紙の本
興味深い消費者行動の仕掛けの分析
2007/02/04 21:42
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつては長銀で情報システム部門の経験もあり、産業調査マンで、ソフト化経済センターでも活躍した専修大学教授徳田氏の著書である。流通経済論が専門なのだが、今回は消費者の心理を面白く分析した調査を書としてまとめたものである。
値ごろ感とはどのような感覚であろうか。値ごろとはおそらく買い時、売り時の価格を指しているのだろうという想像はつく。徳田氏は値ごろ感を、価値/費用で定義している。価値は欲求の関数あるいは満足感として分析している。マズローの欲求段階説を引用して説明する。
一方、分母の費用は負担感という感覚で説明する。販売しているところに出かけていくことも負担感と捉える。次にはこの分母と分子には相互作用があることを、吉野家の牛丼を例に説明する。なかなか、面白くなってきた。感覚を説明するのだから、定量的な説明はもとより困難だが、定性的ではあっても、多角的、多面的な説明は説得力がある。売れている商品にはそれなりの理由があることを、値ごろ感をもって説明する。
サプライアの側では、この値ごろ感をうまく操って消費者に訴えていくわけである。
大規模店舗に行ってわれわれがよくやるのが衝動買いである。これも結果的にはサプライア側の仕掛けにまんまと引っかかってしまったということである。衝動買いとは異なるが、ついで買いというものがあるそうだ。ついでに買うということは分母の負担感がほぼゼロなので分子を大きく感じなければつい手が出てしまうという仕組みだ。
さらに、はしご買いまで登場する。これらはあの手この手で値ごろ感を上手く演出して、消費者を購買に走らせようという作戦である。価格や価値だけでなく、建物やその雰囲気などもこの値ごろ感を左右する要素になることを徳田氏は解説する。
何も買わずとも、ショッピング・モールを散策するだけで楽しい気分にさせられる経験は誰しもある。しかし、これもはしご買い、衝動買いを狙ったサプライアの実に巧妙で、練りに練られた値ごろ感操作のお膳立てなのかも知れない。実に興味深い分析を堪能させられた。
おまけを数値化して保存するようにしたポイント・サービス。相互提携によって交換も可能になってきた。おまけでもあり、割引でもあるポイントも値ごろ感に大きな影響を与えるものと思われる。次はこのポイントと値ごろ感の関係について徳田氏の分析と方向性を聞いてみたいものだ。
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より実践的なマーケティングの本。マーケティング理論よりも実際的な心理学の本に近いともいえる。
価格に対する消費者の姿勢が簡便にわかるので製品企画の人が読むのに適しています。
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値ごろ感という視点から、経済学・心理学に一石を投じた意欲作。
経済学にも心理学に対しても、見方が変わることだろう。
値ごろ感の場合分けが多岐にわたることから見ても、人間は状況論的問題解決を行っているのだろうという感想を持った。
様々な現象の説明を値ごろ感から解こうという視点と、その説明に脱帽した。
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おまけより割引してほしい
衝動買いを誘う仕掛け
割引
価格表示を見たときに、自分自身のデータベース内の価格と品質とのバランスに照らして、これは安価だと、いい意味での落差があることを感じたときに値ごろ感が発生してくる。一般価格600円のものが、会員販売価格なら400円という場合も、対象が同じなので明確な価格差が実感が生じてくる。
この種の落差を経済学では「消費者余剰」と呼ぶ。また、価格はもともと負担感の実感が強いので、割引はその損失負担の軽減を強く実感させ、結果として値ごろ感を強く感じさせる。
目玉
目玉商品で得をした感覚がお金が増えたと錯覚する。そこでほかの商品も買ってしまう。
比較
高い商品と並べることで相対的な値ごろ感を感じさせる。
価格差と品質差を明確に識別することはむずかしい。
相手
値ごろ感の感覚がいい加減、価値と費用のバランスの見極めがあいまいな相手、つまり多くの男性客をターゲットにする。
お試し
「一度所有したものの価値は所有していない価値よりも相対的に大きくみなす」という心理的バイアスがある。
試食にはそれに加え自分が感じた味を失いたくないという「現状維持」感覚が働く。
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▼ 100文字感想 ▼
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値ごろだと思う感覚をバシッと公式で説明されると、なる
ほどと思ってしまう。なるほど、「損失回避」「現状維持」
という考え方は使えるな〜。本書でストンと腑に落ちた。
衝動買いを誘うしかけなんかは広告の参考になりそう。
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▼ 5つの共感ポイント ▼
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■値ごろ感という視点からは、おまけよりも割引が有効
■人は不確定な将来の利得よりも確定的な当座の損失
回避を選ぶ
■「安全欲求」を最高に充たす安全な自動車でもその人
の所得水準が低ければ、安全性は劣るが価格がもっと
安い自動車の方が価値があると感じる、すなわち値ごろ
感が大きい可能性がある
■衝動買いしやすいか否かは、その人の購買経験の差
から生じる、男女差ではない
■「かね勘定」よりも心の「かね感情」が動いたときに、
衝動買いが起こる
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なぜ「おまけよりも割引」なのか?
それはこの本を読めばわかります。
経済学をベースに買い物などをするときに発生する費用についての考察がなされている。
「スタバではグランデを買え」に近いと思います。
読みやすくわかりやすかったです。
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風邪をひきながら読んだ本の二冊目。
価値と費用について。
人は費用を払って何かの価値を得るわけですが
その時の値ごろ感・・・お得感を表す式
値ごろ感=価値/費用
について色々例を挙げて説明してある本でした。
例えば、単に値段が安くなったら費用が安くなるから値ごろ感は増し
費用は同じであっても価値が上がったら値ごろ感が増すわけです。
この本を読んでいた気になったのは
男性と女性の自動販売機の使用頻度を調べると
男性は週6.6回。女性は2.0回らしいということです。
筆者の推測では
?男性は飲み物を喉の渇きを潤す対象としか見ていないので
自動販売機で飲み物を買う。
?女性は自動販売機で飲み物を買うのをみっともないと思う。
との事だったのですが
まず、?に関して男性がこういう傾向にあるかはわからないのですが
自分の推測としては男性より女性の方がペットボトルの飲み物などを
持ち歩く傾向にあるために外でわざわざ買う必要がないのかなと
思いました。
イメージでは女性の方が荷物を多く持ち歩きバッグの中に
小さいペットボトルのお茶とかを常に持っている気がします。
男性は手ぶらなイメージがあるから喉が渇いたときに
その場で購入して乾きを潤すのかな。
ちょっと考えたけど分かりませんw
?に関してですが、女性が自動販売機で飲み物を買うのが
恥ずかしいなんていつの時代でしょう?
年配の女性はそのように思うものなのでしょうか?
少し時代錯誤されてるのではと感じました。
ちなみにこの本にも現状維持バイアスについて書いてあり
「損失回避」というメリットが「価値獲得」というメリットを
上回る場合が多いといった記載でした。
現状維持バイアスって不思議。謎です。
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「値ごろ感」=価値÷費用 値ごろ感は価値と費用の相互作用で決まる。価値感には個人差があり、費用には支払金額だけではなく時間なども含まれるの。商品やサービスを売るためには、値ごろ感を見極めた販売戦略が必要である。値ごろ感のメカニズムを経済学と心理学から解明する。
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この本によると、値ごろ感は価値/費用で表されるということで、例えば500円の物を買うときに
・100円おまけしてもらった場合は
600/500=1.2
・逆に100円割引してもらった場合は
500/400=1.25
ということで、値ごろ感は割引の方が大きいと。
なんとなくの感覚でしていたことを、
数字などで分析した本。
なるほどーな感じです。
2009.3購入¥50 / 2009.3.26読了
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最良の値ごろ感は、安い、はやい、うまい。
本は読んではじめて価値の出るものである。したがって、読む前にはその価値が不明なので、実は価値があるのかどうかは事前には反映が難しく曖昧な値ごろ感しか持ちえない。
ついで買いをさせる仕組みを作る。
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経済心理学の新書。
事例の中で値ごろ感の謎を学べる。
費用と時間の関係は心理に大きく影響を与えるといえる。
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値ごろ感=価値/費用という単純な公式ながらとても深いものがあり、面白かった。分母を100円安くした場合と、分子を100円プラスした場合の値ごろ感は分母を安くしたほうが大きいことから、おまけより割引がよいという話は目からウロコ。わりと分子を高めることで値ごろ感を上げようという提案を多くしているのでちょっと反省。ただ、この分子についてマズローの欲求階層説からアプローチしているけれども根拠に乏しい感じがした。決して納得いかないわけではないが、そこに根拠となる数字がほしかったような気がする。
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[ 内容 ]
意識的にせよ無意識的にせよ、商品の価値にどれだけの費用を払うべきか天秤にかけた結果で、「値ごろ感」の有無は生じる。
本書はその「値ごろ感」が生み出される仕組みを解き明かし、さらには、ベストセラーがベストセラーたる理由、衝動買いやついで買いをさせられてしまう仕掛けなども豊富な事例とともに解説する。
買い手も売り手も必読の経済心理学入門である。
[ 目次 ]
1 値ごろ感ってなんだろう?(おまけより割引してほしい-値ごろ感の因数分解 棚ぼたの好ましさ-値ごろ感の分母を支配する負担感 うまい、やすい、はやい-値ごろ感を生み出すもの)
2 売れるものにはワケがある(ベストセラーの秘密 どうして衝動買いをするのか?
ついでに買わせるコツ)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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普通に考えても、おまけ<割引だと思う。だって、おまけって、必ずしも自分が欲しい物がもらえるとは限らないでしょ。
割引なら自分が買おうとしているもの(必要な物)に対して発生するわけだから、
単純に考えても割引の方がうれしいという個人的な意見ではあるけれど。
*値ごろ感 = 価値 / 費用
このシンプルかつ見事な数式がまずは登場。これにいろんな事例を当て込めていきます。
ついで買い、衝動買い、棚からぼた餅などなど。
そこに心理学的な見地からの説明も加わり、非常に読みやすく分かりやすい。
しかし、「そんな簡単なものでもないんだよ、値ごろ感って!」
と一人ツッコミを入れる場面も多々あり。
例えば最高の値ごろ感=うまい・安い・早いっていう話。それは牛丼屋さんのことで、
じゃー牛丼屋さんが儲かっているかといえば、決してそうではないわけで。
最高の値ごろ感だからといって、大切な人の誕生日に牛丼屋さんには残念ながら行きません。
状況によって価値自体が変化するのだから、もっと臨機応変さが必要なのではないでしょうか。
つまり、必ずしも先の数式が正しいわけではなく、
というか数式にしてしまうことに問題があるのかも。
大学で経済学を教えている著者らしく、経済学の知識が乏しい初心者にとっては読みやすい本でした。
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「価格が高いものを買うときには時間費用は相対的に小さくなる」行動の傾向の意味について色々気がつくことが多かったです。