紙の本
運動を習慣にするにはこの本を読むしかない!
2017/09/19 18:56
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投稿者:あした - この投稿者のレビュー一覧を見る
「運動が脳のはたらきを活発にしてくれると分かっているから運動しようと思える。」
ただ分かっているだけでは、運動を習慣化することは難しい。この本が「運動の習慣化」の手助けをしてくれる。
・運動の数々のメリットを教えてくれる
・「運動する→頭がよくなる!」の過程を
詳しく教えてくれ、脳の変化をイメージ
でき、モチベーションが上がる
・具体例をあげ、運動の習慣化が生活に
どのような変化を及ぼすか、教えてくれる
身体と脳と心が繋がっていることを、改めて思い出させてくれる本。また具体例は心を打つものがあり、「どう生きるか」を考えさせてくれる。おすすめです。
電子書籍
脳と運動の関係について再考させられた。
2015/11/22 23:19
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投稿者:デラノザウルス - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書から学んだことを要約すると、運動することで脳は活性化しより良い人生を送ることができるということだった。非体育会系の自分にとっては目から鱗の考えだった。以前は運動すればするほど寿命は縮まるとすら考えていたが、文字通り180℃考え方を改めた。1ヶ月に1回を目標に定期的に登山をするようになり心身ともに以前よりも健康になった。何より毎日が楽しくなった。「脳を鍛えるには登山するしかない!」と自分で納得して登山ができるようになった。良書である。
電子書籍
運動と脳の活性化について解説している本書
2018/06/07 06:11
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投稿者:なつめれいな - この投稿者のレビュー一覧を見る
最新の研究結果から、運動が脳の活性化に及ぼす影響について書かれています。
歩いたり、何か軽い運動をしたりしている時に何かをひらめくという経験をしている人は多いでしょう。
必ずしも走る必要はありませんが、ウォーキングや何らかの軽い運動を実践してみようと思えます。
紙の本
運動がしたくなる本
2020/05/13 10:05
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投稿者:こー - この投稿者のレビュー一覧を見る
運動のメリットがこれでもかと書かれています。
運動をすることで脳が鍛えられ、子供の成績向上や認知症予防、不安、パニックに強くなりより活発に過ごすことができるというのが主な内容。
読み終わった後思わずスクワットを始めちゃうくらい説得力がありました。
紙の本
運動したくてたまらなくなります。
2016/02/16 11:01
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投稿者:やま - この投稿者のレビュー一覧を見る
運動を”処方”されている精神科医の著書。
薬を全否定されている訳ではなく、ケースに応じた併用を提言されている。
賢くなりたいという思いに触れてきたこの本。
蓋を開けてみれば、出るわ出るわ。運動が効果的だったことどもがこれでもかと詰め込まれています。
・学習
・ストレス
・不安
・うつ
・注意欠陥障害
・依存症
・ホルモンの変化(PMS、妊娠、産後のうつ、閉経)
・認知症
逸話的なエピソードと様々な研究者が得たデータ、運動が作用する仕組みについての詳しい理論がみっしり詰まっていて、情緒面、理性面、あらゆる方面から説得にかかられます。
(参考文献のリストは付いていませんが…)
読み終えれば、運動がもたらす可能性にわくわくして、いてもたってもいられなくなっている自分に気づきます。
どうやら重要らしい心拍数を測ることができる機器をついつい購入してしまいました。
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投稿者:マルタン - この投稿者のレビュー一覧を見る
運動で体の細胞を目覚めさせてから脳を使うと脳細胞も動きやすいということとですね。
ウォーキングは続けることが大切。
紙の本
目からウロコ・・・
2016/12/24 10:59
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投稿者:カニ叔父さん - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書籍第1刷発行時期より10年前後での研究成果だそうですので、近々では既に20年弱程度になるのでしょうか。一言で言えば、脳を鍛えるためには、運動が良いと言う内容です。
脳を鍛えるとは、一体どう言う意味であるのか、から始まり、脳を鍛える事で
1.加齢に伴う記憶力低下の防止、維持、加えて、記憶力の増強
2.脳という臓器の病気(最近は、この様な呼称がされているそうです)、いわゆる鬱等の症状への改善効果
3.脳内での、仕組み、機能回復改善がみられる、と言う実験結果
等の紹介より、運動を奨励しています。
一番、驚かされたのが、高齢者の認知症の改善、及び脳内血管で軽度な梗塞が発生した場合、新たな血管バイパスが構築され血液循環の妨げ(俗に言う脳内での血管損傷による脳梗塞、脳溢血等)抑制を図る、と言う点でした。まだまだ、近々の研究着手、その一部の成果による報告のため、今後も大いに期待されている研究分野であるとか。
僕は、本書籍読書後、周囲の知人に対して本書籍読書の薦めと、ランニングの薦めを実施しています、が、当の本人、つまり僕自身は、未だ何も実施できていない・・・と言う状況です。
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投稿者:なま - この投稿者のレビュー一覧を見る
運動することが、どうして学習を助けることになるのか?著者は、運動することで。気持ちが良くなり、頭がすっきりし、注意力が高まり、やる気が出てくると書いている。この本を読めば、どんな人でも何らかの運動を始めたくなるはずである。もちろん、運動をしている人が読めば、気分良く、さらに運動に取り組むことができる。
紙の本
秘めた力
2016/11/29 10:07
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
脳には解明されていない領域が、まだまだあるようだ。隠された力を発揮するには、すぽおーつを通して心体の一体化が大切なのかもしれない。
紙の本
運動の大切さが分かる
2016/05/17 17:51
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投稿者:匿名 - この投稿者のレビュー一覧を見る
運動はした方がいいとか、現代人は運動不足と言いますが、分かってはいるが、何かぴんとこないところがありました。でもこの本を読むと、納得するものがありました。
電子書籍
題名の通り
2018/05/05 08:30
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投稿者:しずく - この投稿者のレビュー一覧を見る
不安障害と診断されてから半年。
未だジム通い(ランニングや水泳)が出来ずにいる。
電子書籍
やる気になった
2015/09/12 18:10
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投稿者:KYU - この投稿者のレビュー一覧を見る
忙しい時こそ、運動だ、と考えるようになりました。本は、運動が大事だと、豊富な事例が連発してまして、ちょっと、くどい感ありますが、運動しかないと思わせてくれます。
紙の本
運動しよう
2018/06/29 02:25
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投稿者:きりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
運動することで脳が活性化するみたいです。が、アスリートの脳がみんな活性化されているのかと言われると疑問ですよね……適度がいいの?
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運動でいかに脳を鍛えられるか、科学的根拠がびっしり。専門の医師である著者が義務教育の事例から医学会の歴史も織り交ぜて、編集に2年かけて丁寧に解説。読み終える前に、毎日の運動計画を作ってジムの会員になってた。
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<脳を鍛えるには運動しかない>
(ネーパーヴィルの生徒の例を出し)ここまでくれば、運動が3つのレベルで学習を助けていることは十分のわかりいただけたと思う。まず、気持ちがよくなり、頭がスッキリし、注意力が高まり、やる気がでてくる。
30分のジョギングを週にほんの2、3回、それを12週続けると、遂行機能が向上することが確認された。しかし、(略)もっと難しい動きに挑戦することも大切だ。(略)(複雑な動きを教え込んだラットは単純な動きのラットよりも、小脳のBDNFが35%増加していた)。
有酸素運動と複雑な動きはそれぞれ別の有益な効果をもたらすのだ。
余分なものをそぎ落とすと、人間に元々備わっているストレス反応は、危険に集中する、反応を起こす、将来のためにその経験を記録する、という3つに絞られる。おそらく、この将来のための記憶というのが知恵なのだろう。科学者たちは最近にあってようやく、ストレスの役割は記憶を形成し呼び起こすだと気づき、そう説明するようになった。
扁桃体の仕事は、入ってくる情報の強さをはかることで(ある。)、その情報は生存に関わるものもあれば、そうでないものもある。恐怖に限らず、強い感情を引き起こすもの、たとえば、陶酔感や性的興奮なども扁桃体に甘受される。(略)ニューロンっは「よい」欲求と「悪い」欲求を区別しないということだ。
それはわたしたちが、その興奮状態から文字通り走り出ることもできるということだ。
(略)精神が体に影響を及ぼすように、体も精神に影響を及ぼすことができる。体を動かして精神状態を変えるという概念を受け入れている医者は多くない。まして世間一般で認知されているわけでもない。しかし、これはわたしの研究の基本テーマであり、ストレスと特に関係が深い。結局、闘争・逃走反応の目的が、人間を行動に駆り立てることである以上、体を動かすのはストレスの悪影響を防ぐ自然な手段なのだ。
脳がストレスを感じているときに入ってきた情報は、記憶になろうとしても、ニューロンの大半が遮断されているので自分用の回路にニューロンを取り込みにくい。その状況で記憶となってのこるには、高いハードルを越えなければならないのだ。
これで、ストレスに反応しているときに、ストレスと関係のない情報が記憶されてない理由が説明できそうだ。また、慢性ストレスのせいでコルチゾール
が多い状態が続いていると、新しい情報が頭に残らないことや、うつ病の人がものを覚えにくいことも説明が付く。(略)ストレスがかかりすぎると、のちに説明するように、ペトリ皿効果が現れる。コルチゾールがニューロンを蝕み始めるのだ。
「運動が習慣になってからは、ワインを飲んだりなにか食べたりしなくても、幸せな気分、壮快な気分を感じられるようになりました。運動は欲しいもの、渇望しているものの代わりになるんです。つまり、脳の欲求を満たしてくれるということ。それに、目先のことにとらわれず、その先を見られるようになりました」
P92
連鎖的に放出される修復分子の中でもきわ��て協力なのは、脳由来神経栄養因子(BDNF)、インスリン様成長因子(IGF-1)、繊維芽細胞性成長因子(FGF-2)、血管内皮成長因子(VEGF)などの成長因子だ。これらについては第2章で説明した。とくにBDNFはエネルギー代謝とシナプス可塑性の両方で役割を担っているので、ストレスを研究するものにとっては興味深い因子だ。BDNFはグルタミン酸によって間接的に活性化され、細胞の中で抗酸化作用と保護タンパク質の生成量を増やす。また、先にふれたようにLTP(長期増強)を促進して新しいニューロンを成長させ、脳をストレスに対して強くする。脳のストレス耐性を強める手段として運動が望ましいのは、それがほかのどんな刺激よりはるかに多く成長因子を増やすからっだ。FGF-2とVEGFは、脳内で生成されるだけでなく、筋肉の収縮によっても生成され、血流によって脳に運ばれ、さらにニューロンを支援する。
P99
運動後に起きる変化によって、脳は最高の働きをするようになる。闘争・逃走反応が起きる壱岐値があがるだけでなく、先に述べたニューロンの回復のプロセスが促されるからだ。運動によって細胞内のエネルギー産成はより効率的になり、有害な酸化ストレスを増やすことなくニューロンが必要とする燃料を供給できるようになる。廃棄物フリーラジカルも生じるが、それを処理する酵素も作られる。(略)運動はストレス反応を誘発するが、それほど極端でなければ、システムがコルチゾールであふれかえることはない。
P100
有酸素運動はBDNFの分泌量を増やす。
(略)力学的なレベルでいえば、運動は筋紡錘の静止張力を緩めることで脳にフィードバックされるストレスを撃退する。体が緊張していなければ、脳は自分もリラックスしていいだろうと判断するわけだ。
P105
予想もしていなかったことだが、パイルスの人生の中でランニングは中心的な位置を占めるようになった。たばこをやめ、体が重く感じるからと、肉を食べなくなった。個人的な関心を職業に結びつけてスポーツ精神科医となり、けがをして体を動かせず、うつになった選手を診るようになった。
P116
エリプティカルマシンの運動は少し筒週間になり、毎朝30分、マシンに乗るようになった。その時期の彼女(不安障害のエイミー、離婚や離職を抱えていた)は楽しいと思えることはほとんどなかったが、運動だけは次第に楽しめるようになった。(略)そうするうちに不安の「症状」をコントロールできていると思えるようになってきた。(略)不安やパニックにおそわれたら、10分か15分マシンをこげば、落ち着きを取り戻せることを学んだ。
P118
体が興奮状態になっても、不吉な知らせとは限らないし、生命に関わることでもないのだと、時間をかけて脳に教え込むのだ。認識レベルでの誤解のプログラミングをし直すのである。
有酸素運動をすれば、不安がたちまち解消されるという事実は、ずいぶん昔から知られていた。
P120
不安とはおそれだが、それではおそれとは何だろう。神経学的に説明すれば、恐れとは危険の記憶である。不安障害になると、脳は常に恐ろしかったときの記憶を再生しようとする。すべては扁桃体が警報を響かせたときに始まるが、通常のストレス反応と違っ��、不安障害の場合は警報か女神号が適切に作動しない。(略)
こうした認識のずれが起きるのは、ひとつには前頭ぜんやが扁桃体をしっかりコントロールしていないためだ。(略)歯止めがかからず、過度に興奮した扁桃体は何でもない状況をことごとく生命を脅かす危険と見なし、記憶に焼き付ける。その記憶は互いに結びつき、不安が雪だるま式に膨れ上がる。
P122
(不安障害の患者と健常人で)差がでるのは恐ろしくない刺激に対する反応の方だ。ほのぼのとした写真を見せられると、たいていの人は扁桃体の活動が一気に穏やかになるが、不安障害の扁桃対は恐ろしい刺激の時と変わらない反応を示した。危険と安全の区別が付かないのだ。
P126
パニック障害の人に、イミプラミンとベータ遮断薬の療法を処方する場合もある。前者は不安を鎮め、後者は体をリラックスさせる。(略)実は運動も、これらの薬と同じ経路で心身に影響することがわかっている。つまり、二つの引き金に安全装置をかけるのだ。
P130
運動すると心筋から心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)が分泌されそれは血流に乗って脳まで送られ、血液・脳関門を通り抜ける。脳に入ったANPは飼い葉の受容体にくっついて、HPA軸の活動を調整する。(ANPは、脳内でもせいはんかくや扁桃体のニューロンで生成・分泌される。せいはんかくも扁桃体もストレスと不安に関して重要な役割を担っている)。
P133
精神科医で長距離ランナーのキース・ジョンズガードはCBTに運動を組み合わせるとその効果が劇的に上がることを発見した。著書「うつと不安を克服する」ではランニングによって認知を再構築し、広場恐怖を値労する方法が紹介されている。
P136
研究によれば、不安障害の人にとって気晴らしはどんなものでも効果があるようだが、運動の抗不安効果の方がそれらより長続きし、しかもここにあげるほかの利点がある。
・筋肉の緊張をほぐす
・脳の資源を作る
運動によってセロトニンとノルアドレナリンを瞬時にも長期的にも増加させられることはすでにご理解いただいたはずだ。(略)運動はまた、(略)GABAやBDNFも増やす。
・別の効果があることを教える
生物学的な「すり替え」で、体に出た症状から脳がパニック発作を予想しても、それが望ましい症状であることを教え込んでいくのだ。
・回路を作り替える
・立ち直りが早くなる
・自由になれる
P139
さきごろわたしは、パニック障害を持つ高校生の治療を始めた。(略)とたえば、ランニングをして心拍数があがってくると、パニックになるかもしれないと不安になり、心臓発作を起こして心でだれも見つけてくれないのではないかと心配になる。(略)しかし、その一方で、肉体的な興奮になれることができれば、そのような勧請を克服できることを理解している。
(略)わたしは薬と運動を組み合わせれば、すばらしいアプローチになると考えている。薬によって即効性の安心感を提供し、運動によって不安の根幹部分を攻撃するのだ。
P141
わたしはその若者に「きみにとっていちばん必要なのは誰かと運動することだ」といった。パニックになる人��べてにいえることなのだ。安心なだけでなく、人がそばにいるだけでセロトニンの値はすぐに上昇するからだ。「心拍数の上昇が好ましく思えるようになるまで、自宅か、その近所で運動しなさい。楽しめる運動を見つけなければいけないよ」と指示し、彼のパニックは遺伝的な要因が強いようなので、「真剣に取り組みなさい」と念を押した。彼は、最低でも毎日15分の激しい有酸素運動ーランニング、水泳、エアロバイク、エアロボート、なんであれ心拍数をあげる運動ーから始める必要があった。激しい、ということが特に重要だ。実験により、激しい運動だけが、不安による肉体的な興奮に対する感受性を和らげることがわかっているからだ。
P146
有酸素運動は鬱病の症状全般に効く。(略)(うつは)ニューロンのつながりも蝕まれているのだ。運動はそうしたつながりを元通りにする。
P154
運動はエンドルフィンを増やすだけでなく、抗うつ薬のターゲットになっている神経伝達物質をすべて調整する。運動すると(略)ノルアドレナリンが急増する。(略)
運動はドーパミンも放出させる。(略)習慣的に運動するようになると、脳のドーパミン貯蔵量が増えるだけでなく、ドーパミン受容体を作る酵素が生成され、脳の「報酬中枢」にある受容体そのものが多くなる。
P160
(うつに対して)薬の効果がなくても、運動なら効果がある人がいることが明らかになった。
P163
ストレスホルモンのコルチゾールが多いと、海馬のニューロンは死んでしまう。(略)ニューロン間の結合は途切れ、シナプスの成長は止まり、樹上突起はしなびていく。(略)彼らが否定的な考えから抜け出せない理由の一つがこれで、海馬は別の結合を作るための枝を伸ばせなくなり、否定的な記憶を何度もたどり始める。
P164
(アレクサンダー・ニクレスクはうつを)希望が全くない環境で資源を保存しようとする生存本能だと述べている。
P166
BDNFは抗うつ薬が効くために必要な要素であることが察せられる。
P168
BDNFの不足がうつの原因だと実証した人はいないが、それに挑戦した人は多い(略)。もっとも効果が高かったのはECTで2.5倍まで増えたそうである。
P170
彼女(メイバーグ)は、抗うつ薬が効いた患者と、認知行動療法で効果のでた患者のPETスキャンを比べて、この2つのアプローチが変円形の活動に正反対の方向から働きかけていることを発見した。抗うつ剤はボトムアップ方式で作用するようだ。つまり、まず脳の下位組織である脳幹に働きかけ、その影響が辺縁系に伝わり、ついには最上位の前頭前野仁摩で及ぶのだ。抗うつ剤の効果がまず体に現れるのはおそらくそのためで、悲しい気分が薄れるより先に、体にエネルギーが満ちてきたように感じられる。一方、認知行動療法と心理療法では、まず自分を肯定的にとらえられるようになってから、体の調子がよくなったように感じられる。それは、セラピーの効果がトップダウン方式で前頭前野から下位組織へと波及していくからだ。
P173
人間は本来、社会的な動物なので、うつの人にとっても、人との関わりを促し、戸外など感覚を刺激する環境でする運動が理想的だ。
P176
ある意味、運動は治療としてより、予防としての方がはるかに重要だ。(あと、オメガ3のサプリメント)
<ADHD>
P182
矛盾しているようだが、そのような極端な集中力はADHDの人によく見られる性質で、ゆえにしばしばその障害が見逃される。新しくきた患者をADHDと診断すると、「そんなはずはない、本を読んだり何かしたりするときにはしっかりしゅうちゅうできるから」と抑反論される。だが、そもそも彼らの注意システムの不具合は、「欠陥」とよぶべきものではない。むしろ、思った通りには注意を向けられない、集中できないということなのだ。そこで患者には、ADHDは「注意変動障害」だと考えた方がわかりやすいとはなしている。欠陥と呼ぶほど一貫した障害ではないから。
(早朝に数キロのランニングをこなしベンチャーの投資会社を運営している)サムはその点をよく理解している。重要な仕事や打ち合わせは、早い時間に片づけるようにしている。そうすれば、早朝ランニングの鎮静効果がまだ保たれているからだ。
P185
注意力テストを受けているとき、ADHDの人の脳は、そうでない人の脳とはたらきが違うことを示した。ADHDグループは対象グループと比べて、脳の働きが10%ほど低く、もっとも著しい違いは前頭前野に認められたのだ。そこは行動を調整していて、運動によるプラス効果が現れやすい部分でもある。
P190
ADHDの人に共通する症状の一つに、睡眠パターンの以上がある。
つまり報酬中枢は遂行機能のうちの、優先順位をつける作業に関わっているのだ。優先順位がはっきりしていればこそ、やる気は出てくる。(略)彼らは、大学入試のための勉強というような、長い目で見て価値がある地味な作業よりも、すぐに満足が得られる作業を好む。
前頭前野もADHDに対して責任がある。(略)作動記憶の拠点でもあり、報酬が得られるまでの間に注意力を持続させ、同時に複数の問題をまとめて保持することができる。
P192
情報に注意が向けられればそれでいいわけではなく、その情報が脳内でスムーズに流れることも重要だ。ここでは注意システムと体の動き、ひいては運動とが結びついてくる。体の動きをコントロールする部位は、情報の流れも調整しているのだ。
(略)アDHDの患者は、小脳の一部が小さく、正しく機能していない。
P199
知的で有能な専門職に就いているADHDの人を何人も診なじめていた。彼らは(略)ステレオタイプとは合致しなかった。(略)そうした患者の中には、運動をすれば生産性が上がることを自ら突き止め、自己治療としている人もいた。
P200
ドーパミンとノルアドレナリンが注意システムの調整のいて主導的な役割を果たしていることを考えると、ごく大まかな説明ではあるが、運動によってADHDの症状が緩和されるのは、この二つの神経伝達物質が増えるためだといえる。それも、すぐに増えるのだ。さらに、定期的に運動すると、脳の特定の部位に新しい受容対が生まれ、ドーパミンとノルアドレナインのベースラインを上げることができる。
また、運動は脳幹の覚醒中枢においてノルアドレナリンのバランスを整える。
P201
活���しすぎる小脳もADHDのこどもの落ち着きのなさの一員となっている。近年の研究で、ドーパミンとノルアドレナインを増やすADHDの薬を服用すると、小脳が落ち着きを取り戻すことがわかった。運動もノルアドレナリンの値を上昇させる。それも動きが複雑であればある程良い。
(略)この二つの神経伝達物質は、前頭前野の「信号対雑音比」も向上させているそうだ。ノルアドレナリンがしなぷすを通る信号の質を高め、一方ドーパミンは、細胞が不要な信号を受け取らないようにして、雑音、すなわち行き場のないニューロンのおしゃべりを抑えることを発見した。
P207
ジャクソンが薬の服用をやめようと思った理由から学ぶものは大きい。思うに彼は、自分をコントロールできていないと感じていたのだろう。自分は賢いのに、それを生かせていないと自覚していたのだ。常にイライラしていると、やる気がそがれる。ジャクソンの場合、それがうつと不安の原因になった。薬を飲むとますますそういう感情が強くなり、自分が依存しているように思えてきた。それとは逆に、ランニングが日課になると、気分、不安、集中力など自らの内面をコントロールできていると思えるようになった。生まれて初めて、人生の舵を自分で取っているように思えたのだ。彼はランニングを薬として用いたのである。
(略)私は患者の大半に、症状をコントロールするツールとして、薬と運動の併用を進めている。一番効果があるのは朝、運動して、1時間ほど後に薬を飲むことだ。そのころになると、運動によって即座に生じた集中力が切れ始めるからだ。患者の多くは、毎日に運動すると薬が少量ですむようになる。
(大人のADHDでは)できれば最大心拍数の75%の負荷で20-30分つづけるのが望ましい。
<依存症>
P214
つねに依存状態で精神的にも病んでいたら、まともなうんどうはできません。できるわけがないのです。
P216
どの薬物も報酬系のドーパミンを急増させる。(略)セックスすると、ドーパミンレベルが通常の1.5-2倍に上昇するが、コカインを吸引すると3-8倍にまで急騰するのだ。
P217
「なにかを好きだというのは実際の快楽体験と結びついた状態で、一方なにかがほしいというのは、報酬を得るために進んで働こうとする状態です。ドーパミンは、この「意欲」に関係していますが、対象を好きかどうかには関係していません」
報酬中枢はADHDと依存症の両方に絡んでいて、いずれの場合も意欲や自尊心、記憶が損なわれるのはそこに原因がある。ADHD患者の約半数が、なんらかのやくぶついぞんにくるしんでいるのは偶然ではない。
鍵となるのは、快楽よりも、「突出」と意欲であるようだ。ここでいう突出とは、日常生活において際だっているもの、ほかのどの刺激よりも勝るものを指す。快楽と痛みの合図はどちらも側座核に大量のドーパミンを流し、わたしたちの注意を喚起して、生き残るための行動をとれるようにする。従って、薬物によって大量のドーパミンが放出されると、脳はその薬物に注意を向けることが生死に関わるほど重大だと誤解してしまう。
(略)多くの人が薬物を乱用しているが依存になる人は比較的少ない。なぜだろう。薬物などへの興味が芽生え、手に入れようとするのは報酬中枢を流れるドーパミンのせいだが、どうしてもそれをやめられなくなるのは、脳の構造に変化が生じるからだ。現在、科学者たちは依存症を慢性疾患と考えている。なぜなら依存症は、反射的行動を引き起こす記憶の中に組み込まれて
いるからだ。依存の対象が薬物でもギャンブルでも食事でも、脳に起きる変化は同じだ。
いったん報酬が脳の注意を引くと、前頭前野はそのシナリオと感覚を詳しく記憶するよう海馬に指示する。(略)(こうして)合図が突出し、つながって記憶されていく。(略)このようにして習慣が作られる。
通常、わたしたちが何かをまなぶとき、その回路ができあがるとドーパミンレベルは次第に下がっていく。しかし依存症、とくに薬物依存の場合は、薬物を摂取するたびにドーパミンがシステムに溢れ、記憶を強化し、ほかの刺激をはるか広報に押しやってしまう。(略)その辺かは薬物をやめた後も数ヶ月から数年もそのまま残ることがある。依存症が再発しやすいのはそのためだ。依存症は脳がなにかをあまりにも強烈に学びすぎた結果だといえる。(略)たとえば、フライドチキンのにおいをかげばかならず大脳基底核が自動的に反応するようになる。いくら分別のある人の前頭前野でも、その反応を止める力はない。
P221
運動のおかげでラスティはより生産的な生き方に目を向けられるようになった。運動は、多くの薬物依存症者がかけている絶望感や無慮巻を埋める方法の一つだと私は考えている。(略)規則正しい生活や運動は、脳を活発にし、薬物から気持ちをそらすことができる。そして、大脳基底核を再プログラミングして
別の行動につながる回路を作る。
P223
1990年に行われた画期的な研究により、多くのアルコール依存症患者にはある遺伝子の変異(D2R21対立遺伝子)があり、そのせいで報酬中枢のドーパミン受容対が通常より少なく、ドーパミンレベルが低いことがわかった。(略)コカイン依存症者の調査では半数がD2R21対立遺伝子をもっていた。そして、コカインに加えてほかの薬物の依存症でもある人は、80%がその胃でんんしの保有者だった。にたような結果が、ギャンブル依存症や病的な肥満の人にもみられた。(略)マスコミは科学者たちが「アル中遺伝子」を発見したと報じた。
P224
こうした報酬不全は注意力やストレスシステムにも害を及ぼす。ドーパミンのバランスが崩れると、扁桃体は生存が脅かされていると見なして、脳内のバランスを整えようとする。これは、ADHDの人の多くが「ストレス依存症」の様に見えることと関係がある。ストレスがかかると、注意力を増すために、コルチゾールがドーパミンを急増させるのだ。この、絶えずつきまとう感覚-彼らがいうには、心にぽっかり穴があいたような感じ-ゆえに、依存的行動に陥りやすくなり、薬物を使ったり、チョコレートを貪ったり、1週間に40時間もテレビゲームであそんだりするようになるのだ。
(略)驚くほどのことでもないが、スカイダイビングのように危険なスポーツを愛好する人たちは、(略)スリルを求めて行動しがちだ。最近行われたオランダの研究では、彼らの多くは日常生活に喜びを感じられないことが判明した。スカイダイバーも依存��者も、興奮のいき値が通常の人よりずっと高いのだ。だが、それはドーパミンを急増させる行動の原因だろうか、それとも結果だろうか>ほかの研究から、コカインのような薬物の使用がD2受容体(ドーパミンを受け取る)を傷つけることがわかっている。(略)そのため、うまれつきの脳の状態とは関係なく、服用した薬物の量が増えるほど、前と同じ快感を味わうためにはより多くの薬物が必要となる。
P226
長く薬物に依存し、ドーパミンシステムが変わってしまっている人にとって、強いストレスに対処するもっとも効果的で、唯一知っている手段は薬物だ。だが、運動はもう一つの解決策となる。
愛煙家の場合、激しい運動はたった五分でも効果がある。ニコチンは(略)刺激物でありながら、同時にリラックス効果がある。それは、ドーパミンがスムーズに増えるのに加えて、タバコをやめようとする人が悩まされがちな不安や緊張、ストレスが抑えられるからだ。
P227
運動には薬物の禁断症状(ただし、ラット)を
劇的に緩和する効果があることがわかった。
P231
運動をすると禁断症状が楽になるのは、扁桃体が落ち着きを取り戻し、ドーパミンが放出されるからだ。
P232
運動すると、この二つのカンナビノイド(アナンダミドとアラキドノイルグリセロール)が体と脳でつくられる。それらは血流で全身に送られ、脊髄の受容体を活性化させ、苦痛のシグナルが脳にとどかないようにする(モルヒネと同じように)。さらに、報酬系と前頭前野の隅々に行き渡り、ドーパミンに直接影響を及ぼす。エンノカンナビノイドの受容体が激しく活性化すると、マリファナと同じ様な陶酔感が生まれる。エンドルフィン同様、エンドカンナビノイドは体が作る強力なアスピリンだ。最近では医者は、慢性疲労や繊維筋痛などの痛みにアナンダミドを処方するようになっている。また、それらの症状に伴う痛みや披露は運動量を増やしていくと軽減されることがかず多くの研究によりあかされている。運動と体内の鎮痛剤の関係は理にかなっている。それらは狩りを続けることで生じる筋肉や関節の痛みをしのぐために進化したのだ。
P233
走るたびにランナーズハイになるわっけではない。また、スイマーズハイというものがないのはなぜだろう。興味深い説がある。(略)肌にはエンドカンナビノイド受容体があり、それはランニングのようにドタドタと体を揺するときにだけ活性化するかもしれないというのだ。
P236
依存の対象を絶つと、あとに残るのは空虚な気分だ。(略)心の透き間をプラスの行動でうめなければならない。最善の選択肢は運動だろう。
(略)運動が不安やウツを緩和するという事実はすべての依存症に対して大きな意味を持つ。
(略)酒を断ち、運動をすれば、脳の損傷が止まるだけでなく脳の機能を回復させることができるのだ。
P239
依存を完全に絶ちたいのであれば、週に5日、30分のハードな有酸素運動というのが最低ラインだ。
P240
運動中に生成されるドーパミンは、受容体に結びついて渇望を抑える。さらに長期的にみれば、運動することで多くのD2受容体が生成され、報酬システムのバランスが回復され��。また、自分の体に否定的なイメージを持っている人にとって、体から脳へ気持ちを切り替えることで、かつてないやる気が湧いてくる。
<8章 ホルモンの変化>
P242
運動は女性にとって一層重要になる。ホルモン量の変動からマイナスの影響を受けている人は運動によってそれを軽減でき、プラスの影響を受けている人はそれをさらに強められるからだ。
P243
(ひどいPMSに悩まされていたパティ)彼女は早クアラ、有酸素運動がPMSの症状を劇的に和らげてくれることを知っていた。
P245
PMSや産後のウツ、重い更年期障害などになる人とならない人の違いは、それらのホルモン量の多寡によるものではないらしい。むしろ、ホルモンの変化が招く神経科学的な変化に対する感受性に起因するようだ。
たとえば、気分との関係についていえば、ホルモンは脳機能全般を整えるだけでなく、神経伝達物質を調整する上でも重要な役割を果たしている。エストロゲンもプロゲステロンも大脳扁縁系におけるセロトニンやドーパミンの受容体の発現を促し、結果的にそれらの神経伝達物質の効果を強めている。(略)エストロゲンがBDNFの生産を促していることも確認された。
P247
多くの女性が(1800人以上の調査にて)運動すれば、体の症状が軽くなるだけでなく、集中力の低下や気分の落ち込み、衝動的な行動といったPMSの精神面の症状も軽くなると報告している。
(ランニングと筋トレ)両グループとも体の症状は軽減されたが、精神面でめざましい改善を見せたのはランニングしたグループだった。
(略)もっとも際だった違いは、有酸素運動をしたグループの方があまり悲観的な見方をしなくなり、世の中への関心が高まったことだ。
ひとつの理由として、運動をすると血流中のトリプトファンのレベルがあがり、それにともなって脳内のセロトニン濃度が上がることがあげられる。また運動にはドーパミン、ノルアドレナリン、それからBDNFのような品婦素伝達を調整する物質のバランスを整える効果がある。
(略)(エストロゲンとプロゲステロンの)ホルモン変化がおきる月経前の一時期、相互に関連しあうこれらの物質(興奮性のグルタミン酸と抑制性のGABA)の量が乱れ、情動を司る回路のニューロンに過剰な興奮をもたらすことがある。
(略)PMSに悩まされている女性とそうでない女性は、ホルモンレベルに差はないものの、GABAレベルが異なることが明らかになった。(略)たとえばラットを使った実験では、たった一回運動しただけで、GABAを生産する遺伝子のスイッチが入ることがわかった。運動は、女性を悩ます体の変調期に脳内で拮抗する二つのシステム(興奮性のグルタミン酸と抑制性のGABA)のバランスを回復させるのだ。また、視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の機能も調整する。先の章で述べたようにHPA軸はストレスに対処する力を高める。
P254
(妊娠中活発に動いた母ラットから生まれた子ラットはBDNFが高かかった。)要するに母ラットが運動した方が、退治ニューロンのつながりがよくなるのだ。
P256
私たちが体を動かしているかぎり、脳は自らを修復することができるのだ。本来、脳はそのように設計されている。���う考えるたび、わたしは驚きを覚える。
P260
有酸素運動が鬱の一般的な症状をどれほど抑制するかについては、多くのことがわかっている。だが、新米の母親のうつについては、また別の考察が必要となる。産後のうつを引き起こしているのは、ホルモンの増加ではなく、むしろ産後ホルモンの急激な減少であるようだ。
(略)ホルモンが神経伝達物質に強く影響することから、ブロックは、一部の女性の脳はホルモンの急激な変化についていけないか、あるいは、ホルモン変化に伴って脳内の信号が気分を混乱させる方向に増幅されるのではないかと推測した。
(略)運動の習慣は、新米のママたちが生活のペースを取り戻すのを助け、育児の大変さにくじけそうになってもそれを乗り越える力を与えてくれる。
(閉経期について)閉経を迎えた女性に運動はすばらしい効果をもたらす。ホルモンの減少による不調を整え、次章でみていくように、認知機能の低下を抑制するのだ。
HRT(ホルモン補充療法)のみ直しが始まったのは、2002年で(略)HRT療法を受けている女性の方が、そうでない人に比べて乳ガンの発症率が26%高く、脳卒中は41%、心臓発作は29%高かったのだ。
運動量が少ない女性は、血管運動神経症状(ホットフラッシュ)が強くなることが示された。
P266
運動の認知能力低下を予防する効果は、女性により高くなるようだ。
P268
げっし類を用いた研究によって、HRTを長期間受け続けると、免疫反応の指令を出す視床下部においてエストロゲン受容体が壊れ始めることがわかる。(略・そして)女性はガンなどの病気にかかりやすくなる。
P269
少なくとも週に4日、戸外に出て早足で歩いたり、ジョギングやテニスをしたり、あるいは、なんであれ心拍数を最大値の60-65%にあげる運動をおすすめしたい。
(略)また週に2日、筋力トレーニングをあわせてすることも大切だ。
PMSに悩まされている若い女性には、週に5日、有酸素運動を上記のレベルでする事を進めたい。さらにいいのは、そのうちの2日(連続ではない)にスプリント(全力疾走)のような激しい運動を組み込むことだ。
<加齢>
P275
老年期の直面する精神の病気と体の病気は、心血管系と代謝系を通じて結びついている。肥満の人が普通の人の2倍認知症になりやすいのも、心臓病の人がアルツハイマー病になる確率が非常に高いのも、そのような頭と体のつながりが壊れた結果なのだ。
「なによりすばらしいのは、ほどほどの運動量でもその効果がみられたことです。週に1時間半のウォーキングでもいいのです」
P277
年をとると、体中の細胞がストレスへの適応を失っていく。(略)細胞は古くなればなるほど、フリーラジカルによる酸化ストレスや、過度のエネルギー要求、過度の興奮などに立ち向かう力が弱くなるということだ。さらに、有害なゴミを掃除するタンパク質を生成するはずの遺伝子がその仕事を辞めてしまうと、神経科学者が「アポトーシス(細胞の自殺)」と呼ぶ、細胞の死のスパイラルが始まる。細胞のダメージが重なると免疫系が活性化し、死んだ細胞を掃除するために白血球やその他の因子を���り込み、それらが炎症を生じさせる。炎症が慢性化すれば、さらに多くの有害なタンパク質が生じる。それらはアルツハイマー病に直接関係している。
脳では、ストレスのせいでニューロンが弱くなると、シナプスがむしばまれ、最終的にはつながりが切れてしまう。脳の活動が経るに従って、樹上突起は文字通り縮み、しなびていく。その結果、あちこちでシグナルが伝達されなくなるが、最初のうちはそれほど困らない。本来、脳のネットワークは、つながりを断ち切られた部分を避けて、別のルートで情報を伝達できるようにできている。ある程度、余裕の部分が用意されているのだ。なんといっても、ニューロンは1000億個以上もあり、それぞれが多ければ10万ものニューロンに情報を伝えている。そのネットワークはとても緊密で、先に述べたとおり、新しい結合を作っては成長し、配線の変更と適合化を繰り返している。もっとも、それは新たな結合を促す十分な刺激があれば、の話だ。年をとるにつれて回路はとぎれていくので、なにをするにも、今までより広いネットワークが必要になる。思うに、知恵とは、そのような効率の低下を脳が巧みに埋めることの反映ではないだろうか。
シナプスの衰えるスピードが新たな結合の生まれるペースを上回るようになると、頭と体の機能にさまざまな問題が生じてくる。それにはアルツハイマー病やパーキンソン病も含まれる。どの病気になるかは、脳のどの部分が衰えるかによって決まる。基本的には、認知力の衰えや、神経変性による病気はすべて、ニューロンが死んでしまったか、機能不全に陥った結果であって、そのせいで情報の伝達が絶たれたのだ。老化に関する研究は、マットソンが指摘するように、「ニューロンの情報伝達力を回復させ、生かし続けること」をおもな目的としてい進められていて、「成功すれば、ニューロンの衰えをくい止め、病気を予防できるようにある」。
シナプスの活動が減り、樹上突起が萎縮すると、脳に栄養を運んでいる毛細血管も萎縮するため、血流の流れが制限される。逆のことも起きる。脳に血液を十分送り込まないと、毛細血管が萎縮し、それに続いて樹上突起も萎縮する。いずれにせよそれは細胞の死を招く。血液によって運ばれる酸素や燃料、肥料、そして修復に使う分子がなければ細胞は死んでしまうのだ。ニューロンの成長を促す栄養素-BDNFや血管内皮成長因子(VEGF)などーの量は、年をとるに従って減っていく。そして、神経伝達物質であるドーパミンが作られるスピードも遅くなり、運動機能の衰えと意欲の低下を招く。一方海馬でも使えるニューロンがどんどん少なくなっていく。(略・それは)もともとの神経幹細胞のぷーるが枯渇し、かんんぜんに機能するニューロンが作れなくなるからだ。(略)平均すると40歳以降、脳は1年に5%ずつ減っていく。そして、70歳から先は、さらにさまざまな要因がこのプロセスに拍車をかける。
私の母のように、年を重ねてもずっと社交的で活動的な人は、脳の劣化のスピードを遅らせることができる。
P280
運動は老化の進行を阻むことのできる数少ない方法の一つだ。
<認知力の衰え>
衰えがもっとも顕著に現れるのは前頭葉と側頭葉だ。
(普段あまり運動をしない60-79歳を対��にした6ヶ月のランニングマシンの実験を行ったところ)実験の前と後に行ったMRI検査によって見つかった。ランニングマシンを使った人は、前頭葉と側頭葉の皮質容積が増えていたのだ。
P284
年をとるにつれて偏屈になる人がいるのは不思議ではない。(略)年をとるにつれて、女性はエストロゲン、男性はテストステロンというホルモンが減少し、気分が揺れがちになり、活力や好奇心が失われていく。うつが認知症を招く原因の一つとして、鬱状態でいることが海馬に有害な影響を及ぼすことがあげられる。つねにストレスにさらされ、コルチゾールが過剰な状態が続くと、シナプスが蝕まれるからだ。(略・その予防に)さらにいいのは先手を打っておくことだ。何かに挑戦することは大切だ。そうすれば脳の回復力がぐんと増す。
P285
運動は鬱の症状を緩和し、再発予防にはゾロフトより効果があることがわかっている。
運動が高齢者とくにめざましい効果を発揮するのは、それが老化と共に減少するドーパミンの量を回復させてくれるからだ。ドーパミンは報酬と意欲のシステムにおいて信号を伝える神経伝達物質なので、老化の鍵を握っていると言っていい。
P289
運動は(パーキンソン病の)治療法として定着してきたが、特に初期段階への効果が注目されている。それは、パーキンソン病によって衰える運動野が、運動によって活性化されるからだ。運動により大脳基底核が刺激されると、ニューロンの結びつきが増え、BDNFやそのほかのニューロンを保護する因子が増える。(Lドーパの効果を持続させたり、運動機能に対する効果が高まる)
P296
若いうちに、ウェイトトレーニングや、走ったり跳ねたりという動きが含まれるスポーツをしていれば、骨の自然な減少は予防できる。
(略)ある研究では、わずか数ヶ月のウェイトトレーニングで女性の下肢の骨の強さが2倍になった。
P301
運動のプランを立てる際には4つの領域をカバーできるようにしよう。有酸素運動、筋力強化、バランス、柔軟性である。
<鍛錬>
低強度の運動 最大心拍数55ー65%
中強度の運動 65ー75%
高強度の運動 75ー90
週に6日、なんらかの有酸素運動を45-60min
うち4日は中強度を長めに、2日は高強度。
体を強制的に無酸素の状態にする高強度の運動が、思考や気分に影響するかどうかははっきりしないが、高強度の運動をすると、脳を作る重要な成長因子のいくつかが体から分泌されるのは確かだ。短時間の高強度の運動をするには筋力トレーニングを含んだ方がいいだろう。ただし、2日続けてはよくない。回復のための時間が必要になるからだ。
ウォーキング
健康になっていく過程は、有酸素運動の土台を築いていく過程である。心臓と肺を鍛えれば、より効率的に体と脳に酸素を送れるようになる。血流が増すと、当然ながら、連鎖的に化学反応が起こり、セロトニン、BDNF、その他の栄養因子が生成される。
中強度と高強度の重要な違いの一つは、最大心拍数に近づき、特に無酸素運動の域に達すると、下垂体から成長ホルモン(HGH)が放出されることだ。(略)
HGHは腕のいいエンジニアで、腹部の脂肪を燃焼させ、筋肉繊維の層を作り、脳の容量を増やしている。研究者はHGHには彼による脳の減少を逆行させる力があると考えている。(略・また)インターバルトレーニングを続けると、脂肪や炭水化物を燃焼する能力は高くなる。
通常HGHは血中にわずか数分間しかとどまらないが、全力疾走を含むトレーニングをすれば、上昇した状態を最長で4時間維持できる。
(略)エアロバイクトレーニングに30秒の全力疾走を1回足しただけでHGHが6倍に増加した。
(略)健康状態にもよるが、インターバルトレーニングを組み込むのは、週に6日の有酸素運動を少なくとも6ヶ月巻続けた後にすべきだろう。
運動が好きか嫌いかは、62%遺伝が影響する。