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短編集の中で、味がある作品ばかりでした。
2018/12/16 13:05
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投稿者:御室 みやじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初、『白い巨塔』(1~5)、『女系家族』の後、次は何を読もうかと考えていた時に、巻末に載ってリストの中から、『ムッシュ・クラタ』を選びました。
ムッシュ・クラタが生前、親しかった人達(学生時代の友人、パリ特派員時代に接点があった別の新聞社の記者さんなど)に、取材すると言う設定が面白かったです。
学生時代の頃から、フランス文学を学び、やがては新聞社に就職しますが、その頃から、周囲から浮いていたのかな?と読みながら感じました。また、戦前のパリの様子についても描かれていて、高校の時に父親の仕事の関係でフランスに住んでいた私にとって、懐かしい部分もありました。
一部、旧字体の漢字もあり、読むのに苦労した個所もありました。
『ムッシュ・クラタ』だけでなく、『晴れ着』、『へんねし』、 『醜男』もそれぞれ、人間の制(さが)が丁寧に描かれていることも短編集の特徴ですね。中でも『醜男』は、美人の奥さんと3人の子供に恵まれながらも、最後は、奥さんに離婚され、後妻をもらったのち、亡くなってしまうと言う悲しい結末でした。
年末年始にもう一度、読み直してみます。
紙の本
女性の心の底の思いが影を落とす短編集
2021/05/31 18:04
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投稿者:けなちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「死」にまつわる短編集。
それぞれの男性の死から見えてくる,虐げられた女性たち。
いくら時代とはいえ,いつだって女性たちの中には諦めきれない感情があるに違いない。
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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作のほか山崎豊子の短編集。沈まぬ太陽にも関連する作品。社会派小説の雰囲気も十分読み味わえる。短編でも侮れない。
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ここまで華のある男性は最近少ないような気がする。ただ、ムッシュ・クラタが近くにいたら難しそうで、関わりたくないと思うのも本音。
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戦後のフランスかぶれと周囲から冷たい視線をあびせられ,ムッシュ・クラタと呼ばれた男.でもその彼がフランスにかぶれた風体をしているのは決してフランスを愛していたがためだけでなく,強い信念を持ってのことであったことが筆者と思われる「私」の取材をもとに明らかになる.そのほか3編は短編は山崎豊子がその昔よく書いていたといわれる大阪物.どれも女性の強い思いをそれとない形で描いていてよかった.
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社会派小説を書くことに定評のある山崎豊子であるが、この短編小説も非常に面白い。
どろどろした人間関係を克明に描き出している、というか怖い。
一番気に入ったのはやはり「ムッシュ・クラタ」であろうか。あんまりどろどろした人間関係を描いているのは好きではないというのがありますが^^;
もちろん全て読みましたけどね。
結構薄いので、初めて山崎作品に手を出す人にはちょうどいいかもしれません。
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山崎豊子作品は『女系家族』に続いて2作品目。
短編4作品からなるこの本ですが、表題の『ムッシュクラタ』はほかの3作品とは異なる感じでした。
一人の人物を違う人の目で見るという書き方。
人によってこんなにも違う、しかし同じ人物。
・・・・・
こんなにレビュー書くのが難しいとは。。。
こうなってしまうと読んでくださいとしか言いようがない気がします。
たぶん、感じ方も人によって違うと思いますし、読んでいる時の気持ちのあり方で捉え方も違うのですから。
山崎豊子作品はもっと読んでみたい作家の一人になりました。
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山崎豊子を長編小説の人と思っていた私は、短編集を読むとまるで別人が書いているんじゃないかと思うほど、毛色の違う作品に驚かされる。
長編大河とはまた違った、一話完結型の物語は、山崎作品を読破しようとするときのいいアクセントになると思う。
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あら?ムッシュクラタは実在の人物だとばかり思っていましたテレビで見たような気がしたんだけどなぁフランスかぶれもここまで極めればもうフランス人かもしれないなただの”かぶれ”でないことは後半の戦争体験のところでも明らかにされるしダンディズム!短編集なのでほかのお話もへんねし は大阪弁だと思って読んでたらそういうことなんだこわ〜w
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女の怖さや粘着質なところがよく描かれている短編集です。
僕は、山崎豊子は短編よりやはり長編の方が好きです。
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短編集。『ムッシュ・クラタ』は、一生をフランスっぽさで通した男の話。妻子の苦労が偲ばれた。晩年は一体その資金をどこから。『晴着』は、親を早くに亡くし苦労の人生を送ってきて女が好かれて漁師の家に入ったが虐げられ、夫の弟と駆け落ちし、束の間の幸せを満喫するが、男が体を壊し、という話。ほんとこの時代資本は体と健康だった。『へんねし』女の夫は傘職人として成功していたが、女癖がひどかった。囲われた女たちはでも体が強くなかったのか、死に別れることが重なった。本宅の妻の気持ち。どんだけ強いんだろう、我慢強さも憎しみも。『醜男』見た目が貧相なために苦労してきた男が美人な奥さんをもらった。何ともやりきれない話。
どの作品も人間個人の話で、時代背景と共に興味深かった。理不尽、当時の女性って精神力があるか、庶民出の方が女次第幸せは多少なりともつかめたのか、と。いずれにしても女の立場は、低い。家政婦と紙一重。
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表題作が★3つ、他は★2つないしは1.5。伊根浦の美しさ(一度行ったことがあるが非常に良い風景)に免じて★3つ。
多分この作家にとっては異色の中・短編集だろうと思うが、異色と出来は一致しない。表題作はそこそこ面白かったが、もう少し深堀りできる素材だという気がする。
山崎豊子の作品は総じて面白いけど深い味わい・読後感はないと個人的には思っている。その意味で(良質な)エンターテインメントに徹している訳だが、表題作もその系譜に連なっていると言える。
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まだ読んでないこんなに面白い山崎作品があったことが嬉しい。
壮大な作品よりこれくらいの短編や大阪商人もの、面白いなー、うまいなーー。
表題作のムッシュクラタはおそらく、他にあまりないタイプの作品。
フランスかぶれ、おしゃれすぎてかっこつけすぎてまわりに疎んじられていたような主人公の、知られざる半生、と書くと非常に陳腐だなああ。
読後感が損なわれるのでこれでストップ!
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収録作品
*ムッシュ・クラタ/晴れ着/へんねし/醜男
表題作『ムッシュ・クラタ』は著者の実際の出来事を元に紡がれたお話かな?という印象を受ける。
*****
“私”は以前職場で要職についていた倉田玲氏の訃報を新聞の紙面にて知る。
フランス料理店でフランスの詩について、歴史、文化、雑学-日本人である彼がたっぷり語ったこと、ダーク・スーツに帽子と手袋を装着して出勤し、仕事中はパイプをいつもくゆらせていたこと…そんな彼の姿が頭にあったが、通夜で訪れた彼の住まいはいつもの彼のイメージとは程遠い、こじんまりとした慎ましい家屋であった。
この差異から倉田氏という人物そのものにひかれる“私”。
10年経った後にふとしたきっかけからその想いを再燃させ、取材へ乗り出すのであったが…。
*****
“私”や職場でのみ倉田氏と付き合っていたような人間が抱く、派手好きだとかキザだとかカッコつけだとか、そういう印象がぐるりと角度を変えてゆく様が非常に面白かった。
取材対象者が入れ替わってゆく度に倉田氏の“私”が知らなかった生き様が見えてき、氏がいつも大切にしていた揺るぎのない信念が見えてくる。
そこから見えてくるのは着飾ることが好きなただのフランスかぶれの男性ではない。
読み始めと読み終わり、“ムッシュ・クラタ”が浮き彫りになっていく過程が良い。
『晴れ着』、『へんねし』、『醜男』は少し雰囲気が違う作品。
現代物ではないけれど、読み始めると一気読み。『晴れ着』は切ないし、『へんねし』はちょっと怖い。
『醜男』は哀しい。
ラストは「宏め!」となってしまった。
ドロドロし過ぎないけれど、さらさらでもない、3作品。
『白い巨塔』などのメジャー作品はまだ読んだことがないので、そろそろ読んでみようかしら。
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先日お亡くなりになられた山崎豊子さんの作品を何か読んでみようと思い、近くの本屋さんで長すぎない本と思って探していたら、大長編以外では短編集の本書しか残っていなかったので、これにしてみました・・・。(みんな考えることは同じだ!)
表題作の『ムッシュ・クラタ』のほか『晴着』『へんねし』『醜男』の4編を収録。どの作品も山崎豊子氏を有名にした社会の深層を鋭くえぐる長編小説ではなく、人間の性(さが)をみつめ、味わい深い余韻を残すような作品になっています。
『ムッシュ・クラタ』はダンディであることを身上としパリを愛してやまなかった主人公の倉田氏が、いかに自らを厳しく律しそれを矜持とする生活を全うしたかを、戦前・戦中・戦後という激動の時代を背景に、山崎自身が仮託した女性作家が聴き取り取材にて次第に明らかにしていく物語。孤高に一流を求める倉田氏の、表面は滑稽だが、しかし厳しく貫き通す態度は、読む者を最後には感慨深くさせる迫力を持っている。
最後に収録されている『醜男』はそれとは真逆で、外見は醜いが平凡に生きてきた定年間近の係長の主人公が、美人妻に翻弄され、たかられてもなお妻に未練を残す男の物語で、『ムッシュ・クラタ』とは好対照な作品であるといえる。本の構成上の配置からか、本書の最後の短編になっているが、読後感がその関係上あまり良くないので(笑)、最後に読まないことをお勧めする。(笑)あるいは、妻目線も並行で描かれれば、突然の豹変という腑に落ちない心情もカバーできたかもしれない。「醜」であることから「美」に痛々しいまでに尽くすその姿が切ないが、一方で「美」を求めて止まなかった主人公の最期の言葉は、周囲から思われる「幸福」とは別次元のあくなき男の憧れを痛烈に表しているといえる。
『晴着』は病気である夫から所望され、かつて思い出のある晴着を着用するまでを描いた物語。晴着を着るまでの過程の中で、彼女らの過去のいきさつがしみじみと描かれ、ラストの何となく予感されたシーンへと繋がっていくのだが、構成やシーンが物語としてよく練られていて、小品ながら感慨深い佳作となっている。
『へんねし』は主人公の大阪商家の主が妾をいくら持っても、意外と妻が嫉妬を抱かず、物分かりの良い妻として振る舞っているのだが・・・という物語。冷静以上?な妻の振る舞いがとてもコワい。(笑)
こうしてみると、『ムッシュ・クラタ』の気骨あるダンディズムといい、『晴着』の体格のよい男性描写といい、それとは裏腹の『醜男』の男性像といい、山崎の好みの男性像が窺われるようである。そう、『醜男』の主人公への作者の眼差しはあくまでも冷たい!それとは反対に『晴着』の姑や『へんねし』の妻、『醜男』の美人妻に見られるような女性の内面の冷たさの描きっぷりも凄く、山崎の「男というもの」「女というもの」を見る目はあくまでも鋭い。さらに、氏お得意の関西弁を駆使した会話や、『へんねし』のように大阪商家を背景とした物語など、山崎豊子が描く社会派小説とはまた異なる、氏がもう一方で得意としたテーマや技法を詰め込んだこの短編集はかなり贅沢なのではないだろうか。
いろいろと氏の作品は取り沙汰��れることもありましたが、特に社会の暗部をえぐり白日の下に曝したその作品群は、現代社会を生きていく上で未だ忘れてはならないものばかりです。謹んでご冥福をお祈りいたします。