- 販売開始日: 2014/03/04
- 出版社: 早川書房
- レーベル: ハヤカワSF・ミステリebookセレクション
- ISBN:978-4-15-077455-4
泥棒はクロゼットのなか
著者 ローレンス・ブロック (著) , 田口俊樹 (訳)
まさに絶対絶命だった。盗みに入った家で宝石を物色していた私は、ひょんなことからクロゼットに閉じこめられてしまったのだ。鍵をこじあけ外に出ると、なんとそこには女の死体が!そ...
泥棒はクロゼットのなか
商品説明
まさに絶対絶命だった。盗みに入った家で宝石を物色していた私は、ひょんなことからクロゼットに閉じこめられてしまったのだ。鍵をこじあけ外に出ると、なんとそこには女の死体が!そのうえ、宝石を詰めた私の鞄までがどこかへ…… 小粋な泥棒探偵の活躍を軽妙に描くシリーズ第二弾
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
盗め!
2003/12/17 01:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:すなねずみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
小粋な泥棒探偵バーニイ・ローデンバーが、大好きなのである。
まずは彼の前口上から。
<他人様のものを自分のものにするときは、いつも心をくすぐるものがある。いかにも不埒なことだ。それはわかっている。私だって悩んだときがあるにはあった。でも、いまはどうでもよくなった。私の名はバーニイ・ローデンバー、こそ泥だ。盗むことが好きなのだ。ただ、それだけのことだ。>
バーニイという男、とにかく、軽やかなのである。どんな状況でも、深刻さの欠片も感じさせない。こんなふうに生きたいものである、ほんとうに。
そして、田口さんの翻訳がまた軽やかで洒落ている(個人的には、今の日本人翻訳家のなかではこの人がナンバーワンだと思う。田村義進さんも好きだけど。翻訳本ギライの人は、この二人の訳したものを読めば、かなりの確率で「翻訳嫌い」が治るはず)。
<「“男は誰も愛するものを殺すのだ”」とナイスワンダーが割ってはいった。「“その男たちに聞かせたい。臆病者はキスで殺し、勇者は剣を選ぶということを”そして、歯医者はメスを使うということを」
「しゃれてるね」とトドラス。
「オスカー・ワイルドだ」
「気に入ったよ」
「最後の、歯医者云々を除いてね。オスカー・ワイルドはそんなことは言わなかった」
「そりゃそうだ」
「おれの詩を足したんだ」
「わかった」
「ぴったりくるような感じだったからね」
「わかったってば」
ジリアンはいまにも悲鳴をあげかねない、と私は思った。>
ブロックは最近「ローレンス・ブロックのベストセラー作家入門」という本を書いたけど(この本もとっても面白い。なにしろ、大いに笑える。どんな人であれ、買って損はしないと思う)、そこにはこんな一節がある。
<さきざきの計画を立てたり、小説全体のことを心に描き始めると、私はきまって恐怖で痺れたようになる。この世に完全なものなどないし、考えられるかぎり、そんなものは作り出せないと堅く信じている。しかし毎朝起きて、その日タイプライターのまえで過ごすあいだに起こることだけに精神を集中できるかぎり、私としてはうまくやっていけるようなのだ。その結果、本はうまい具合に形になっていく。
一日ずつの積み重ね。これが私には効くようだ。そして、影響を及ぼせるのは今やっていることだけだということがわかれば、ものごとはずっと処理しやすくなるのだ。>
どうにも引用だらけで、見苦しい。これは「書評文」ではない。
まあ、それはそうなんだろうけど、「こそ泥」バーニイ・ローデンバーに倣って、こんなふうにひたすら盗んでみるのも悪くはない。ブロック自身「創造的な盗用」を勧めているしね。
最後にバーニイ・ローデンバーの話に戻ると、このシリーズは決して斬新なトリックやら大どんでん返しやらで読ませるものではなくて、とにかくその場その場、一瞬一瞬を目一杯に楽しめるような作りになっていて、どこから読んでも(それこそほんの一節だけをパラパラ眺めていても)、なんだか仕合せな気持になれるのである。それはブロックが「影響を及ぼせるのは今やっていることだけだ」ということを、本当に「腑に落とした」形で理解して書いているからなのだろう。
このシリーズを田口俊樹さんの翻訳で読めることは、ひとりの日本人として、なんとも仕合せなことである。うん。