歌麿殺贋事件
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歌麿殺贋事件 (講談社文庫)
商品説明
歌麿の「幻の傑作」が発見された? 美術界をゆるがすかもしれぬ事件に雑誌編集者の杉原は勇み立ち、研究家の塔馬双太郎の助手をたのむ。しかし、それは巧妙な贋作だった。そして思いがけず、歌麿は謎の絵師写楽でありえたことまで証明されて……。浮世絵ミステリの白眉といえる秀作。(講談社文庫)
目次
- 一章 歌麿の首
- 二章 歌麿捜索願い
- 三章 歌麿真贋勝負
- 四章 歌麿の秘画
- 五章 歌麿カタログ
- 六章 歌麿因果
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紙の本
浮世絵と嘘と偽りと。
2010/10/17 15:34
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
高橋克彦を読むのはこれが二作目。初めて読んだ『写楽殺人事件』のテーマは面白かったものの、読むのに時間がかり、次に手がなかなか伸びなかった。そんなこんなで早一年。ひさびさに読んだ高橋作品は、わたしの好み「ど真ん中」だった。
連作短編小説である本書に収められている短編の数は6編。そのどれもに歌麿の名が登場ずる。しかし本書の最大のテーマは歌麿ではない。
『写楽殺人事件』では写楽に関する「謎」がテーマだったけれど、本書の見所は詐欺師と詐欺師の駆け引き、だ。
主人公は「美術現代」(美術雑誌)の記者である杉原。そしてホームズ役として活躍するのが若手研究者の塔馬双太郎。この二人がタッグを組んで(正確には塔馬の活躍がほとんど、の場合が多い)、しかけられた罠に立ち向かう。時に騙され、時に騙し、何が真実で何が真実でないか、次第にわからなくなる。このドキドキ感が最高にいい。
絵の価値は水ものだ。ある著名人が高評価を下せばその価値は一気に跳ね上がる。また逆もしかり。価格があってないようなものと言っても過言ではない。
真贋を見極めるのは人の目のみ。経験や実績があるからといって、その鑑定者が見誤らないとは限らない。とすれば、客はどこに裏付けを求めるのだ? 高価な価格設定だから安心? これだから、美術の世界は詐欺師にとっての格好の魚場となる。
これは冬狐堂(北森鴻)の世界だ。狐と狸の化かし合い――あぁ、ぞくぞくする。また研究者である塔馬は連丈那智シリーズを連想させる。
各短編のラストは必ずしもハッピーではなく、ほろ苦いものも多い。しかしその塩梅が、不安定で繊細で少し陰鬱な美術の世界に合っている。
塔馬双太郎の活躍がもっと読みたい。塔馬が登場する作品を中心にもう少し、高橋克彦を読み続けることにする。
『歌麿殺贋作事件』収録作品
・歌麿の首
・歌麿捜索願い
・歌麿真贋勝負
・歌麿の秘画
・歌麿カタログ
・歌麿因果
紙の本
コンゲーム的な面白さ
2018/05/02 14:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
一つ前に読んだ「北斎殺人事件」と登場人物の内3人ほど重なりますが、物語的には関連はありませんでした。
なんなのでしょうか?この作品もとても読みやすかったです。これは高橋氏の文体というかスタイルと関係あるのかな?
ところでタイトルにある「殺贋」とは巻末の解説によると著者の造語のようで贋作をこの世から抹殺するという意味合いのようです。
元々は独立した短編として発表された6編を加筆修正して6章からなる長編へとしたもののようです。
元々の6編とも歌麿の贋作で詐欺的に金儲けなどをする様子とそれを暴く主人公といった構成ですが、この手の話で重要な役である悪人どもが今一つ存在感がないというか弱く感じてしまいました。
この手の美術品詐欺を扱ったものでは黒川博行氏の作品に出てくる悪の方がいかにもタチが悪そうで良い味を出しているように私には思えました。
それでもコンゲーム的な面白さは十分にある上に、主人公を通して著者が展開する写楽=歌麿説はなかなか面白く、そちらでも楽しめる作品でした。
この文庫版もカバーは横尾忠則氏でお洒落だと私は気に入ったので、機会があれば兵庫県にある横尾忠則美術館へ行って氏の他の作品も観てみたくなっています。