紙の本
祖父が書く「孫」の成長観察記録であり、「祖父」の記録。二種類の「孫の力」。
2010/06/02 16:50
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
長年サルの行動研究をしていた著者に孫娘が生まれた。普通の祖父母なら可愛い孫にとろとろになって終わるところを、著者はとろとろになりながらも、研究で培った知識と重ね合わせて人間を考えてもみる。
孫の成長を描く爺馬鹿の話であり、サルの研究者の「ヒトとサルの成長比較」考察でもある、孫への愛情と研究心が渾然となった不思議な立ち位置を感じる本である。
ここには二種類の「孫の力」が書かれている。
一つは幼児の成長する力。心がどのように出来上がっていくのか、「自分」や「他人」をどのように意識しだすのか、などが日常の小さな素振り、表情からも読み取られているのは、祖父の愛情とともに長年サルの観察て培われた力でもあろう。
身近でじっくり観察しなくてはわからない発達過程の記録としては、確かに著者以上の書き手はないかもしれない。しかし、こういった記録は多数の例をみないと全体像はわからないものである。多くの祖父母世代が存在するようになった現代では、このような記録は結構集められるのではないだろうか。そういうものを集成すれば、著者が知りたいと思った「ヒトの精神の発達」もさらによくわかるかもしれない。この本は世の祖父母世代に、協力を呼びかけているようにも思える。
もう一つの「孫の力」は祖父母への影響力である。孫に接しながら、著者は自分自身の幼い頃、祖父母の存在、幼時であった自分をしっかりと思い出す。そして、自分の精神の形成に幼時の環境がどのように関わっているのか、に思いを馳せる。
孫と接することで生まれる感情・人生への影響などは、進行する高齢化社会に位置づけてもっときちんと評価される必要があるのではないだろうか。孫にとろとろになってしまう祖父母の感情などは、すでに「子供用商品の購買資金源」として経済的にも重視されている。
孫は、祖父母にとっては歯止めのない快感刺激かもしれない。人体は長い間飢餓への対応の必要性で様々な生理・行動調節を構築してきたが、過食対策は発達していないので現代人に「食べすぎ・太りすぎ」が起こる、という仮説はよく聞く。孫とのゆとりある接触も、対応する調節機構を人間は持っていないのではないだろうか。「核家族の心理」や「都会生活の心理」などと同様、社会が変われば異なる心理学のテーマとして「祖父母の感情・行動」も解析の対象だと思う。
孫を観察しながら、孫に影響される。観察者としての祖父(著者)の行動も、当然孫に影響を及ぼしている。それは祖父が孫馬鹿であるなしにも、行動学の専門家であるなしにも関係はない。なんだか「観察することで結果に影響を及ぼす」という物理学の言葉をも想起させることでもある。
各章の扉が、とても可愛らしい(孫だけでなくジイジ、バアバも)。全体としては、やっぱりジイジのとろとろな孫観察記録というべきだろうか。
被験者であるお孫さんが成長し、この本を読んだらいったいどんな感想をもつだろう、そんなことを思いつつ読み終えた。
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霊長類の研究者が孫の成長観察記録をまとめたもの。
霊長類学者が書いたとあったので、学術的なヒト科の動物の孫とのかかわり方を書いたものかと思ったら、
もっと孫への愛にあふれた観察日記だった。
そしてその観察の内容も、
肉体的な観察ではなく、「こころ」の成長を観察したもので
とてもおもしろい。
うれしい、かなしい、たのしい
といった単純な感情の表現から、
頑張りたい、励ましたい、ひみつにしたい
などの豊かな感情をあらわすようになっていく。
そういう心の成長を観察するのは、
なるほど、他人ではなく親でもない祖父という立場はもってこいだ。
愛情たっぷりの目線で、孫娘のこころがつぼみから花開くまで
研究者の忍耐と細やかさをもって観察してまとめた本。
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自分の子供と重ね合わせて、当事者には見えないことに気づかされたり、振り返ったりすることができたのは面白かった。
時々入るサルの観察なども参考になる。
何より、孫に向けられる著者自身の温かいまなざしが感じられるのが心地よい。
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2010.02.21 日本経済新聞で紹介されました。
2010.02.21 朝日新聞で紹介されました。
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じいじからの視点で孫を観察しているところがおもしろい!
霊長類と人間の生育スピードの比較もなるほどとうなずける。
親はついつい視点が近くなるけれど、一歩下がってこどもを見るということを意識できて、私は良かった。
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霊長類学者による孫娘の観察日記。
不思議な魅力を持つ本。
心があたたかくなる。
孫っていいな。
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『孫の力』(2010,中公新書)は,おじいちゃんによる,初孫の成長観察記録です。目に入れても痛くないかわいがりようが察せられて,読んでいて愉快になります。
でも,なぜ,そういった日常的な題材が新書に入ったのでしょうか。理由のひとつは,著者である島先生がサル学者だからでしょう。島先生は,たとえばご自分の娘さんとお孫さんのあいだで音声が交換されるようすを,ニホンザルの母子の場合と比較します。お嬢さんは,父親のそんな観察記録をあまりうれしく思わないかもしれません。
著者は,ヒトの心[mind]が成長する過程を調べようとして,お孫さんの観察記録を始めたようです。本書では,お孫さんの誕生直後から小学校入学直後までの記録が示されています。しかし,そのあいだ,おじいちゃんがおじいちゃんであることをやめたわけではありませんから,観察者は観察対象を明らかに撹乱しています。いいのか? いいようです。
その反作用で,本書の観察者は,観察対象によって撹乱されます。さらに,孫をかわいがりながら,自分をかわいがってくれた祖母の心を,著者は理解しようとします。そのとき,この観察は文学に接近します。
本書には感動的な記述がいくつかあります。著者は,幼いころに聞いたメロディーを,お孫さんにピアノで弾いてほしいと頼みます。このくだりを読むと,人生が一周するとはどういうことかが,たいていのひとに肌で感じられることだろうとぼくは思います。
それに比べると,お孫さんが自転車に乗る練習に著者がつきあっているくだりは,すこし分かりにくいかもしれません。
「孫娘」は,小学一年の夏休みが過ぎたころ,「じてんしゃにのる」と祖父母に宣言します。そこで,「まえに自転車の練習をしていた近くの大学に行く」。著者は,はじめ孫娘が乗る自転車のうしろをしっかりおさえていますが,やがて黙って手を放します。しばらくして,孫娘が,もう手を放していいよと著者に言いますが,
■■■■■
……うしろから私は声をかける。「もう、離してるよ」
「ええ!?」
孫娘は少し驚いて振り返ったのでちょっとふらついたが、持ち直して銀杏並木を走り出した。
■■■■■
著者が1969年に安田講堂のなかで闘った東大生のひとりであること,そういった卒業生に東京大学は図書館の本一冊さえ閲覧させようとしないこと,フリーランスの研究を続けた著者が本書で他大学の教授を恩師と呼んでいて,その大学から博士号を授与されていること,そして,著者が(著書『親指はなぜ太いのか』の記述によれば,すくなくとも2003年の時点で)いまなお東京都文京区に在住していること,などを考えあわせると,「銀杏並木」のある「近くの大学」構内でおじいちゃんがお孫さんの自転車の練習につきあっている姿が,ひとつの映画のラスト・シーンのように思われます。
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野生動物の研究者(特にサル)が自分の孫を観察した記録。というと研究者の視点で淡々と科学的に書かれているのかというと、半分は普通の孫大好きなおじいちゃんの観察記録になっているところがまたいい。
精神的な成長が丁寧に書かれて2歳の娘を持つ自分にとっては共感もし、参考にもなった。
6歳までの記録なので定期的に読み返したい。
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平成23年1月27日読了。イヌは命令−服従型だが、サルは命令−欺瞞型だと思うようになった。
人間はイヌではなく、サルの仲間だから、禁止されると裏をかく方法を探す。(P28)
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[ 内容 ]
ニホンザルにも孫がいる。
しかし、サルのおばあさんは孫を特別な存在としてとくに意識することはない。
だが、ヒトはちがう。
孫と祖父母とのつながりには、単なる生物的な関係をはるかに超えた、社会的・文化的な意味が隠されている。
本書は、ニホンザルやアイアイの生態を研究してきた研究者が、その手法でみずからとその孫を観察した貴重な記録である。
かつて孫だった人、これから孫を持つことになるすべての人へ。
[ 目次 ]
1 ほほえみの生まれるとき
2 心は花のように開き
3 笑い
4 新しい歌、新しい遊び
5 遊びを食べて子どもは育つ
6 恐怖とその克服
7 心の枝は展がり
8 「ごっこ」に夢中
9 孫と祖父母
10 心の香り
11 彼方へ
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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猿の観察が専門の動物学者の、孫観察日誌。0〜5才の保育園児の孫娘ちゃん、あの瞬間が重要な成長の証だったのか!と、我が事のように、楽しく読みました。観察の記録が専門的かつ愛情たっぷりでなごむ〜
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ほぼ半分を読んでいる途中です。
思っていた以上に素晴らしい本だと思いました。
まぁ・・・独身で子育て経験ゼロのオヤジに云われても説得力ないと思われますが・・・
ただし、少子・高齢化が進んだ日本において、子育ては両親・祖父母だけでなく、地域を含めたおおらかなものである必要があるのでは?と感じている。
もちろん、祖父母の代わりとしての、地域のオジサンオバサンの関わりの重要性だ。
人類にとっての子育てとは、両親と子供だけの閉じた問題ではないということだと。
本書の残りは大変興味深い!!!
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猿の研究者である著者による、自らの孫(つまりヒト)が生まれてから小学校に入学するまでの『観察』の記録。
動物学者だけに猿との比較もするのだけれど、孫の成長の様子がすごく生き生きと描写されていて、読んでいるこちらまで嬉しくなるように感じました。
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読み始めた途端、あまりに面白くてマズイ!と思った。
早く先を読みたい。でも読みたくない。だって読んだら読み終わるじゃない。
この恍惚の時間を手放したくない。だから日に日に読むペースが落ちる始末。結局読み終えるまで3ヶ月を要しました。(馬鹿)
筆者はニホンザルやアイアイ研究の第一人者です。
さすが研究者。観察が細かい。よくぞここまで書き留めた。いや書き留め続けた。なんと0歳から6歳までの膨大な記録と、そして考察です。
「モリスの言うような無条件に『かわいい信号』があって、『幼児はその信号を備えているからかわいいのだ』というような動物行動学はエセである。」
「イヌは命令―服従型だが、サルは命令―欺瞞型だと思うようになった(中略)禁止で赤ん坊が育つことはない(中略)人間はサルの仲間だから、禁止されると裏をかく方法を探す」
「食卓のふちを伝い歩きしながら『あー』と赤ん坊が言う。新聞を読んでいた母親は、ほとんど無意識の様子で『あー』と答えた。聞いている私は驚く。それは、ニホンザルでは『鳴き交わし』と呼ばれている声のやりとりとそっくりだった。」
「孫娘は坐り込んで、紙をばらばらと扱いながら、『うらうらうらうら』と何事か話し始めている。『意識化だ』と私はとっさに思う。」
日常の些細な一コマが研究者の理性の目で輝き出す。
でも理性だけではありません。
「心は花のように開き」、「子どもは遊びを食べて育つ」。
「ふくらむ心が始め出す表情を笑いと呼ぶのだろう。笑いをこらえるとき、体の中にはふくらむものが必ずある。」
「なんと! 人は日々、自分を超えようとする動物なのだ。」
「未来はすでにここに、孫たちとしてあるのだから。」
研究者としての理性と祖父として深い愛情の見事な融合。
決して人間の子育てを動物と比較した書ではない。命の物語を記した愛の書だ。
読んでいるうちに孫が本当に欲しくなる。(自分の息子(2歳)は?)
育児に悩み解決は大切だ。便利も自分時間も大切だ。でもそんなこと些細なことジャマイカ。何をさておいても子どもと関わりたくなる。育児書かくあるべし。
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猿の観察が専門の動物学者の孫娘観察記録。親という直接的な庇護者ではなく祖父という客観的かつ直近の子孫という目での観察は、もうメロメロに可愛いいだろうな。人間の社会的かつ生き物としての成長を観察することは自分の成育を追体験することに他ならない。人生の締めくくりの至福。
メロメロジイジの時間をもてる人は幸いです。