恍惚の人(新潮文庫)
著者 有吉佐和子 (著)
文明の発達と医学の進歩がもたらした人口の高齢化は、やがて恐るべき老人国が出現することを予告している。老いて永生きすることは果して幸福か? 日本の老人福祉政策はこれでよいの...
恍惚の人(新潮文庫)
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商品説明
文明の発達と医学の進歩がもたらした人口の高齢化は、やがて恐るべき老人国が出現することを予告している。老いて永生きすることは果して幸福か? 日本の老人福祉政策はこれでよいのか? 老齢化するにつれて幼児退行現象をおこす人間の生命の不可思議を凝視し、誰もがいずれは直面しなければならない《老い》の問題に光を投げかける。空前の大ベストセラーとなった書下ろし長編。
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老いるということについて考えさせられる。
2008/11/19 22:08
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
恍惚の人 有吉佐和子 新潮文庫
もう何年前の本だろう。出版されたのは私が中学生の頃だと思う。読むのは初めてです。恍惚=老人のぼけです。同じ敷地に別棟で住む姑(しゅうとめ)が亡くなり、残った認知症の舅(しゅうと)の世話は長男の嫁がするというところまできました。夫の父のめんどうをみるお嫁さんの苦労と自分や夫も認知症になるのではないかという不安と怖れ。厳格でわがままだった夫の父が幼児へと回帰する。自分のこどもたちの顔と名前を忘れる。
私が7歳のとき祖母と仲の良かった近所のおばあさんが自宅で首吊り自殺をしました。映画で見た老母を背負って山に捨てに行く「楢山節考」しかり、あるいは自らひとりで命を絶つために山へと入っていった大昔の年寄りたち。長生きという夢が実現したというのに、生きるということは今もなお苦しい。
後半部分はまるで別のお話のようです。認知症の男性に対して周囲の者たちが早く死んで欲しいと望む経過が綴られていたのですが、最後には静かな平和が訪れます。「老いる」ということについて考えさせられました。
先見の明に驚く
2017/05/31 15:02
5人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pope - この投稿者のレビュー一覧を見る
本当に有吉佐和子の先を見る目はすごい。
この作品も全然古くささを感じない。
舅と嫁の1対1の壮絶な介護の記録。
こんなに読ませる作品だったとは
2023/09/14 11:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ろろろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在2023年、この作品は今から約50年前に刊行されています。なのに全く隔世を感じることもなく、そして現代の高齢社会の問題をすでに見通していた作者の洞察力には驚かされます。またこれは介護だけの問題ではなく、フェミニズムの観点から見ると日々の家事や義家族の世話など女性に押し付けられることへの反発もすでに作者は問題提起しています。
だからと言って怒りや不満ばかりで暗い内容ではなく、時にユーモアがあり、本音の毒にもクスリと笑ってしまったり、そうそう、とうなずいたりと、女性目線でなければ書けない作品だと感じました。男性にも読んでもらいたい素晴らしい作品。
古さを感じさせない
2017/12/11 09:48
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ポッター - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在、介護、老人の痴呆問題等は、社会的な認知は進んでいるが、当事者の苦悩は同じだと思う。
今から、40年前に書かれた小説ではあるけれども、今の状況からも古さを感じない俊逸な作品。
恍惚の人は幸せ
2014/08/24 22:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:英現堂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
40年以上も前に書かれた本であるが、現在最もホットな問題でもある。
もっと暗い話かなと思っていたが意外とそうではなく、深刻ではあるがユーモラスな一面もあった。アルツハイマーになった親を持つ家族の物語。周りの人間にとっては、その苦労は大変なもんなんであるが、このお父さんは、子供にかえって楽しんでいるようにも見える。
徘徊したり、下の世話が大変であったりと苦労が多いが、もっと深刻なのは、当人の苦しみが続くことであると思う。植物人間となり、全くコミュニケーションがとれなく、生命維持だけの為に多額の費用が嵩むのも辛い。
<恍惚の人>になった人は幸せかもしれない。
老人介護文学の嚆矢
2001/01/15 15:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:remi - この投稿者のレビュー一覧を見る
上野千鶴子さんの『上野千鶴子が文学を社会学する』という本のなかに、「老人介護文学」という新しい文学のジャンルとでもいうべきものが示されています。
上野さんの本の中で「老人介護文学」として紹介されていたのが、この『恍惚の人』と佐江衆一さんの『黄落』でした。というわけで、本書を読んでみることにしました。
舞台は東京。夫の両親と同居する共働き夫婦と高校生の息子。この物語は夫の母親が死ぬところから始まります。残された痴呆の父親。それを介護する仕事をもつ嫁。なにもしない夫。老いらくの恋。など、いまでも十分通用する物語のような気がします。
非常に面白い1冊でした。