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電子書籍
ナイン
著者 井上ひさし (著)
愛しき町の息吹を描き出す「私」の東京物語少年の日の熱い感動とレギュラ-9人のその後の人生を語る「ナイン」、よりを戻す男女の話を盗みぎきする話「太郎と花子」など街に生きる歓...
ナイン
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ナイン (講談社文庫)
商品説明
愛しき町の息吹を描き出す「私」の東京物語少年の日の熱い感動とレギュラ-9人のその後の人生を語る「ナイン」、よりを戻す男女の話を盗みぎきする話「太郎と花子」など街に生きる歓びをうたう短篇連作集。(講談社文庫)
目次
- ナイン
- 太郎と花子
- 新婦側控室
- 隣り同士
- 祭まで
- 女の部屋
- 箱
- 傷
- 記念写真
- 高見の見物
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紙の本
あー「昭和」。あー「下町」。温かい。
2011/11/06 17:08
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のちもち - この投稿者のレビュー一覧を見る
こういう日本を代表する作家の本は、少なくとも1回は読まなくてはいけないよね。なんとなく縁がなくてこれまで読んでいませんでしたが、どこかの教育雑誌の「小学高学年への推薦図書」に入ってきたのがきっかけで読んでみた。
70年代から80年代にかけての東京。小岩、亀戸、船橋あたり。都心ではなく、高度成長時代に、少しだけ遅れていた地域、すなわち、いい意味での「旧」と、避けられない「新」が、微妙なバランスで成り立っている街が舞台です。短編なのでその背景はまちまちですが、小説家なのか劇作家なのか、とにかく好奇心旺盛のモノカキが、街中で拾う「コネタ」。それがまた「人間」くさいもので、というか、人間の生活そのもの。小説のテーマにもならないようなものではあるけれども、ひとつひとつの会話、行動から、その背景の推察まで、みごとに「小説的」に仕上げています。
そして、短編でありながら、最後にみごとな「オチ」が用意されているのが絶妙。ちょっと皮肉的な、でも人間だから、っていう下町的な、ノスタルジーも含めて、ホッとするようなオチが最後にやってきます。教育系雑誌の「推薦図書」としてはどうかと思うような「大人の」シュールなオチもありました(個人的にはこれが一番面白かった)。
昔を懐かしむ、ってけして悪いことじゃないですよね。昔のいい思い出(いやな思い出は意識的に或いは無意識に消されているかも)だけに固執して、現世を厭うのはどうかと思うけど、今があるのは、昔があるから、という「蓄積」という考え方に気づけば、素直に昔を「受け入れる」ことができれば、今、そして未来、ってその大切さが違ってみえてくると思う。変わらないのは、主人公たる「人」ですよね。周りは進化して、便利になったり、逆に昔を懐かしんだりしても、それらを思う主体は「人」。少なからず「進化」しているかもしれないけれど、人間そのものは変わらない。だから本書にでてくる人間模様は、30年経った今読んでも、温かくて、なんだか(うまくいえないけど)うれしいんだよね。不思議な感覚だけど、「読んでよかった」という読後感です。こういう本を読む、というのが、自分にとってプラスになる。そんな「出会い」を大切にしたいし、積極的に「読むべき本」に出会いにいきたい。
【ことば】...うまく行かないときは、このことばを思い出してください。『困難は分割せよ』。焦ってはなりません。
なんちゃってコンサルがいうと「ウソ臭い」言葉も、かつての教え子に修道士が言い含めて伝える言葉としては重い。ましてそれが「最後の言葉」ともなれば...大事な愛すべき者との別れの際、自分なら何を伝えるだろうか。そこまで貫ける愛はあるだろうか。