自由という服従
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最終章はなかなか読ませる
2005/09/10 22:05
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題からはエーリッヒ・フロム著「自由からの逃走」(東京創元社)のような内容を予期していたのですが、本書が言う「自由」はフロムの使い方とは少々異なっていました。本書では「独裁的な国家権力や強大な社会的権威から解き放たれた状態」を指す言葉としては使われていません。もう少し緩い意味合いで、「自主的な判断に基づいて制限のない行動をとれる状態」という程度のものです。その点をまず頭に入れて読み始めないと、「自由」という言葉が持つ重厚な響きと本書が取り上げている対象の軽さとの間に見られる齟齬に戸惑いを覚えるかもしれません。
「服従」という言葉も、本書で取り上げているような内容を指すには大仰な気がします。これも本書は「周囲の意向を気にして行動する状態」といった意味合いです。
本書の内容すべてに合点がいくとは思いません。例えば男女の「恋愛市場」を論じた章は小首を傾げながら読みましたし、OLの行動規範を追った章は旧聞に属すると感じました。私の勤務先もそうですが、OLという正社員は派遣労働者などに置き換えられつつあります。そうした非正社員はOLと異なり、きちんと仕事をしない場合は容易に取り替えられるわけです。本書が分析するOL社会とは異なる状況が今や日本の職場には広がっているのです。
それでも最終章は多くの人々にとって福音的要素を含んでいると私は考えます。
現代日本に暮らす人々は本書が指す意味での「自由」な存在であるかに見えます。にもかかわらず周囲に雷同していく「服従」的行動をとるのは、「自分の中にしか存在しない他者という幻影によるもの」に過ぎないと著者は指摘します。そのことが認識できていない人々にとって、この本は日ごろの不自由さを打開する<糸口>を与えてくれる可能性があるかもしれません。あくまで<糸口>でしかないにしても、その点は評価できると私は考えます。