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電子書籍
テキヤはどこからやってくるのか?~露店商いの近現代を辿る~
著者 厚 香苗
主な舞台は東京の下町。そのあたりでは伝統的な露店商を「テキヤさん」と呼んでいる。「親分子分関係」や「なわばり」など、独特の慣行を持つ彼ら・彼女らはどのように生き、生計を立...
テキヤはどこからやってくるのか?~露店商いの近現代を辿る~
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テキヤはどこからやってくるのか? 露店商いの近現代を辿る (光文社新書)
商品説明
主な舞台は東京の下町。そのあたりでは伝統的な露店商を「テキヤさん」と呼んでいる。「親分子分関係」や「なわばり」など、独特の慣行を持つ彼ら・彼女らはどのように生き、生計を立て、商売を営んでいるのか――。「陽のあたる場所からちょっと引っ込んでいるような社会的ポジション」を保ってきた人びとの、仕事と伝承を考察。
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紙の本
「テキヤとは都市を彩ってきた身近な人々」である
2016/12/31 15:04
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投稿者:miyajima - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は縁日や祭りに定期的にやってくる「テキヤ」のうち東京を中心としたお話。
そのテキヤはどこからやってくるのか?
ニュース番組などで桜前線を追いかけて日本列島を北上する露店商が取り上げられることがあります。ですが、現実には露店商はどこの地域でも地縁に基づいた何らかの同業者集団に加入しています。しかも商売の上でリスクが高まる文化の壁がいくつもあることから、それぞれの集団が持つ「ナワバリ」から越境することは難しいとのこと。
ただし、東京下町には「アイニワ」という慣行があって、複数の集団の縄張りが重なり合っているのが普通です。一か所の祝祭空間を複数の系統のテキヤたちが力を合わせて切り盛りする。天気が悪くて売り上げが期待できない日でも場所をにぎやかにする責任感から商いにやってきます。アイニワには安定的にバラエティに富んだ露店が並ぶ、祝祭空間をつくるためにとても優れた慣行でした。
それでもテキヤは自営業ですから交通費は自腹です。ということは縄張り内のほうが経費は少なくて済むし、他集団の縄張りでは露店の割り付けや電気工事の手配など気を遣います。なれない場所ですから売り上げの予測も立てづらいし。ということで、露店商の大半は普段から身近にいる商人です。遠くから来る人はまれなのに露店商の全体が異人のようなイメージをまとっているのは、彼らの慣行が外部に見えないからです。
で、暴対法や暴排条例との関連ですが、露店商自らが「七割商人、三割ヤクザ」というように露店商の中にはほぼヤクザといっていい人がいます。テキヤ集団は前科前歴を問わずにやる気のある人をどんどん取り込んできたからやむを得ない側面でしょう。
テキヤの周辺は法に抵触するかしないかのきわどい部分があるのは事実です。それを許容するかどうかは地域性と時代に大きく影響されます。日本は伝統的に露店商はヤクザなどの反社会勢力と何らかの連絡があるというのは暗黙の了解でした。その一方でたこ焼きや水風船を売るおじさんやお姐さんのすべてがヤクザではないことも知っています。客の意識としては商人の一部は暗い過去があるかもしれない、でもいつも付き合うわけではないし、祭りなんだからみんなで楽しくにぎやかにやればいいじゃないか、このような気分が日本の祝祭空間には満ちていたのです。
著者は「昨今の社会的風潮は“三割ヤクザ”を絶対に許さない。現代社会はテキや社会に“十割商人”になれと要求する」と批判します。そして最後に「彼ら彼女らが昔から都市を彩ってきた身近な人々であることに気づいていただければ幸いである」と結びます。