かわいい顔して……

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者：読み人　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　私、恥ずかしながら、「負け犬の遠吠え」が話題になるまで、
酒井順子さんのことを、全く知りませんでした。
　酒井さん、雑誌ダ・ヴィンチの記事でも、なにか、高層ビルの一室に、
めがねをかけてちょこんと座っている写真が一枚あったのみ、、。
一応、ちょっとニコっとして、御機嫌の様子。
うーん、どんな人なのだろう？？。
　本書は、人が様々な状況でみせる微妙な表情についての、エッセイです。
執筆のきっかけは、結婚式で新婦の友人たちが見せる笑顔の影に
様々な微妙な表情が、見られた為だとか。
　本当に、人って、社会があるため一応、取繕ってはいますが、
微妙に色々な表情をみせます。
　私(男性)が、気になっていたのが、レンタルビデオでの、
アダルトコーナーでみせる男性の顔です。
　自分がどんな表情でうろうろしているのか、又、みなさんが、どんな表情して
いるのか、しかし、このアダルトコーナーでは、その場を円滑にするための
暗黙のルールがありまして、男性同士、極力接触をさける傾向にあります。
あんたのプライバシーを守るから、俺の邪魔をするなという、空気。
そのため、同じ陳列棚で、ビデオ(DVD)を捜すというのさえ、避ける傾向にあります。
　で、あんま他人の表情を伺えません。
まぁ、選ぶのに一生懸命で他人を気にしてないのかも、しれませんが、、、。
　と思っていると、本書でも、ありました。
「エッチ顔」という章が、酒井さん、なんと、この男性の悲しい性(さが）の
表情を、観察するのに、なんと、フランス映画の棚の前から、男性を覗き見、、。
フランス映画の棚って、ちょっと、”S”過ぎます。
　一応、アダルトビデオで、男性をいじめ過ぎた弁解のためか、
自身の後学のための、レディコミ購入の話も、載せられていますが、、、。
　又、電車利用というものが、いかに社会性を身につける勉強になるかということが、
描かれています。
　後ろに並ばれた、状態での切迫した、自動券売機での切符購入。
滞りなく自動改札を通過するためのプレッシャー。
いつ電車が来るかもしれない状況でのキオスクでの物品購入。
　合理一辺倒の停滞、遅延、緩慢が、一切許されない状況
が、展開されます。
　ここまで来ると、どこか、可笑しささえ感じられます。
私が、もう一つ個人的に表情が出るなぁと、思うのは将棋の対局です。
プロ同士の場合、極力ポーカーフェイスで対局は展開しますが、
対局後は、どんなに取繕っても、敗者は、落胆の表情が、
勝者は、余裕の表情が、伺えます。
　悲しいのは、プロの場合、負ける側が、終局寸前に、
自身の負けを読み切るときが、あります。そのとき見せる、
一瞬の悲しいそうな表情は、忘れられません。
　本書で思ったのは、逆にいうと、人って、どんなに社会化されても、野生の部分が
残っていて、表情は隠せないと、いうことです。
　逆に、多少喜怒哀楽があっても、良いんじゃないか、とさえ思えました。