紙の本
シッド・ハレー初登場
2001/11/10 19:35
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投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
競馬シリーズの1965年の第4作。
本シリーズは、基本的に作品ごとに主人公が違う。だが、本書の主人公シッド・ハレーは例外で、後の作品「利腕」と「敵手」にも登場する。ハレーは読者の人気も高いようだが、私は正直なところあまり好きではない。ハレーは自分が弱虫だと思い込んでいて、弱さを表に出すまいと、必要以上に肩ひじを張っている。ナルシストも困り物だが、自分に厳しすぎるのも読んでいて疲れるのだ。
なのになぜ高い得点を付けたかというと、まず第1にストーリーがとにかくおもしろかった。第2に、片手を負傷して騎手生命を失い、失意のあまり生きるしかばね同然だったハレーが、調査員としての第2の人生を歩み始めるストーリーと、自分に自信が持てない彼の性格が良く合っていたからである。
なお、本シリーズのタイトルには、内容を的確に表わしていないものが多い。読みながら、いつ“大穴”が出るんだろう、と真面目に期待しない事をお勧めする。
紙の本
競馬好きの方必読
2001/03/27 23:57
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投稿者:松内ききょう - この投稿者のレビュー一覧を見る
ごぞんじディック・フランシスの競馬シリーズで、きっと作者もお気に入りだったのだろうシッド・ハレーのこれは初登場作品。落馬事故で選手生命を立たれ、競馬専門調査員として悶々とした日々を過ごすシッド。彼がふと聞きつけた競馬場乗っ取り計画から、自らの第二の道を模索し歩き始める姿の描写が秀逸。この初登場作品に最初に出会えてよかった。
電子書籍
再び走り出す
2020/05/28 13:31
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
騎手生命を絶たれて、左腕と心に傷を負った主人公・シッド・ハレーが痛々しいです。陰謀渦巻く競馬界に飛び込んで、調査員としての才能を開花していく姿が痛快でした。
紙の本
傷を負った者同士の交流と、魂の再生の物語
2018/12/26 19:05
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投稿者:さらさばく - この投稿者のレビュー一覧を見る
第4作で、シッド・ハレ―が初めて登場します。
話は、ラドナー探偵社に調査員として雇われたシッドが、撃たれたところで始まります。
別れた妻の父チャールズ・ロランドが、自邸に招いた客に引き合わせたところから、シッドは不正な乗っ取り工作によって危機にある、競馬場を救い出すための仕事に取りかかります。
聞き込みの過程で知った、花火で顔に大火傷を負った、ザナ・マーティンとのやりとりが痛々しい。
しかし、シッドとの出会いが彼女の人生を変えます。
病気で、からだの自由が利かないときに読みました。
シッドの強さとやさしさに、勇気づけられます。
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とうとうディック・フランシスに手をつけてしまいました。絶対おもしろいはずだと判っていながら手を出し損ねていたシリーズ。初期作品でこの完成度。素晴しい。
あまり大きな声では言いにくいが、読み終えての第一の感想は、これって、天下御免のSM小説……?いや、シッドハーレーは確かにヒーローなんだけど、周囲は敵にしろ味方にしろ、全員「S」なんだもの。一番あなどれないのは一番味方のはずの義理の父上。たいがいハードボイルドのヒーローは酷い目にあうものだけど、味方にここまで虐げられるのも珍しいと思う。
あまたのミステリガイドで「滅法おもしろい競馬小説」と紹介しているオジサマ方に、そこんところを解説していただきたいものだ。
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シッド・ハレー登場の作品。
元チャンピオンジョッキーのシッドが落馬事故で片手に重傷を負い、探偵社に籍を置いてはいるものの失意のまま無気力に日を送っていたのが、競馬場の存続を巡る事件をきっかけに闘志を取り戻します。
離婚した後も続く妻の父親との信頼関係、探偵社のパートナーで柔道の達人チコの生き生きとした個性など、読みどころが多く、楽しめます。
フランシスの作品で一番有名でしょう。
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細部の描写を表現する圧倒的な筆力、スピーディーな展開と、主人公のリアルさが素晴しい、映画ならばもっとヒーローっぽく扱うものだろうが、主人公のシッドハレーは頭の回転がいいだけで、武術はおろか、背は低く、片腕は不自由である。そんな主人公がある事件を捜査していくんだけど、もう読み始めたら止まらない!
緊張と緩和をうまく使い分け、余計な部分を省いた展開は、たまらなく気持ちがいいし、一度どん底を味わった男が再起をかけるという話で燃えない男はいない!
実は菊池光さんの翻訳も秀逸。
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4―2 シッド・ハレー初登場。
元チャンピオンジョッキー。左手を失っている。
義理の父親との交流がいい。
別居中の妻との会話がいい。
知り合った顔にやけどの跡のある女事務員との交流がいい。
「「おわかりになったの」
うなづいた。「家具の置きぐあいでね…きてくれますか…」
「これでもまだお誘いになるの?」
「もちろん。何時にしまうんですか?」
「今夜は、六時頃」
「戻ってきます。下の入り口で待っています」
「いいわ」彼女が言った。「本当にそうおっしゃるのなら、ありがたくお供しますわ。今夜は何も用がありませんから」
そのなんでもない言葉に、長年の希望のない淋しさがむきだしに感じられた。なにも用がない、今晩も、どの晩も。そんなにひどい顔ではなかった。私が予想していたようなひどさではなかった、片目がなく義眼を入れている。ひどい火傷と顔面の骨折の跡があるが、プラスティック整形で損傷が相当程度治してある。それに遠い以前のできごとであった。傷跡は古い。治っていないのは心の傷である。
そう、私自身も経験のあることだ。」
二人は賭けをします。シッドはポケットに隠す癖のある左手を出して行動すること、ザナは顔を隠すのをやめること。
ラストにザナは言います。
「さよなら、ミスタ・ハレー。私を生まれ変わらせてくれて、本当にありがたく思っています。一生忘れませんわ」
推理よりも横軸の人間関係がディック・フランシスの最大の魅力です。
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<きっかけ>真保裕一氏の本にはまって読み漁っていたら、たびたび登場するのがディック・フランシス氏の名前。真保裕一氏が影響受けた作家ということなんですが、どんな本を書いているのか気になって買ったのがこの本です。
昔ちらっと読んで(忙しくて)挫折したことがあったんでいつか読みたいと思ってます 汗
評価はひとまず☆1つとしておきます
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嚇かしでなく本気だと気が付いた時は既に手遅れだった。
相手は慣れない手つきで上着のポケットから拳銃を引き出すと、おっかなびっくり両手を使って引き金を引いた。彼・・・元チャンピオンジョッキーで今はラドナー探偵社の 競馬課の調査員シッド・ハレーは、夜の夜中、探偵社に忍び込んで餌をかじりに来たのがチンピラのアンドリュースだとわかったからこそ、洗面所の暗がりからのこのこ出て行ったのだ。
が、明かりを消そうとスイッチの方に向きかけた瞬間、アンドリュースは撃ってきた。
弾がシッドの体を斜めに貫通した。血がゆっくりとオフィスの床の上に流れた。助けを求める事も出来ず、十二時間余、シッドはじっと耐え奇跡的に一命をとりとめた。
そして、38口径の鉛の一片がシッドの腸を穴だらけにした事が、傷の痛みの他に激しい怒りをシッドに植えつけた。
チンピラを探偵社に潜り込ませた連中は、いったいどんな陰謀を企んでいるのか?。ようやく傷も癒えたシッドは競馬界に蠢く悪辣な企みに敢然と挑戦していった。
競馬シリーズとあったので、続き物かと思っていたら、競馬が舞台の別の話でした。「興奮」のほうが私には面白かったですが、こちらもよかったと思います。
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競馬シリーズ。落馬事故で騎手生命を断たれたシッドが探偵となり、乗っ取りされかけている競馬場を救う。
痛快、軽妙、おもしろい。以前からディック・フランシスの競馬シリーズを読んでみたかったから、丁度借りられて良かった。このシリーズ読み始めよっと。
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久しぶりに読んだ。
競馬シリーズでは唯一3作に登場し、そのすべてがミステリ市場に残る名作であるというヒーロー、シッド・ハレーの初登場作品である。最初にこれを読んだときはそんなことを知らなかったし、第一続編が書かれてはいなかった。どちらかというと癖のある主人公が徹底的にいじめられ、それをものともせず相手をたたきのめす、ネオ・ハードボイルド・ミステリとして読んだ記憶がある。
改めて読むとどうだろうか。少なくとも、この人を主人公にさらに小説を書きたくなった作者の気持ちがわかると言ったら言いすぎだろうか。この主人公は、いわば「意志」の権化である。決して肉体的にすごいわけでも、特殊な能力を持つわけでもない。ただ、「意志」である。「苦痛」「恐怖」「屈辱」などを、まるでなかったもののように無視できる意志が犯人を追いつめるのだ。それでいて作者のずるいところは、彼の弱さをこれでもかといわんばかりに書き込むのである。内心では苦痛におびえ、恐怖に震え、屈辱に耐える主人公の内面を共有することで、読者はひとときだけ、シッド・ハレーの友達になれるのである。そして、いたらない自分を見ない振りをして言うのだ、「俺もシッド・ハレー的なところ、あるな」なんて。
初期の作品だけあって、ねらいが明確でないと言うか、ラストに来てややくどいかなって感じるところもあった。が、かえってそのあたりが、ミステリとしては安心して読めるところだろう。何度読んでものめり込んでしまう本だ。
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今作を最初に読んだのは大学生の頃。この「大穴」と「利腕」に登場する主人公、シッド・ハレーの生き様に痺れたものだった。
20年近くディック・フランシス作品から離れていたが、気づくとシッド・ハレーは2008年までに4作品に登場しているとの事。これはイカンと読み返す。
やはり面白い。何というか、隙の無い面白さだ。
ストーリーや語り口に無駄が無く、登場人物も非常に魅力的だ。
養父・上司・同僚・敵や情報提供者までもが生き生きと描かれている。
そしてこの主人公。類まれな実力と、拭い切れない劣等感を同時に抱える男。彼が戦うのは、社会的な悪党だけではない。己の劣等感や恐怖心とも対決していく。
ディック・フランシスの作品では、ほとんどの主人公が単発出演だ。しかしシッド・ハレーには次のステージが用意された。それが「利腕」である。過去に読み終えた作品なのに、わくわくしてしまう。
いろんなところで言い古された言葉だが、「競馬シリーズと言っても、ことさら競馬の知識は必要ありません」と強く言いたい。もっと多くの人に知ってもらいたい作品なのだ。タイトルも混同しやすいしねw
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主人公がとても有能で魅力的!
読むのに時間はかかったが、軽快な会話シーンが面白くて退屈しなかった。
終始競馬の話ではあるが、競馬要素はちょっと薄め。
推理小説というよりは探偵小説という感じ。犯人やトリックを当てる小説ではない。
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ディック・フランシス、3冊目。
こちら1965年発行のシリーズ4作目で、3冊目にしてシッド・ハレーが登場する物語。
障害レースのチャンピオンジョッキーであったシッドだがレース中に負った怪我が原因で引退し、誘われた探偵社で名前ばかりの探偵として日々を過ごす境遇。
自分が銃撃された事件をきっかけに、素晴らしいコースを持つが老朽化した競馬場の株を買い占め売り飛ばそうとする企みを知るところとなり、そこから持ち前の不屈の精神に火が点く。
このシッド、騎手上がりの小柄な体格に何より事故で常にポケットの中に隠さなければならなくなった左手のハンデのある身の上だが、無聊を託っている間に探偵としての素養を身に着けていたようで、いざ事件となると最初からポイントを突いた動きに目を瞠る。
しかし、調査を重ねても傍証は得られるものの確証がない中、競馬場の評判を貶める妨害工作は続き、自宅や職場が爆破されるなど危機一髪。競馬場内での追いかけっこの末、捕らえられては万事休すか!?と、今回もまたなかなかにサスペンスフル。
どんな解決を見るのだろうと思っていたが、最悪の状況でも諦めることがなかった不屈の主人公に今回もまた恐れ入る。
流石に『私はごく幼少の頃から同情を示されるのを避けた。… 同情をうけると人間が甘くなってしまう。… 貧困も嘲笑も、… 肩をすぼめてやりすごし、本心は人には見えない胸の中にしまっておかねばならないのだ』と語るだけのことはある。
寂びれいく競馬場の運営を思いどおりにやれるとしたら、どういうことをするかと問われたシッドが『ビートルズのような連中に来てもらって、トロフィを授与してもらいます』などと延々と語るところや、競馬場を見張っている時にかつての重賞優勝馬を駆って障害を飛ぶ様などに、当時の競馬場の雰囲気がよく表れていて、こういうところもまたこのシリーズの良いところ。
(ビートルズとは驚いたが、確かに書かれたのは彼らの全盛時代だもんな。いい時代だったわ)